お客さまの反応をリアルタイムで開発に役立てる!研究員とお客さまをつなぐAIとは?【KAORIUM導入インタビュー:資生堂研究所 S/PARK】
「この香り、あなたはどう感じますか?」
香りを言葉で表すのは難しいことから、五感の中でもっとも未知な領域とされてきた「嗅覚」。そんな嗅覚のデジタル化に取り組むベンチャー「セントマティック」が開発するのは、人の香りの感じ方と膨大な数の言語表現を学習した世界初のAIシステム「 KAORIUM (カオリウム)」。「すっきり」「透明感」など香りの印象を分かりやすく言語化し、言葉を頼りに、その人にとって「もっとも好みの香り」を導き出すお手伝いをします。
KAORIUMの体験動画はこちら
そんなKAORIUMを、2023年4月28日(金)に、資生堂から発売された新商品『S/PARK(エスパーク) フレグランス ベイサイド カメリア』の開発工程において活用いただきました!
資生堂グローバルイノベーションセンター「S/PARK(エスパーク)」は、横浜・みなとみらいにある「お客さまとの共創」をテーマにした、“美のひらめき”を感じ未来のイノベーションや新しい価値づくりを目指す美の複合体験施設。発売された『S/PARK フレグランス ベイサイド カメリア』は、S/PARKにて、研究員が企画から開発、製造、販売までを完結させた完全オリジナルブランドの第一弾となる商品です。
今回は、この新商品の開発にKAORIUMがどのように活用されたのか、資生堂研究所の研究員 幸島柚里(こうしまゆうり)さんに、話題の新商品についてや実際の開発についてお話を伺ってみました。
新商品『S/PARK フレグランス ベイサイド カメリア』とは?
ーー今回発売された「S/PARK フレグランス ベイサイド カメリア」は、どんな商品ですか?
『S/PARK フレグランス ベイサイド カメリア』は、S/PARKでしか出逢えない研究員発オリジナル化粧品で、2023年4月28日に販売を開始しました。「Born in the Dreams of Researchers」をコンセプトに、研究員の夢やイマジネーションがつまった商品です。企画、開発、製造、販売のすべてを研究員自らがS/PARK内で行っています。
どんな香りかと言うと、骨格はフローラル。つけ始めのトップは「透明感」があって「みずみずしい」というような「清潔感」を感じられる香りです。それがだんだん時間が経つにつれて、「華やかさ」や「品のある」、「落ち着いた」香りに変化していきます。時とともにうつろう花の表情をイメージして、香りの変化も楽しんでいただける香水です。
普段の商品開発では、マーケティング部門でブランドのコンセプトやターゲットを決め、研究員はそのテーマに合わせて香りの方向性を提案していきます。ですが今回は、ターゲットの設定から、世界観づくりまで、私たち研究員が主体となって行ったので本当にチャレンジングな経験でした。
今回の商品のコンセプトには、資生堂の香り研究や、香り創りの歴史を踏襲することや、私たち研究員のアイディアを形にするだけではなく、「お客さまとの共創」にかなり重点を置いています。S/PARKの「お客さまと研究員が融合できる場」というコンセプトのもと、商品開発を続けてきました。その中で、お客さまのお声をお伺いする手段の一つとしてKAORIUMを使って「開発途中の香り表現を言語化する」ことにトライしました。
S/PARK に来てくださるお客さまってどんな香りが好きなんだろう、 流行っている香りって何だろうと、お客さまのことを想いながら、S/PARK だからこそ出せる世界観を追求してできた香りなので、ぜひS/PARKにご来場いただき嗅いで頂きたいです。
新商品の開発にKAORIUMはどのように活用された?
ーー今回の新商品の開発において、KAORIUMはどのように活用されましたか?
