Web3.0新約聖書 -国内ブロックチェーン業界への警鐘-
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Web3.0新約聖書 -国内ブロックチェーン業界への警鐘-

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1.はじめに

 1-1.自己紹介

こんにちは、Schopの堀田(@yssy_81)と土田(@i_am_shinya)です。

Schopは2021年7月に発足した、Web3.0という主にブロックチェーン技術を活用した新しいWebの世界の実現を目指すチームで運営するメディアです。

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今後もブロックチェーンやWeb3.0に関する様々な情報を定期的に発信していきますので、まだフォローされていない方はぜひフォローしてチェックしてみて下さい!(Twitterもぜひ!@SchopTech

 1-2.この記事の概要

本記事では、世の中を大きく変える潮流であるWeb3.0が実現した社会がどのようなものなのかを整理し、現状の国内ブロックチェーン業界に対する懸念を踏まえて、Web3.0実現に向け私たちがどのように歩むべきかを考察します。

2.Web3.0への大きな流れ

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 2-1.Web3.0とは?

まず、Web3.0とは何かについて簡単に説明します。
Web3.0とは、ブロックチェーンを始めとする分散化技術を用いた次世代の分散型Webのことで、現代の中央集権的なWeb(Web2.0)の課題を解決する新しい概念です。

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現代のWeb2.0では、一部の巨大企業に情報が集中することによるプライバシーやセキュリティ面での課題が浮き彫りになっています。その課題とは、主に2点です。

まず1つ目は、特定企業への個人情報集中によるプライバシー侵害です。GAFAを筆頭とした一部の巨大企業に、住所や年齢、性別などの基本的な個人情報に加え、個人の趣味嗜好や行動履歴など世界中のあらゆる個人情報が独占的に集められているという点について、欧米を中心にかなりの批判が集まっています。

2つ目は中央集権型によるセキュリティ問題です。現在、ユーザーの個人情報はサーバーで集中管理されており、ひとたびサイバー攻撃を受ければ、個人情報の流出や不正アクセス、データ改ざんが行われ、ひいてはWebサイト/Webサービスが利用できなくなるリスクがあります。

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近年個人のプライバシー意識が高まっている背景もあいまって、中央集権的なWebから「非中央集権的な分散型Web」に移り変わっていく大きな流れが発生しています。このような次世代Webは「Web3.0」と呼ばれ、主にブロックチェーン技術によって実現されようとしています。ブロックチェーン技術によって個人情報が特定の企業ではなくブロックチェーンに参加したユーザーによって分散管理されることで、プライバシーやセキュリティ面での課題が解決され、データの所有権を企業から個人に戻すことができるのです。

このように、Web3.0はWeb2.0の課題を解決する新たな概念として台頭してきておりますが、ここで改めて中央集権的ではなく非中央集権的な組織や構造であることのメリットを考えてみましょう。

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そもそもインターネット自体、その誕生期には仕様決めなどあらゆる作業が研究者などの非営利団体を中心に行われました。当時はまだプロトコルの決め事が少なかったため、このようなかたちでもインターネットの発展は進みましたが、もし仮にいま同様のかたちで開発を進めた場合、極めて複雑化している現状においては大幅な時間が掛かってしまうため現実的ではありません。

しかしブロックチェーン技術を基盤としたネットワークにおいては、開発者・メンテナンス者・その他の参加者にトークンという経済的なインセンティブがあることで多くの参加者が集まり、技術的に堅牢性なシステムを速くつくることが可能になるのです。
この仕組みは、サービスやコミュニティの発展に世界中の優秀なエンジニアの力を借りられる点が極めて画期的です。オープンソースソフトウェアの普及からもわかるように、この仕組みがあることで圧倒的な速度での成長が可能になるのです。

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具体的な事例を1つ挙げるならば、電子百科事典サービスのWikipediaとEncartaの戦いを思い返すと分かりやすいでしょう。Wikipediaは分散化に共感する多くの協力者の力を借りることで、Microsoftが運営するEncartaに比べ圧倒的な速度で成長し、ついに2009年MicrosoftはひっそりとEncartaの終了を発表するに至りました。

しかし、分散化について、その全てが無条件に肯定されるべきかといえば、必ずしもそうではありません。実際、誰でも無料でメールを転送できるプロトコルであるSMTPは、分散的な仕組みで成り立っているものの、このプロトコルを使用したE-mail Spamによる被害は、毎年数千億円の経済損失を出してしまっています。

