二人の若い紳士が、すっかりイギリスの兵隊のかたちをして、ぴかぴかする鉄砲をかついで、白熊のような犬を二疋(ひき)つれて、だいぶ山奥の、木(こ)の葉のかさかさしたとこ…
はるばると海を越えて、この島に着いたときの私の憂愁(ゆうしゅう)を思い給(たま)え。夜なのか昼なのか、島は深い霧に包まれて眠っていた。私は眼をしばたたいて、島の全貌…
HY
2021年2月7日 19:25
二人の若い紳士が、すっかりイギリスの兵隊のかたちをして、ぴかぴかする鉄砲をかついで、白熊のような犬を二疋(ひき)つれて、だいぶ山奥の、木(こ)の葉のかさかさしたとこを、こんなことを云いながら、歩いておりました。「ぜんたい、ここらの山は怪(け)しからんね。鳥も獣も一疋(いっぴき)も居(い)やがらん。なんでも構わないから、早くタンタアーンと、やって見たいもんだなあ。」「鹿の黄色な横っ腹なんぞに、二
2021年2月7日 18:08
はるばると海を越えて、この島に着いたときの私の憂愁(ゆうしゅう)を思い給(たま)え。夜なのか昼なのか、島は深い霧に包まれて眠っていた。私は眼をしばたたいて、島の全貌(ぜんぼう)を見すかそうと努めたのである。裸の大きい岩が急な勾配(こうばい)を作っていくつもいくつも積みかさなり、ところどころに洞窟のくろい口(くち)のあいているのがおぼろに見えた。これは山であろうか一本の青草(あおくさ)もない。私は岩