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世界の陸地が水没した後の世界を描いた小説【徒然読書54】

SF小説を読み始めました。

どこから読もうかと思ったけれど、前から気になっていたシリーズを読んでみました。

シリーズ物なので全部読むのは時間がかかります。

そこで、短編集を買いました。
短編集ならその世界観も少し掴めるし、筆致もなんとなく分かるかなと判断したのです。

半分ワクワク半分ドキドキでしたが、今回読んだ本は合いました!!

まず世界観がすごく綿密。
何しろ舞台が25世紀で陸地が水没した世界。

これ他人事ではないんです。
サーキュラーエコノミーを勉強していた時に知ったのですが、海面温度上昇、水位上昇、気温上昇でここままのペースだと2100年には人間が住める陸地が減っていきます。

なので現実の延長上にありながら別世界という感覚で読みました。

心に残った短編は「カレイドスコープ・キス」。

陸上民と海上民が併存する世界で、大陸の大噴火によって陸も海も凍る〈大異変〉が前提にあり、その対策で作られた海上都市が舞台です。

生命の考え方、生活の考え方、そして陸側と海側の考え方。

現在の私たちとは違うようでどこか既視感を覚えました。

もとは海上民で幼少期に海上都市に移住した主人公銘。

彼女を中心に人間社会の悲惨さが見えたり自然の美しさが見えたり。

魚舟という海上民が住む家かつ〈朋〉もいて、世界観に世界観に惹き込まれました。

知っていなければ捨てることも出来ない。確かにあった事実として知っておきたい。それが歴史を学ぶという意味じゃないのか。海上民地震が学ばなければ、誰が私たちの歴史を記憶し、いつまでも覚えておいてくれるのだろうか。
p119~120
私たち人間は、決して、世界という名の万華鏡を外部からのぞく立場に離れない。人は常に内側にいることしか出来ず、何かを嗤ったつもりでも、かならず誰かから嗤われている。
p249


銘は陸上民海上民の間を取り持つ立場。
でも自身は海上民に惹かれている。

両方の世界を見たからこそ歴史とか世界の歪さを感じるようになっていく。

そのプロセスが今の私たちにも求められているようで、追体験している気分でした!


オーシャンクロニカル・シリーズとしてまとめられているので、『華竜の宮』『深紅の碑文』も読んでみたいと思います。

SFという身近でなさそうで身近な世界も面白いと感じました。

現実の細かいことが気になってきた時には、歴史やSFという長い時間軸、遠い時間軸に身を置きたくなります。

考えが凝り固まってるなーというときに少し自分とは離れた分野、時間軸の本を読む癖があるんですね。

というわけで、初のSF小説読書日記でした!


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