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ただ、だからと言って分散化を目指さず、中央集権的な構造を維持したままでいいのでしょうか?私たちはそうは思いません。分散化を目指すにあたり、現時点では様々な課題が依然として残っているものの、あくまで非中央集権的で分散された状態を目指すべだと考えています。

過去、中央集権的なプラットフォームがあまりにも長い間当たり前であったため、多くの人々は本来インターネットサービスを構築する上で理想的なアプローチである「分散化」を忘れてしまっていました。しかし、分散化は間違いなく、コミュニティが所有するネットワークを発展させ、サードパーティの開発者、クリエイター、ビジネスに公平な競争の場を提供する強力なアプローチなのです。

 2-2.分散化=DeX(デフ)化

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こういった背景から、私たちは今後世の中が確実に分散化の方向に進み、Web3.0が実現していくと考えています。そして、このWeb3.0の潮流は、リアル社会のあり方をも再定義していくのです。

本記事ではこのようにあらゆる組織や構造が分散化(Decentralized)されることを、「Decentralized X(未知数)」という意味から『DeX(デフ)化』と呼ぶことにします。
※分散型取引所(Decentralized Exchange)の略称であるDEX(デックス)との違いを明確にするため、「DeX(デフ)」としています。

以降では、そんなWeb3.0が実現した社会はどのようなものなのかを考察していきます。

3.Web3.0の潮流におけるリアル社会のデフ化

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 3-1.国家のデフ化

デフ化された国家とはどういったモノなのでしょうか?大前提として、国家が完全に分散化されることはありません。しかし、現在の中央集権的な国家運営もWeb3.0の潮流により少しずつデフ化されていくと考えています。

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社会は、税、権力、法、宗教、市場、言論など公共性のある様々な要素により形成されていますが、これらの中で市場の民主化は特に重要だと考えられています。経済学ではこの考えを新自由主義と言い、国家による福祉・公共サービスの縮小と市場原理主義が重んじられています。
この考えに基づき、日本でも行政が行ってきた事業の民営化は進んできました。NTTや日本たばこ産業、JRグループ、日本郵政などがその最たる例で、中央集権的構造下にある公的機関が次々と民間企業へ移行したのです。

こういった民営化は、確かに国家のデフ化を進める1つの手法ではありますが、私たちはブロックチェーン技術を活用することで、さらに民主的なデフ化が可能になると考えています。

ここで、ブロックチェーン技術を活用した国家のデフ化の例として、「税金徴収プロセスのデフ化」を考えてみます。

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税金徴収プロセスのデフ化は、ブロックチェーンのスマートコントラクトにより実現できます。
スマートコントラクトで税金徴収を自動化することによって、事務コストの大幅な削減やリアルタイムな税金徴収が可能になるだけでなく、予算配分の決定についてもより透明性高く実現できるのです。
※スマートコントラクト:ブロックチェーン上でプログラミングされた契約を自動的に実行する仕組み

このようにブロックチェーン技術を活用することで、中央集権的な組織の最たる例である国家すらも、Web3.0の潮流を受け様々な領域でデフ化が進むと私たちは考えています。

 3-2.株式会社のデフ化

もちろん株式会社においてもデフ化は進んでいきます。結論から述べると、株式会社がデフ化された組織形態は「DAO(ダオ)」と言います。

DAOは「Decentralized Autonomous Organization」の略で分散型自律組織とも言われ、参加者によって自律的に運営されている組織のことを表します。

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株式会社など従来の組織では、中央に意思決定をする機関や人が存在し、その決定に従って組織が運営されていました。一方DAOでは、ブロックチェーン上で管理されているコードやプロトコルに従い意思決定が行われます。

以下、株式会社とDAOについて、①意思決定プロセス、②参加審査、③透明性の3軸から、それぞれの特徴を簡潔に比較していきます。

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株式会社の組織的特徴

1. 意識決定プロセス:トップダウン型
一般的な会社や組織は、経営層や上司が一定のルールのもと意識決定を行い、その下部に属する組織や人たちがその決定に従って組織運営を行うトップダウン型の意識決定プロセスを採用しています。組織の運営者たちは、法律に則していればどのようなルールでも定めることができ、組織に合っていないと判断したルールは自分たちで変更することも可能です。

