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大学院生にインタビュー!~私が大学で「やりたいこと」に出会うまで~

こんにちは。東北大学 サイエンス・エンジェル(SA)の やま です。
前回の記事 (大学入学後に学びたいことが変化する?!) では、大学に入学してから現在の研究分野や進路にどのように出会ってきたか、SAの例を簡単に紹介しました。中高生の頃と現在でやりたいこと・学びたいことが変化した人や、中高生の頃は将来やりたいことがはっきりと定まっていなかった人も少なくありませんでしたね。本記事では、大学入学後の心境の変化やそのきっかけを深掘りし、「現在取り組んでいる分野に、どのように出会ったか」を探るべく、2名のSAの声をお届けします!

工学研究科 もえさん

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やま: まず、もえさん現在の所属やこれまでの経歴を教えてください。

もえ: 私は、工学研究科機械機能創成専攻の修士2年生です。大学も東北大で、学部は工学部機械知能・航空工学科を卒業していて、現在も、学部時代と同じ研究室に所属しています。

やま: ありがとうございます。本日は、もえさんが「やりたいこと・進みたい道にどのように出会ったか」をお聞きしていきます!早速ですが、もえさんが現在、研究していることや興味がある分野はどのようなものですか?

もえ: 私は液体ロケットエンジンに発生する危険な振動を抑制する方法を実験とシミュレーションを用いて研究しています。従来よりも簡単で安価な方法を開発できれば、ロケット打上にかかるコストが減り、世界中の人々にとって宇宙が身近になるかもしれません!研究では流体力学 (※1)を中心に学んでいますが、最近は材料分野マネジメントに興味を持っています。

※1 自由に変形する流体の運動を解析する学問

図5

やま: ロケットや宇宙など、近未来感があってかっこいいですね!中高生の時から、ロケット関係の研究をしたいと思っていたのですか?

もえ: 全く考えていませんでした!中学時代は薬剤師に、高校時代は天文学者になりたかったです。そもそも工学という分野に興味を持ったのも大学入試の直前でした。浪人中は小さい頃からダンスを習っていたので舞台演出を勉強できる大学への進学も考えました。また、大学在学中には国家公務員の試験を受けたいと思っていました。

やま: 薬剤師や天文学者など、今の分野とは異なる様々なことにも興味があったんですね!では、大学受験の際に東北大学工学部機械知能・航空工学科を受験したのはどういう理由だったのでしょうか?

もえ: 自宅から通えて公務員試験の勉強をする時間が取れるという理由と、機械系の知識をつければ、天体観測で使う大型装置などの開発に関われるチャンスがあるかもしれないという理由です。2度目の大学受験だったのでどちらに行きたくなっても進めるように、後悔のない選択をしようと心がけていました。

やま: 工学を選んだのも一つの理由ではなく、総合的に考えてといった感じなのですね。受験の時にはロケットや流体力学のことは考えていなかったようですが、これらの分野にはどのようにして出会ったのですか?

もえ: ロケットという分野に興味を持つようになったのは、大学で入ったロケット製作・打上サークルがきっかけでした。サークルには「人数が多くて楽しそう!」という理由で何となく入ったのですが、活動するうちにロケット開発をする多くの学生や先生、社会人と出会い、どんどん「もっとロケットについて知りたい!」と思うようになりました。

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(写真:https://www.fte-tohoku.org/hybridrocket-new から引用)


もえ: 材料分野については研究とサークル活動を通して、「実用化する際にこの部品の強度は大丈夫かな?」と思考する中で興味を持ちました。やまさんの研究しているコーティング技術のように、様々な材料に新しい機能(※2)が付いたりしているので面白いですよね!また、マネジメントについてはサークルで「どうやったらみんなで楽しく活動できるんだろう?」と考える中で興味を持ちました。

※2 機能性材料と呼ばれます。力学的な特徴の他に、電気、磁気、光、熱などの機能面を支える材料です。

やま: 大学でのサークル活動や研究を通して、興味が広がっていくというのも素敵ですね。もえさんの興味のある分野やその経緯を聞かせてくださり、ありがとうございました。

最後に、進路選択に悩むnote読者の皆さんにメッセージをお願いします!!

もえ: 大学に入れば新しい出会いや発見があり、きっと多くの人の夢は変わると思います。私もその中の1人でした。夢が移り変わっていく中で大切なことは、今まで自分が進んできた道を肯定し、新しい自分の夢を受け入れることだと感じました。そして、そう思うためには納得感を持ってこれまでの道を選んできたという自信が必要でした。だからこそ、これからいくつも進路を選択していく中高生の皆さんには、なんとなく進路を選択せずに、「自分の内面にしっかりと向き合い、広い視野を持って心から納得のできるの選択を模索する努力をするべきだ」と伝えたいです。
たくさん悩んで出した結論やその時の努力はその後の自分を後押ししてくれるはずです。悩んだり、調べたりすることは疲れるかもしれませんが、勉強のモチベーションも上がると思うので、息抜きをしながら未来の自分のために頑張ってみてください!皆さんが納得できる選択を見つけられることを願っています!

