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フランス現代哲学者ミシェル・セールがジュール・ヴェルヌを語る!「現代にこそジュール・ヴェルヌが必要だ」

まったく意外な話でした。

『海底二万マイル』や『地底旅行』、『80日間世界一周』などの名作を次々と発表した19世紀フランスの大作家にして、

イギリスのH.G.ウェルズと並び、「すべての現代SF小説の父」と呼ばれる、ジュール・ヴェルヌ。

そのジュール・ヴェルヌについての浩瀚な評伝である『ジュール・ヴェルヌの世紀』という大著に、

なんとなんと、フランス科学哲学の大御所、

ミシェル・セールが序文を寄せていました!

はたして、ミシェル・セールはジュール・ヴェルヌに対してどのような考えを持っていたのか?それを把握するのに、この序文は最適な素材といえるのですが・・・

おそらく、まず、こんなことがアタマに浮かんだ方は多いのでは?「フランス現代哲学者が、ジュール・ヴェルヌについての論文を寄せている?きっと『ジュール・ヴェルヌは偉大だが、彼の時代のあと、科学というものは悪い側面も持ってしまった。現代において、科学と文化のあいだには、重苦しい断絶がある』みたいな、現代科学批判になるんだろうなあ」と。

・・・違うのです。

さすがはバシュラールの強力なる後継者、ミシェル・セール。

ジュール・ヴェルヌに対する賛辞のみならず、

「現代の問題は、科学と我々の生活とを結びつけてくれる、ジュール・ヴェルヌのような作家がいないことだ。つまり、現代にこそ、ジュール・ヴェルヌのような人が、必要なのだ」という論旨。

この展開は意外で驚いた!

ミシェル・セールとて、

現代において科学が個人の意思などを超え、科学と生活世界の間に、断絶があることを認めている。

だが、ミシェル・セールは、こう言い切っています。

「科学と生活世界との界面を埋めることができるのは、哲学者でも科学者でもない・・・文学者の仕事である」

と。

これは正直、SF小説ファンや、SF作家を志す人にとっては、とてつもなく勇気づけられる、フランス哲学界からの応援メッセージでしょう!

確かに、私も、この序文におけるミシェル・セールの前向き精神には感動に近いものを覚えました。

これだけ言っておいて・・・すいません、実は、私個人はミシェル・セールの科学観にはふだんは「賛同しかねる」と思っているのですがw、

今回の、この序文、ジュール・ヴェルヌへの圧倒的賛辞と、「現代にもジュール・ヴェルヌのようなSF作家が必要」というメッセージには、何かを感じ取った、、、と正直に、申し上げておきましょう。

何をおいても、ミシェル・セールのこの言葉を受け止めて、

ジュール・ヴェルヌを読み直す人が増えてくれれば、

ジュール・ヴェルヌ作品の再評価が進めば、

ジュール・ヴェルヌの愛読者の一人である私はとても嬉しいし、

さらに、「自分こそが、ミシェル・セールのいう『現代のジュール・ヴェルヌ』になってやる!」とやる気を奮起させる、若いSF作家志望者が増えてくれれば、

SF好きとして、この上なく、うれしいことと、思うのです。

※というわけで、私自身は、以下の最近記事でもお話している件のつづき、うちの子供達にもジュール・ヴェルヌを紹介すべく、『地底旅行』の手作りマンガ化という作業、ますます進めていきます!↓↓


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