2. 参加審査:あり
組織に参加できるかどうかは特定の運営者たちの審査によって決まります。例えばその組織で働くことができるかどうかは、採用面接などにより事業者側によって自由に決められます。

3. 透明性:なし
透明性や公平性がなくても成り立つのが従来の組織の特徴です。会社の状態を従業員へ全て公開することは、運営者の義務ではありません。また、運営者側が参加者の報酬を定めるため、公平性が重視された設計にもなっておりません。
DAOの組織的特徴

1. 意識決定プロセス:アジャイル型
DAOは小さなプロジェクトごとに発足し、事前にブロックチェーン上のプログラムに組み込まれた一定のルールや条件に従って意識決定自体が自動的に行われるため、従来の組織とは異なり特定の組織運営者を必要としないことから、アジャイル型の意識決定プロセスが可能となります。
このオープンソースプログラムは、ガバナンストークン保有者などの参加者により構成されるガバナンスレイヤー(仕様変更を提案するグループ)によって分散的に運営されており、マイナーなどの参加者により構成されるシステムレイヤー(新しい仕様を承認するグループ)によって最終承認が行われます。
ルール(コード)を変更する場合も、特定の人物による判断ではなく、参加者の過半数以上の合意が無いと実行できないなど、より公正に判断が下されることが特徴です。

2. 参加審査:なし
組織の開発者やメンテナンス者等どの立場であっても、誰でも自由に審査の必要なくDAOへ参加することができます。

3. 透明性:あり
DAOでは、ルールとなるコードやコミュニティの中で作成される暗号資産(トークン)の取引履歴などが全て公開されるため、サービスを利用する参加者にとっても、透明性の高い組織と言えます。
また、特定の運営者が存在せずルール(コード)を参加者たちの合意で定めるため公平性も高くなり、従来の組織形態よりも民主主義的な側面が強いことが特徴です。
透明性が高くなくては成り立たないDAOでは、記録の透明性を保ちつつ、記録を改ざんすることが難しいという性質を持つブロックチェーン技術を利用して運営されるのが一般的です。

従来の組織形態とDAOにおいて大きく異るもう1つの点は、参加者が従う対象です。
従来の組織形態では、参加者(従業員)は組織の管理者に対して従っていました。一方DAOでは、参加者はそのコミュニティのルール(コード)に対してのみ従います。

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DAOはそもそもが新しい概念であり、従来の組織形態とも全く異なるため、世界的にまだまだ成功事例が少ない状況ですが、時間の経過とともに未来の組織形態におけるスタンダードになり得ると私たちは考えています。

 3-3.デフ化された社会における個人の変化

Web3.0のデフ化された社会においては、個人単位でも大きな変化が訪れると私たちは考えています。以下、具体的な例を2つ挙げてみます。

まず1つ目に、個人情報の取り扱いに関して大きな変化が訪れます。
現在、インターネット上のサービスを利用するユーザーの個人情報は、その事業者側に管理が委ねられていますが、Web3.0のデフ化された社会においては、個々人が自らの情報を管理するようになります。(自己主権型アイデンティティ)

もう少し詳細に説明すると、ユーザーはサービスを利用する際、自ら選択した情報のみを事業者側に提供することが一般的になります。
またユーザーは、自身が提供した個人情報が意図しない形で事業者側に利用されていないかについても、検証することが可能となるのです。
これらの個人情報管理は、分散型の公開鍵による認証(本人確認の検証に必要な暗号鍵の共有)により選択的な情報提供を可能にし、提供した情報がその後どのように利用されたのかについても確認できるブロックチェーンと非常に相性が良く、今後ますます一般的になることが期待されています。

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また2つ目に、個人が属するコミュニティやその立場の自由度に関しても大きな変化が訪れます。
個人の幸せにコミュニティの要素は欠かせません。Web3.0のデフ化された社会において、個人はアイデンティティや趣味嗜好をベースに発足したあらゆるDAOコミュニティに様々な立場で参加します。ユーザーは、そのコミュニティが提供するサービスを享受するだけでなく、開発やメンテナンスをも自らの手で行い、サービスをつくり上げていくことが可能になるのです。

