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理屈じゃなく惹かれたんだから仕方ない

 1年弱、ポルトガルへ行くために退職すると告げた時、
「なぜポルトガル・・・?!」と散々、不思議がられた。
 なんだったら「ポーランドへ行くって聞きました!」から
「ブエノスアイレスへ行くって聞きました!」と大陸を
飛び越し、最後には「イタリアに行くんでしょう?」と、
ひとまずヨーロッパには戻ってきた。

 なぜポルトガルなのか。
 理屈じゃなく惹かれたんだから仕方ない。
 それを格好良く言えば「恋に落ちた」と言うのだろう。

 2019年1月、初めてリスボンへ行った。
 夜、おそら22時台だったと思う。リスボン空港へ着き、
入れ替えたsimが自分のせいでうまく使えずネットがない状態。
 空港の外に出て巡回するバスに乗り、車内のバス停の
表示が見えやすそうな位置に着席した。
 出発してしばらく。
 何かがおかしい。違和感がある。

 「もしかして、車内放送がない・・・?」と気づいた。
車内がいつまで経っても静かすぎる。
 そしてもう一つ気づいた。
 次のバス停の表示もない。
 世の中にそんなバスがあるのか?
 地球の歩き方には書いてなかったぞ、と内心、パニック。
 放送もない、車内表示もない。ネットもない状態で
どうやって降りればいいんだ・・・?!とバクバク
心臓が跳ね、すぐに窓側に移って車窓外のバス停を
見つけることにした。

 目的地で降りられるかどうか不安なはずなのに、バスで
リスボンの街へ出た途端よくわからない高揚感に包まれた。

「あ、わたし、ここ絶対好き!!」

まだ大して触れていないのに、少し見た街並みにそういう
確信が腹の底から湧いてきて、とんでもなくわくわくした。
 その瞬間落ちた、リスボンに。
 白い建物に起伏の激しい街並み。
今見た横道は上りだったのに、次のブロックの道は下っている。
え?ここの街、どうなってんの・・・?!と初めて見る感じに
ハテナがいっぱい。

 そうこうしているうちにレスタウラドーレス広場の
バス停に着き、「この次で降りたら近いって口コミで
見た気がする!」と野生の勘で思い出し、無事、
お目当てのバス停で降りた。

 ホテルで荷解きをし、一目で落ちた街。
明日から観光が始まるとどうなるんだろう、と期待に
胸を膨らませて眠った。

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