【文フリ準備④】組版を決める
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今回は組版についてです。
組版。間違いがあってはいけないので、おとなしく辞書で調べました。
“原稿およびレイアウト(デザイン)の指定に従って、文字・図版・写真などを配置する作業の総称 。印刷の一工程としては、文字や図版などの要素を配置し、紙面を構成すること” だそうです。出典、みんなのWikipedia。
ひとまず結論から先に載せます。小説「町中華屋のマイコ―」の組版は以下の通りです。
「町中華屋のマイコー」組版
組版のコンセプト「通勤時間に読みやすい」
食をテーマに、日々の生活と成長を描いた「町中華屋のマイコー」は、一編が7,000~8,000字程度の連作短編。
通勤時間に気軽に一話ずつ読んでほしい、という思いがあります。
読後感がさっぱり、ほんわりしているので、朝には爽やかに読んでいただきたいし、夜には電車を降りた後、町中華屋に駆け込みたくなる、そんな風に読んでもらいたい。鞄の中にポンと入れてもらうなら、薄くて軽い方がいいでしょう。
また、私自身、文庫本は片手で開く瞬間が結構あるので、物理的に開きやすく、片手で持ちやすい、片手で開いてもしっかり文章が読める組版をめざしました。
仕様:少し薄めのオーソドックスな文庫本
A6判、無線綴じ、右開き。要は書店で売ってる商業の文庫本と同じ形式です。背幅8mmは、私がイメージする商業文庫本が12mm前後なので、見た目には少し薄めかなー、という印象かと。今回、あえて薄く仕上げました。
本文用紙:薄く仕上げる、を重視した紙選び
→なぜ薄くしたのか
前述の、「通勤時間に読みやすい」というコンセプトでも述べた開きやすさ・持ち運びのしやすさが一つ目の理由。
もう一つはシンプルです。「買ってもらうため」です。
#文学フリマで買ったもの を見ていると、中綴じ製本のZINEっぽいものや、薄めのB5判サイズのものを買われている方が多く見受けられました。それもあって、「今文フリ云々」はA5中綴じ製本にしたわけですが、小説は文庫本にしたい。これは完全に私の趣味です。
明らかに長いぞ! というぶ厚め文庫本はなかなか手に取りづらいだろうなぁ、と言うことで、同じ字数でなるべく薄くすることを目指しました。
→どのように薄くしたのか
今回は、「おたクラブ」さんに発注することに決めています。理由は、カバーの部数が一部単位(最低ロット十部)から発注できること、ノベルティやポスターも同時に発注できることですね。おたクラブさんは、書籍用紙57㎏を取り扱っている。これも決め手になりました。
初めて製本をしたときは、「ちょいのま」さんで淡クリームキンマリ90kg、「針を置いたら」の製本時は、72.5kgを使用しました。90kgは、かなりぶ厚いなという印象を受けました。自分用に記念に製本するのに良さそう。72.5kgはずいぶんめくりやすくなった印象があります。全体の背幅もぐっと薄くなりました。それでも商業の文庫本に比べると一ページ一ページは厚い。次に製本するときは、62kgか57kgだな、と思っていました。
ちょいのまさんは、62kgも57kgも取り扱っていて、段階的に厚さを調整していくなら62kgにすべきなんでしょう。でも、今回は全体的に薄くコンパクトにしたく、また、商業の文庫本の薄い紙が案外開きやすく読みやすいことにも気づきました。と言うわけで、本文を「書籍用紙 57kg」にしました。
ちなみに、ですが、ちょいのまさんは製本時にかなりきっちり綴じている印象があります。他の印刷所と比べると、背幅計算の結果が0.5~1mm違ったりするんです。ちょいのまさんで、さらに薄く製本してもらう、というのも一つの手かもしれません。
表紙用紙:グレーのカバーからチラッと覗くアクセントカラー
表紙用紙は結構悩みました。今回は強い色を使おう、と思っていたからです。カバー装丁をグレーという落ち着いた色にしたので、結構何色でも合わせられます。元は私はグレーとピンクの組み合わせが好きなので、ピンクにしたかったのですが、おたクラブさんで取り扱っている色上質のピンクが結構薄めなんですよ……。理想は、もう少し濃い、いや、ハッとするような濃い色味。何ならピンクでなくても、青でも緑でも濃けりゃあOK! というところまで来ていました。しかし、いずれも薄い……。
迷った挙句、ラインナップ中唯一「濃い」と判断できる赤にしました。中華料理テーマですし、落ち着いたグレーの下にハッとする赤が覗く、これまたただならぬ感じがしませんか。まさか中華料理屋で駄弁っているだけの話とは思わんだろうて(いや、シリアス展開もちゃんとありますよ?!)。
カバー用紙:迷う余地なし
絵柄のポップさ的に、ここはコート紙のクリアPPでツヤツヤ仕上げ一択です。もう一冊の小説「針を置いたらあの海へ」がマットPPなので、対比の意味でも、クリアPPがいいだろうと判断しました。
フォント:自我を出さない
いかなフォント好きの私でも、本文においては自我は出しません。読むとき余計な情報になってしまうので。同人小説書で圧倒的支持を得ている「源暎こぶり明朝」を使用しました。
サイズは9pt。前回「針を置いたら~」の製本で、8.5ptと迷った末9ptに変えたのですが、実物も読みやすかったのでこちらに。何度も書きますが、隙間時間や移動中にさっと読んで欲しいので、パッと目に入って認知できることを重視しました。
レイアウト:ノドに注意
ここが組版のキモともいえるんでしょうね。
まず、一行の文字数と行数は、38文字16行と、割とオーソドックスな数字にしています。商業の文庫本だと、38文字18行くらいが多いような。まぁこれも読みやすさ重視です。詰めれば全体のページ数が減り薄くはなりますが、行間が狭いと読みづらくなります。
そして、ノド! 内側、綴じる側の余白のことです。これが狭いと、開いたときに、内側の行(右ページ最終行、左ページ一行目)がとても読みづらい。前回ノドを15mmにしたところ、読めなくはないけど片手で開いたときに微妙に隠れる、という仕上がりになってしまいました。今回は慎重に、3mm増やして18mmにしました。
また、書籍用紙を薄くすると、その分ページの「ハリ」が弱くなるので、開きやすくなります。
やれることは全部やった、と思う。
「通勤時間に読みやすい」というコンセプトの実現のため、
・本文用紙を薄くして、軽く持ちやすく開きやすくする
・プレーンなフォントで、サイズもオーソドックスに読みやすく
・行間と余白をしっかり取り、ぱっと認識しやすく、開いたときに内側の行が隠れない
という策を取りました。
カバーや表紙は、トータルで自分の好きな雰囲気になるよう、色や加工を熟考しました。全体的に、とても冷静に選択していけたのではないでしょうか。
おい、まだ終わってないぞ~
うん、この組版に本文を流し込んではいるんですけどね。左ページに章タイトル入れたり、ノンブルを振ったりしなきゃいけないし、校正もまだ全然進んでいませんことよ……。むしろ、校正しつつ文章の推敲もする感じです。まだ第三章までしか見ていないのに、「ここでいい感じの描写を追加」みたいな未来に負の遺産ぶん投げ赤字入れたりしています。次は校正の回になるかもです……。