元来個人が所属できるコミュニティはその個人を取り巻く環境に大きく依存し、参加する立場に関しても選択肢が限定的でしたが、このようにデフ化された社会においてはそのいずれもがより自由になります。

ここまで、Web3.0が実現した社会がどのようなものなのかを考察してきました。
以降では現状の国内ブロックチェーン業界の懸念を踏まえて、日本がWeb3.0実現に向けてどのように歩むべきかを考察します。

4.現状の国内ブロックチェーン業界の懸念

私たちは、このまま進むと国内ブロックチェーン業界はガラパゴス化してしまい、気がついた時には、またもや世界の動き(世界標準)から大きく取り残されてしまうのではと危惧しています。
以下では、その理由と、ではどのように進むべきかを考えていきます。

 4-1.前提知識:ブロックチェーンとその種類

ブロックチェーンとは

ブロックチェーンは、中央集権的な組織を必要としないピア・トゥ・ピア ネットワークです。このネットワーク内のピアと呼ばれるノード同士は、仲介者なしに取引を行うことが出来ます。

またブロックチェーンは、暗号技術や取引を検証するための独自なコンセンサスアルゴリズム(合意形成をはかる仕組み)により、ネットワークの安全性や、データが正しいことを保証しています。

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ブロックチェーンの基本的な効用は、以下のとおりです。

ブロックチェーンの基本的な効用

1. ビザンチン耐性
サーバーに一定数のハッキングがあったとしも動き続ける。

2. 改ざん耐性
ブロックチェーンに書き込んだデータは書き換え不可能である。

3. 高可用性
一台でもサーバーが落ちるとシステム全体が落ちるようなことがない。

4. アドレスによる疎結合の容易さ
公開鍵が一意のIDとなり、ブロックチェーン同士が結合しやすい。

またブロックチェーンは、大きく以下の2種類に分類されます。

ブロックチェーンの種類

1. パーミッションレス型
管理者が不在のパブリックチェーンです。
ユーザーは、ブロックチェーンへの参加、取引の実施、アクセスに許可が必要ありません。

2. パーミッションド型
許可された管理者がいるブロックチェーンです。
ユーザーは、ブロックチェーンのコンセンサスへの参加、取引の実施、アクセスに管理者の許可が必要です。
パーミッションド型の中には、単一企業が管理者になるプライベート型と複数企業が管理者になるコンソーシアム型の大きく2つがあります。

以下、パーミッションレス型をパブリック型、パーミッションド型をプライベート型と呼び、それぞれのブロックチェーンについて説明していきます。
※今回は説明を分かりやすくするため、パーミッションド型についてはプライベート型のみを抜粋しております。

パブリック型

パブリック型は、ブロックチェーンの基本形モデルであり、ビットコインやイーサリアムなど多くの暗号資産で使用されています。ユーザーは、自身のアドレスを作成し、ネットワーク上で取引の検証を行う、もしくは単に他のユーザーと取引を実行するなどの形でネットワークに参加します。

パブリック型の概要は、以下のとおりです。

パブリック型の概要

代表的な特徴
1. 広く分散化されている
2. 匿名性がある
3. 取引履歴に透明性がある
4. データが覆される確率が時間によって減少する

メリット
1. 誰にでもオープンである
2. ネットワークの参加者に、取引への信頼性を提供する
3. ネットワークの参加者に、経済的インセンティブを与える

デメリット
1. スケーラビリティ問題
仲介者なしに取引の検証や確認を行うには多くの処理と時間を要します。
例えば、ビットコインでは取引が承認されるまでに約10分の時間がかかります。

2. 電力消費が激しい
検証を行うマイニング処理では多くのマシンパワーや電力が費やされるため、エネルギーをいたずらに消費しているとの指摘もあります。

3. ファイナリティ問題
ファイナリティは「その決済が確定した状態」を意味する金融用語で、日銀では「ファイナリティのある決済」を「それによって期待どおりの金額が確実に手に入るような決済」と説明しています。
パブリック型に導入されているコンセンサスアルゴリズムでは、取引のファイナリティを確保するのは困難です。
プライベート型

プライベート型は、特定の管理者が存在し、限定されたユーザのみが利用できるブロックチェーンです。ネットワークは外部に公開されないため、処理やデータを公にせずプライバシーを確保したい企業や組織内での用途に向いているとされ、とくに金融機関で活用が推進されています。

