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人事トラブル相談所①「いきなり会社宛に従業員の給与差押通知書がきたんですけど・・・」

 「企業人事アルアル」の1つに、従業員の給与差押通知書がいきなり会社宛に届くことがあります。従業員数を多く抱える会社やイケイケベンチャー、その他営業マンが在籍していて給与体系にインセンティブを設けている会社などでよく見られます。

自身の経験からも色々なケースを見てきましたが、若くして多くのお金を得ている人やインセンティブなど瞬間風速で月額給与が跳ねた時などに、気を良くして夜の街や飲み代、高額な買い物(車、時計、ブランド品など)に消え、それらをキッカケに日常生活で支払っていた返済が遅滞し、いわゆる消費者金融などから借り入れて・・・というスパイラルにハマり、焦げ付いているケースが圧倒的に多いです。あとは一部ですが、金銭的にだらしない系(毎月の収支管理ができていない・・など)の方もいるようです。

人事担当者からいただく内容をもとに、Q&Aのような形で記載させていただきます。

よくある相談

 人事担当者から相談を受けるものは、下記のようなものです。

「会社に債権差押命令が届き、対象社員の給与から4分の1を差押予定です。対象社員へこの件を通知する際、こちら側で気を付けなければいけない点はありますか?」(他の情報もなく唐突に質問がくるケースが多いです)

確認事項とアドバイス

 差押金額やら法律論などは一旦さておき、実務においてまずはやるべきこと、できることを確認することが大切です。経験が浅い人事担当者の場合、どうしていいのかわからないことも多いので下記のような対応をしてあげると状況確認とともに具体策が見えてくることもあります。
(対象者の資力や借入金額などによっては難しいケースもありますので、あくまでも1つの方法としてお考えください)

 まず、こちらはご本人に対して既に内容や返済状況などご確認いただいておりますでしょうか?場合によっては、本人に一定の資力があり、差押前に返済をすれば給与にまで手をつけなくても良い場合がありますが、そのあたりはいかがでしょうか?

返済の可否に関わらず、一旦しかるべき方(一般的には所属長か、人事同席にて対応するケースが多いです)が状況のヒアリングを実施していただくことが望ましいです。何ら返せる見込みがないなどの場合は、事情を説明したうえで法的な手続きのため、差押命令に基づいて返済までは会社側で管理をしていく流れとなります。

よくあるケースですが、仮にA消費者金融から借り入れていて「そこだけか?」と聞くと、そうです。と一旦はいうものの、B社、C社からも同様なケースもあるので正直ベースで確認を取ることをお勧めいたします。
(勿論、圧力にならないような確認方法によることは申し上げるまでもないのですが・・)
 
資力があって返済可能な場合は、できればすぐに日程と返済額を決めて対応をしてもらい、その振込み履歴などまで確認することも併せて実施しておいてください。

返済可能な場合は、手間にはなりますが会社から借り入れ会社に電話などをして、いつ、本人に返済させます。等伝えると、確認出来次第取り下げなども応じてくれる場合が多いです。差押通知がくる時点で、結構な金額を借入または滞納期間が長いなど相当の理由があるはずです。
(1回返済忘れたくらいのレベルで差押通知は会社にはきません・・)

差押をしなければならない時

 上記のような対応でも解決が図られず差押を免れない場合には、通常の方法で毎月の給与額から差押を進めていくこととなります。
なお、元々の給与が高額の場合やインセンティブが大きい場合には、差押金額も異なってきます(下記参照)

 固定給以外のインセンティブについても一旦は計算に含める形で進めます。原則論でのお話となりますが、差押給与額というものは、債務者(社員)保護の見地から給与額面ではなく、所得税・住民税・社会保険料・通勤手当を控除した「実質手取金額」が基準となります。

そのため、仮に上記項目を除した手取り「実質手取金額」が月額28万円という場合は、1/4にあたる7万円が差押対象額となります。なお、1/4の金額に端数が出た場合は円以下「切り捨て」となります。
(差押禁止範囲に食い込まないようにするためです)

なお、歩合対象だと金額が大きくなる可能性もあるので補足ですが、手取り額が44万円を超過する場合は、手取り額から33万円を控除した額が給与差押額となります。
(例:手取り55万円の場合、33万円を控除した22万円が差押となります(=1/4とはなりません))

さいごに

 人事担当者としては、給与の差押などは手間がかかるため出来るだけ回避したい部分だと思いますが、お金の使い方だけは会社側で管理できないため、上記のような場合にはまず出来ることから確認をしていくこととなります。

それでも何か手はないか・・・と相談を受けるケースもあるので参考までに記載をいたしますが、いわゆるクレジット利用歴や返済滞納歴などを知ることができる機関で「CIC」「JICC」があります。
なお、これらは基本的に本人が照会をかけて取得することができるものですので、会社側で自由に取得・確認をできるものではありませんのでご注意ください。


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