スクールロイヤー、自身の一年を相談件数から振り返る

コロナの影響下の社会や、その中にいる子どもたちの実情とか、各学校の校長先生のマインドが相談件数に大きく反映されたなって話。

スクールロイヤー、今年一年を振り返る

最近PDCAサイクルを勉強したので、早速色々取り入れて回し始めているのだけど、手頃なところとして、学校からの相談数についての評価・分析をやってみた。

まず、コロナで世の中が大騒ぎになった時点で、相談数が増えるかと思っていたけれども、むしろ全体として相談数はかなり減少していた。休校期間があったことを差し引いても少ない。緊急対応体制の問題は、むしろ教育委員会からちょくちょく相談されていたので、そこである程度現場への余波を防げていたのかもしれない(と、書きつつそんなに自信はない。自分以外の部署や現場が本当に頑張っていたんだろう)。

あとは、学校でのトラブルというと、こどもが居て初めて起こるものも多いし、保護者も子どもが登校していないのに学校に対してとやかく言うこともなかったのだと思う。また、登校がはじまっても、社会全体が我慢が当たり前のベースの中で、学校に対して何かを求めたり期待するような状況でもなかったんだろう、というのが個人的にはしっくりくる。

コロナ禍の学校現場

コロナ禍での制約やストレスというのは時限爆弾のようなもので、子どもたちのストレスはきっと今後どこかで、何かしらの形で爆発するだろうなと思っている。ただ、個人的には登校再開からほどなくして爆発するだろうと推測して身構えては居たのだけれど、驚くほど肩透かしにあっているのが現状だ。

学校の先生に子どもたちの様子を聞いても、少し異常というか、違和感はあるらしい。やたら聞き分けのいい子が増え、わがままを言ったり何も気にせずはしゃぐような時間が減り、子どもたちの心は今どうなっているんだろうかとふと不安になるようだ。9月頃からやっと少し緩み始めたのか、昨年のような子どもならではなトラブルや相談数が少し増え始めたけど、今の感染状況や社会の緊張感の高さを見るとまた減るだろうなと予測をしている。

この時限爆弾はきっと、コロナはもう大丈夫、と社会がなって始めて爆発していくんだろうなと今は感じている。ただ爆発をするなら、それが早いに越したことはない。子どもも周りも、小さな爆弾の方が被害は小さい。時限爆弾は日々のストレスで少しずつ大きくなっている。そしてなにより、子どもたちも周りも、原因と爆発のタイミングがズレるほど、何が原因かわからなくなってしまい、ケアーが難しくなる。とはいえ、教育現場としてできるのは、少しでも子どもたちがリラックスして爆発(発散)させやすい環境を整えていくとともに、いつ子どもたちがSOSを発してもいいように備えをしておくことだけだ。

コロナ以外の要因として見える、管理職による相談格差

この時限爆弾の時差があるとしても、である。全体として大きな事件は少なかったものの、相談件数は0ではなく、それなりの数にはなっている。そしてその件数の学校ごとの分布を眺めていると、学校によって大きな開きがあることがわかった。

スクールロイヤーへの相談が多い=ヤバい学校、だと思われるだろうけれど、そのようなことは決してない。結論としては、安定して相談のある学校は管理体制として安心感が強いし、きっと,組織としても強い。

振り返ってみて、自分の感覚としては、学校の相談状況には3つの段階があるなと感じている。

①相談のほとんどない学校。良くも悪くも学校としてどうにか対応できている状況で、学校が手に負えなくなったり、教育委員会や外部へのクレームが入る形で外から介入されることでスクールロイヤーが入る。

②対応中の案件があり、連絡を取り合う学校。この中でもスクールロイヤーにどの程度関わらせるかについては開きがある。

③日常的に学校状況の連絡をくれる学校。少し気になる状況が出た時点で情報共有があり、かなり早い段階からスクールロイヤーを関わらせている。

三つの中では、③の段階にある学校が組織体制としては強い。小さな火種や、火種になる前から準備・対策ができているので、炎上してからの負担感に比べて精神的にも業務的にもかなり軽く対処できている。