プライベート型の概要は、以下のとおりです。

プライベート型の概要

代表的な特徴
1. ブロックチェーンネットワークのカスタマイズが可能
2. スケーラビリティがある
3. データが確定する(ファイナリティがある)

メリット
1. 独自のコンセンサスアルゴリズムを採用することができ、
  取引スピードが早い
2. 拡張性が高い
3. 現在の中央集権的なトップダウン型組織構造との親和性が高い
4. PoWのような経済的インセンティブを必要とせず、
  ブロックチェーンの運用を続けていくことが可能
5. ブロックチェーンへのデータ記載に承認者が存在するため、
  悪意のあるデータが書き込まれるリスクを回避可能

デメリット
1. 分散化されていない
2. 取引履歴に透明性がない
3. ネットワーク参加のために許可が必要
4. 匿名性がない

 4-2.プライベート型が抱える矛盾

プライベート型は、パブリック型が抱えていたスケーラビリティやファイナリティ問題といった課題の技術的解決策として誕生しました。しかし、ここで1つ重要な疑問が生じます。それは「果たしてブロックチェーンである必要があるのか?」というものです。

この問いは非常にシンプルではありますが極めて本質を突いており、ブロックチェーンに関わるすべての人が少なくとも1度は直面するもので、俗にWhy Blockchain(ワイブロ)問題と呼ばれます。

冒頭で述べたとおり、ブロックチェーンは現代の中央集権的なWeb(Web2.0)の課題を解決する「手段」であり、その本質は「分散」にあります。そのため極論ではありますが、いくらパブリック型に課題があると言っても、一部の管理者の監視下で様々な処理を行い承認を得るプライベート型の構造は、ブロックチェーンを使用していない多くの既存のシステム構造と大きく変わらず、ブロックチェーンである必要がないのです。

しかし、現在ブロックチェーンを導入している企業の多くがパブリック型ではなくプライベート型を採用しています。どうしてこのような状況が生まれてしまっているのでしょうか。

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 4-3.Web3.0に沿わないプライベート型

あらゆるモノがデフ化されていくWeb3.0の社会を見据えたならば、確実にパブリック型が正となります。しかし、「ではパブリック型を今すぐ既存の枠組みに導入できるか?」となると、その答えは「No」です。
なぜなら、現在のパブリック型が抱える課題を企業は許容できないからです。そのため、多くの日本企業はパブリック型が抱える課題を解決するプライベート型を採用しているのです。しかし、これこそ国内ブロックチェーン業界がガラパゴス化してしまうのではと私たちが危惧する要因の1つです。

パブリック型とプライベート型の間には分散化とスケーラビリティのトレードオフがありました。しかし、ブロックチェーンはあくまでWeb3.0実現に向けた手段の1つであり、Web3.0において分散化は必要不可欠な要素であることから、いくらトレードオフといえども分散化だけは絶対に失ってはならないのです。

プライベート型を導入している企業の一部は、分散化というブロックチェーンの本来の目的を見失っており、「ブロックチェーンの導入」自体を目的化してしまっているのです。まさに手段の目的化、矛盾を抱えた着地です。

では、Web3.0に向けてパブリック型を前提としたとき、企業はどのように進むべきなのでしょうか。

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満たすべき要素は2点あります。
まず1点目は、組織を徐々にDAO化させていくことです。組織のDAO化は、Web3.0において必要不可欠な要素となります。現状の株式会社をDAO化させていくには、以下のようなステップが必要です。

株式会社をDAO化させていくステップ

ステップ1
コミュニティの一部に向けて、トークンを配布する。
※配布対象のコミュニティメンバーは、エンジニアや投資家など本プロジェクトへの成長をサポートするメンバーが中心となります。

ステップ2
トークンを暗号資産取引所に上場させ、一般の参加者でも購入できるようにする。
※トークン保有者は、機能拡充などプロジェクトの方向性決定や、新たな提案を行う権利を持ちます。
※まだこの段階では、組織のコアメンバーが大多数のトークンを保有し、組織運営の中核的な存在を担います。

ステップ3
一定数のトークンが多くの一般参加者に保有されており、トークン保有者による組織運営が可能であると判断されたタイミングで、組織のコアメンバーが保有していたトークンの大部分を市場に流通させ、組織運営権をコミュニティに譲渡する。