S/PARKが掲げるテーマ「お客さまとの共創」のひとつの取り組みとして、KAORIUMを用いた「 香りの言語化実証実験 」を2022年7月〜10月の3カ月間にわたり実施しました。S/PARKの1階に、資生堂の香料に合わせてカスタマイズされた香り体験デバイス「KAORIUM」を設置し、来場された一般のお客さまにKAORIUMを用いて開発途中のS/PARKフレグランスのプロトタイプを嗅いでいただき、お客さまの香りの感じ方データを収集、集まったデータを商品開発の参考にしました。
KAORIUMの上に並ぶのは、資生堂が開発した20種類の香り。この中に、開発途中のプロトタイプが数種含まれており、KAORIUMを通してお客さまが感じた香りを言語化することで、開発途中の香りがお客さまのイメージと合致しているかどうかを、開発とリアルタイムで確認する手段として活用させていただきました。
【実証実験の内容】
資生堂が開発した20種類の香りのサンプルを一般のお客さまに嗅いでいただく(※ 20種類の中に開発途中のサンプルを複数候補搭載)
お客さまが香りに対して感じた『香り表現言葉』を収集
収集したデータをビジュアル化し、サンプルが開発者の設計意図と相違ないかを確認
《 KAORIUMで紐づけされた「香り表現言語」》
品のある、透明感のある、洗練された、みずみずしい、清潔な など
2022年の初めから開発が始まった今回の商品には、当初から「ナチュラル感を感じる透明感や、高級感がある香りをつくろう」という計画がありました。KAORIUMをつかってお客さまに体験していただいた数種のプロトタイプは、「高級感」や「透明感」「清潔感」といった言語表現が選ばれることが多く、私たちが想定していた香りをお客さまに届けられたのではないかと自信が持てました。
3ヵ月にわたる設置期間に、1500名以上のお客さまに体験していただき、たくさんのデータを収集することができました。
開発工程にKAORIUMを取り入れた感想は?
ーー実際に開発工程にKAORIUM取り入れてみていかがでしたか?
KAORIUM体験は、研究員とお客さまをつなぐきっかけの場を与えてくれたと思います。
まず、KAORIUMを導入したイベントがあったからこそ、たくさんのお客さまに来場いただけて、KAORIUMを活用した実証実験によってたくさんのお客さまの声をお聞きできました。
そして、通常の商品開発であれば、プロトタイプができてからテストをするまでにタイムラグがあり、開発しながら同時にお客さまの声をいただくことが難しいのですが、3ヶ月間KAORIUMを用いた実証実験を行なっていたので、開発と並行しリアルタイムで研究員がお客さまの感想を収集・確認できました。これは、システムとして新しいと感じます。社内でも「このようにタイムリーにお客さまの声を収集できるのはすごくいいね」というコメントがありました。
今回の香りの開発は最初にコンセプトを決めるのも、解釈するのも、形にするのも私たち研究員という状態の中で、実際にKAORIUMを通じてお客さまに香りを嗅いでいただいて、お客さまに感じて頂いた印象が狙っているものと合っているとわかることがとても自信になりました。反対に、自分は合っていると思ってたけど、お客さまの目で見たら違ったということもあって。その両面を併せ持っているからこそ、KAORIUMを活用して「お客さまとの共創」を実現できている実感を得ることができました。
今後の展開について
ーー今後、KAORIUMを活用してやってみたいことはありますか?
実現できたらいいね!という案はたくさんあるんです。今後も研究開発にとどまらず、マーケティング的な視点であったり、お客さまとのタッチポイントを増やすといった視点でも、KAORIUMを活用できたら素敵だなと思っております。
【資生堂グローバルイノベーションセンター(S/PARK・エスパーク)】
資生堂の研究開発拠点「資生堂グローバルイノベーションセンター(S/PARK・エスパーク)」は、都市型オープンラボとして2019年4月に本格稼働。オープンスペースとなる低層階を中心としたお客さまと研究員の交流、国内外の外部研究機関との連携、研究員の多様な働き方などによる“多様な知と人の融合”をコンセプトとしてイノベーション創出に向けた活動が推進されています。
KAORIUMその他の展開とご相談について
今後も、香りと言葉を変換するAI「KAORIUM」を活用した取り組みは続きます。本取り組みについて、関連する記事は お知らせ でもご覧いただけます。
セントマティックでは、この他にも KAORIUMを活用した「KAORIUM for Sake」 飲食店向けメニューツール や、小売店向けサイネージ など、さまざまな業界に対応するサービスを提供しています。「香り」にまつわる新たな体験価値の創出をお考えの方は、ぜひ、こちら からお気軽にお問い合わせください。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?