やま: 大学入学、学部学科選択後にもいろんな選択が広がっていることが良くわかるお話でした。ありがとうございました!

生命科学研究科 あおちゃん

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やま: あおちゃんの現在の所属を教えてください。

あお: 私は現在、生命科学研究科分子生物学専攻の修士1年生です。植物分子育種分野の研究室に所属しています。

やま: ありがとうございます。早速ですが、あおちゃんは、現在、どのようなことを研究していますか?

あお: 所属している研究室のテーマは、主にアブラナ科植物の自家不和合性です。アブラナ科というと、菜の花をイメージするかもしれませんが、他にも、キャベツ、ブロッコリー、ダイコンやハクサイなどが仲間で、皆さんにとって身近な存在なんです。自分以外の花粉とだけ交配し、自分と同じ花粉では種を作らない、「自家不和合性」というしくみを持っています。農業種子生産の現場でも、アブラナ科植物の自家不和合性のしくみが利用されています。私は、雌しべ側と花粉側それぞれの認識のしくみについて、調べています。

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(あおちゃんが研究しているアブラナ科植物の写真)

やま: 分かりやすい説明ありがとうございます。「自家不和合性」って不思議で大変興味深いですね。高校生物で習った「遺伝」や「植物の受粉」が、こんな風に発展・研究がされていることが知れて、面白いです。

中高生の頃から、「植物分子育種分野」の研究をしたいと思っていたのですか?

あお: 私はいろいろなことに好奇心旺盛で、様々な分野がある中で将来何をしたいのか、本当に自分がしたいことは何なのか、はっきりとしていませんでした。
小さい頃から自然科学が好きで、小中学生の時は、自由研究で毎年貝の標本を作ったり、科学イベントに参加したりしていました。高校では、科学を詳しく学びたいと思い理系を選択し、化学部に入り実験の楽しさを感じました。又、東北大学主催の「科学者の卵養成講座」 を知り、様々な分野の教授から講義を直接聴くことができ、より科学に興味を持つようになりました。

やま: 「科学」は小さい頃からずっと楽しんできたのですね。「科学者の卵養成講座」は高校生を参加対象としたプログラムですよね!いろんな分野の先生のお話を聞く機会があった中で、あおちゃんが現在の研究に飛び込むきっかけはどのようなことでしたか?

あお: 大学3年生の時に、現在所属する研究室で開講された展開ゼミ(※3)「秋冬野菜を盆栽として育ててみよう」に参加したことです。私は、ミズナ紅法師、二十日ダイコン、カイワレ大根(スプラウト)を種から栽培し、植物の成長を定期的にブログに書きました。毎回先生からコメントを頂けるので、栽培の仕方や植物の育ちなど、多くのことを学びました。植物の生命力のすごさや、様々な観点から探求が尽きないところがとても面白く感じました。

※3 東北大学の全学教育科目。転換・少人数 科目として1年次前期に開講される「基礎ゼミ」より、さらに発展的なアクティブ・ラーニングを中心とした科目。

やま: やりがいのありそうな展開ゼミですね!実際の体験を通して植物の面白さを感じ、その分野の研究をしているのですね。これからも、ぜひ、研究頑張ってください!!

図7

やま: 最後に、進路選択に悩むnote読者の皆さんにメッセージをお願いします。

あお: 私は高校で化学部に入ったことがきっかけで、科学者の卵養成講座を知り、そこでご縁のあった教授の展開ゼミに参加したことで、植物の魅力を知り、研究室を決めました。このように、いろいろな出会いがあって、今の自分があるので、今後も出会いを大切にしていきたいと思っています。
 まだはっきりとやりたいことが分からず、不安な方がいるかもしれません。様々な経験や人との関わりを通して、なりたい自分や考え方が見つかっていくと思うので、興味をもったことがあれば、積極的にトライしてみてはいかがでしょうか。応援しています!

やま: 進路選択のきっかけがよく分かるインタビューでした。ありがとうございました!

今回は、2名の学生に、現在の分野を選んだきっかけや中高生の頃からの気持ちの変化などをインタビューしました!いかがだったでしょうか。中高生のみなさんの進路選択において、何か参考になる部分があれば嬉しいです!

記事へのコメントや質問などは、こちらのフォームからお願いいたします。

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編集後記

研究室に配属されたとき、私は特に強い希望がなかったので同期が選ばなかったテーマになりました。最初は淡々と取り組んでいましたが、今では一番面白いテーマを引いたと思っているし、実際、博士後期課程 (ドクター)に進学して研究に励んでいます。面白いも楽しいも好きも知りたいも全部自分次第です!(やま)

東北大学サイエンス・エンジェル
次世代の研究者を目指す中高校生に「こんな女性研究者もいるんだ!」「理系って楽しい!」という思いを伝えるため、2006年に結成。年度毎に学内で公募され、総長に任命された 東北大学の自然科学系10部局に所属する女子大学院生が、中学・高校での出張セミナーや科学イベントで科学の魅力と研究のおもしろさを伝えている。メンバーは宇宙・自然・ロボット・環境・ヒトや動物の身体のしくみなど、それぞれの専門分野で日々研究中。


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