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2点目は、利用するブロックチェーンにインセンティブ設計を導入することです。

パブリック型の特徴であるパーミッションレスを実現するには、多くの参加者が必要となります。ビットコインなどのパブリック型が分散化されたただのデータベースと異なる唯一のポイントは、パブリックでもシステムが機能し続けることが可能なインセンティブ設計と、そのインセンティブを欲する多くの参加者にあります。

ブロックチェーンを活用してWeb3.0を実現するためには、インセンティブ設計が非常に重要となります。例えばビットコインのマイニングに対する報酬をビットコインにすることで、エコシステムが衰退してしまうような行為を取ることは、参加者自身にとって非合理的とする設計などが挙げられます。ブロックチェーンの特性を生かした適切なインセンティブ設計、マーケットデザインなどを行うことが非常に重要となるのです。

企業は、Web3.0に向けてこれら2点を抑えたうえでパブリック型を前提に進むべきと私たちは考えます。

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先述のとおり、もともとプライベート型はパブリック型が抱えていた課題を解決するべく生まれたものです。しかしWeb3.0を前提にしたとき、パブリック型の課題は、プライベート型ではなく、あくまでパブリック型で解決されるべきなのです。

一般に技術的課題は、その課題が明確になっている以上いずれ必ず解決されますが、パブリック型が抱えるスケーラビリティの問題も同様です。課題がある以上、世界中の研究者やエンジニアはその解決に向けたあらゆるアプローチを止めません。実際、EthererumやBitcoinが抱えていたスケーラビリティ問題も、Ethereum2.0へのアップデートやBitcoin Lightning Networkで今後解決されていくことが予想されています。

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 4-4.Web3.0に沿わないプライベート型を採用してしまった背景

ここまでで、プライベート型はWeb3.0には沿わないと述べてきましたが、そもそもなぜこのような状況になってしまったのでしょうか。それは、国内ブロックチェーン業界における事業者やそのサービスを利用するユーザーにWeb3.0の思想が根付いていないからです。このままではWeb2.0のIT業界同様、ブロックチェーン業界においてもまた日本はガラパゴス化してしまい、世界から置いていかれてしまいます。Web3.0の思想を前提にブロックチェーン業界を発展させなければ、世界基準で日本が存在感を示す未来は確実に訪れません。

実際、最近ブームのNFTでも、日本は既に世界基準から大きくズレてしまっています。

 4-5.具体例:NFT市場における日本のガラパゴス化

OpenseaやNBA Top Shotなど海外NFTマーケットプレイスの大ヒットを受け、日本国内でも複数の企業がNFTマーケットプレイスへの参入を表明しています。世界で人気のIP(知的財産)コンテンツが日本から豊富に生まれている現状を踏まえると、世界トップクラスのデジタルコンテンツの土壌が日本にあることは自明です。
この潜在的に大きい日本の市場を海外のプレイヤーに奪われないためにも多くの日本企業がこの市場に参入すること自体は大変すばらしいことです。しかし、現在の状況を俯瞰で捉えたとき、大きな懸念が残ります。それは、国内NFT市場が「Web3.0」の思想を欠いたまま進んでしまっていることです。以下、ユーザーと事業者それぞれの観点からもう少し詳細に懸念を整理していきます。

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ユーザー側の懸念

現在、日本では個人の情報発信やアクションによって誰もが生産者や販売者になり、独自の経済圏を形成できる「クリエイターエコノミー」が盛り上がりを見せています。そういった観点でも、デジタルコンテンツを価値化できるNFTはユーザーにとって非常に魅力的です。

しかし、昨今のNFTブームにおいてWeb3.0の思想を持っているユーザーは日本に殆ど存在しません。大半のユーザーは今まで難しかったデジタルコンテンツの価値化ができるというNFTの表面的な特徴のみを捉えてこのブームに飛びついているに過ぎないのです。

たしかにWeb2.0の思想のままでも、しばらく国内NFT市場は盛り上がり続けるでしょう。しかし、これから世界がWeb3.0へとゆっくり、でも確実に進んでいく中、国内ユーザーがいつまでもWeb2.0の思想のまま留まっていると、間違いなく彼らは世界から取り残されることになるでしょう。
事業者側の懸念