また、継続的に連絡ができるということは、管理職も学校の状況を把握できているということでもあり、職務が達成できている裏付けだと感じている。その点でも、自分はそんな学校を高く評価している。

どうにか対応できている学校のリスク

①のどうにか対応できている学校というのが、学校としてのゴールなのではないかと思うかも知れない。実際スクールロイヤーやSSWができる前は学校の中で対応してきたはずで、それが理想ではないか。

これについて、私自身も当初そういうイメージを持っていたが、いまははっきりと、「んなこたぁーない」と言いたい。

理由は大きく二つある。

①各学校のこれまでのやり方が他の専門領域から見ても適切かどうか、検証ができていない。

②学校のやり方が適切だとしても、専門家を関わらせないことで余分なコストを学校が負っている可能性がある。

①については、ニュースになるような体罰的な指導や、法律に則っていないいじめ対応、PTAの強制加入問題や、ブラック校則の問題などがあげられる。どれも、「これまで学校はこれでやってきた」の負の側面だ。こういった、外部のチェックや意見を取り入れる機会がなかったために放置されていた問題は多くある。

ただ、学校も悪気があったわけではなく「これが普通だと思っていた」と指摘されてはたと気づき、すぐに改めることも多い。学校も指摘されればすぐに治せるマインドがあるのなら、なおさら早期に誰かがアドバイスすべきだし、そのタイムラグの間、不適切な対応に晒されるのは、子どもたちとっていいはずがない。

②については、専門家にはその専門家としてのノウハウと経験の集積があり、そこにアクセスすればすぐに解決できることも多い。2、3日悩んでから相談されたものも、電話五分で解決なんてことはよくあるし、いじめ対応についての保護者への細かい説明などは、学校現場で四苦八苦するより任せてもらった方が保護者もわかりやすく、学校も楽で、私も不正確な説明によって炎上してから対応するより遥かに楽なので三方よしだ。

3人よれば文殊の知恵というが、3人が予定を組んで他の仕事を止めて集まり、うんうん唸るコストをかけなくても、文殊に聞けば答えはわかる。

そんなわけで、学校現場に自信があろうとなかろうと、外部相談を活用しない理由はないというのが今の自分の考えだ。

トラブルの中にあってスクールロイヤーを使わなくなる学校

そんなわけで、①の段階にある学校は、なんにせよ無くしたいなというのが来年の目標なのだけど、②の段階の学校でもまだまだ課題はある。

当初炎上して緊急で呼ばれて初動の打ち合わせなどに参加するが、そのあと次の連絡が続かない学校がある。

そのあと、「あの件大丈夫かなぁ」と思いながら根掘り葉掘り進捗聞き出すのも嫌がるかなと連絡を待っているのだけど、その次は,同じ件が鎮静化しきれておらず、また炎上してから連絡が来たりする。今でも振り返ってみて、原因は色々考えられるのだけど、ここで書けるほど何か明確な理由を見つけられているわけではない。

学校によって説明方法やスタンスを変えることはしていないので、管理職と自分との相性やセンスの問題なのかもしれない。

もちろんそんな学校ばかりではなく、上手く「ハマった」学校は③の段階に無事進んでいて、ガンガン活用してもらいながら色々独自の取り組みを始めていたりする。一部の学校に限られるけど、管理力の上限が高まっているというのは自分の成果であると思う一方で、下限を上げられておらず、③と②.①の段階とで管理状況の格差が広がってしまっているのは、リスク管理を任されてる立場としては大きな改善点でもある。

自分の関わり方や話し方の問題かもしれないし、そういうところも含めて来年も丁寧に自分の仕事を評価していきたいと思う。

やってきたことも、これからやれることも多い一年

そんなわけで、1年間を相談件数という切り口から考えてみた。これだけでも色々なことが見えてきたなーと書いていて少し楽しかった。すごいなPDCA。

というわけで、まずは、①の段階をなくし、円滑なコミュニケーションを管理職ととれる連係関係を大きな目標に、また来年から頑張っていこうと思う。一人でも多くの子ども達が今年より来年がいい一年だったと振り返られることを祈って。

それではみなさま良いお年を。

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