仮に国内ユーザーがWeb3.0の思想を持つようになったとしても、事業者側に同様の懸念が残ります。
これから世界がWeb3.0へと進んで行く中で、海外の事業者はあくまでもWeb3.0の思想を前提にサービスをつくっていきます。

そういった状況の中、もし仮に日本の事業者が今後もWeb2.0の思想でサービスをつくり続けたとしたら、果たしてWeb3.0の思想を持つユーザーはそのサービスを利用するでしょうか?確実にされません。そして気が付いた時には時すでに遅し、日本発のサービスは誰からも利用されず、ガラパゴス化どころではなく、もやは世の中に日本のサービスが残ることはないでしょう。

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こういった状況にならないよう、まず何より重要なのは、やはりユーザーと事業者それぞれがいち早くWeb3.0の思想を理解し、その前提で市場をつくっていくことです。そのうえで事業者は「まずは日本市場から始める」というこれまでのWeb2.0における定石が通じないことを理解し、「Day1からグローバル」で戦わねばなりません。なぜなら、Web3.0において国境は殆ど存在しないに等しいからです。
また、現在のNFT市場は比較的リテラシーが高いユーザーを中心に形成されており、乱高下を繰り返す暗号資産市場と同様まだまだ一般ユーザーにとってかなりハードルが高いものとなっています。
NFT市場の更なる成長や発展を目指す上で、事業者はWeb3.0の思想のもと誰でも簡単に利用できるサービスづくりを進め、ユーザーの利用ハードルを限りなく下げながら事業を推進することが今以上に求められます。

5.まとめ

Web2.0の中央集権的な構造が抱える課題をWeb3.0の分散化により解決するデフ化の流れは、不可逆的に進んでおり、Web3.0を実現するために生まれたブロックチェーンは、ビットコインなどのパブリック型を中心に世界的な注目を集めています。

しかし日本企業の多くが、ブロックチェーンを導入する際に既存のWeb2.0的な思想から抜け出せず、分散化という本来の目的を見失ったプライベート型を採用しているため、国内ブロックチェーン業界はガラパゴス化の一途を辿りつつあります。

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そういった状態からいち早く脱するためにも、日本の事業者やユーザーはWeb3.0の思想を理解し、パブリック型の抱える課題を許容できないとしても、その解決策としてプライベート型を採用するのでなく、あくまでパブリック型を前提に、①組織をDAO化し、②利用するブロックチェーンにインセンティブ設計を導入することで、Web3.0へと向かっていくべきなのです。

また、Web3.0において国境は殆ど存在しないに等しいため、国内ブロックチェーン業界が世界基準で発展していくためには、「Day1からグローバル」で世界の市場に挑戦していくことも極めて重要となります。

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6.最後に

日本は過去、製造業を中心に世界を席巻しましたが、ITにおいては圧倒的に世界で敗北しました。非常に悔しいことですが、これは自明です。しかし、初めから今程の差をつけられていたのでしょうか?いいえ、そんなことはありません。

iモードの成功が例に挙げられるように、モバイルインターネットにおいて一時日本は世界をリードしていましたし、ITで日本が世界を獲るチャンスは確実にありました。しかし、ガラパゴス化が進みすぎたがゆえスマートフォンを軸とした新たなプラットフォームによる仕組みの構築が遅れ、もう巻き返せないような現状になってしまったのです。

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Web3.0の未来は確実に来ますが、この大きな潮流は日本がもう一度世界を席巻し、巻き返すチャンスとなり得ます。しかし、現在の国内ブロックチェーン業界は、このまま進んでしまうと再びガラパゴス化し、世界から取り残されてしまうと私たちは考えています。

Web2.0におけるバイブルを旧約聖書とするならば、この記事がWeb3.0における新約聖書のように、ブロックチェーンの世界で戦う日本の同志たちにとって常に立ち返るべき指針となれば幸いです。

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今後もブロックチェーンやWeb3.0に関する様々な情報を定期的に発信していければと思いますので、皆様どうぞ引き続き宜しくお願いいたします。

問い合わせはこちらまで
Schop(@SchopTech
堀田(@yssy_81)土田(@i_am_shinya

今回も13,000文字超えと前回同様の長文となってしまいましたが、ここまで読んでくださりありがとうございました!!!(>_<)



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