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AI世代ならきっとわかりやすいニーチェ

最近、AIの発展について、

「10年前は、AIによって奪われるのは肉体労働などの単純作業にすぎない、と多くの識者が言っていたのに、ハナシが違うじゃないですか!クリエイティブな仕事とか知的労働とかのほうがどんどんAIに浸食されているじゃないですか!」

という声をネットで目にするようになったけれども、

もしニーチェ氏が生きていたら

「そら、これでわかったろう?『人間は機械よりも優れている』とか『AIに奪われない人間の尊厳がある』とかいった、つい10年前までは信じられていた「論」もどんどん怪しくなってきている・・・が、ぶっちゃっけ、人類の歴史(特に近代以降)はこの繰り返しだった。『〇〇が正しいのだ』→『間違いと証明された』、『〇〇という絶対に侵されない普遍の価値観がある』→『世代が変わったら価値観まるごとリセットされちゃった』・・・その繰り返し。いまさら驚くこともあるまい」

の一言でしょう。もちろん、返す刀で、

「だからといって、『AIは人間の仕事をどんどん奪っているが、それが結局は人間にとってもよいことなのだ。これによって人類の生活レベルも上がり、人類はよりよき時代に入るのだから』と言っているAI推進論者が正しいというわけではない・・・というか、歴史パターンとして、10年後には今度は彼らが大きな裏切りと失望を食らうだろう」

と言うのではないでしょうか。

「神の死」などというキリスト教圏寄りなことを言っているのでニーチェは「日本人には関係ない」と誤解されがちですが、この射程は、

「未来において『実はそんなものはなかった』『実は間違いだった』と判明する可能性を宿している、つまりは、この世界のありとあらゆる「学説」「理論」「政治的信条」「自己認識」「善悪の基準」「価値観」に伸びていると思っています。

この点でニーチェは徹底していて、「無神論ですら、『神様はいないのだ!それが正しい世界認識だ!』と、宗教とは逆の意味で「信じちゃっている」ヤツらだから問題だらけだ。今度は、未来において、まんがいち、『実は神様はいたと判明しました!』となったら、今度は無神論者たちはどうしてくれるつもりだ」的なところまで、「信じる思想ゼロ」状態に我々を追い込もうとしてくる。

そういうふうにみると、「人間そのものの尊厳とか、個性とかまでが崩れてきている」今のAI世代には、ニーチェがむしろわかり良いかもしれない。

もちろん、二-チェの壮大にして無謀かもしれない「目標」とは、

そのように「信じられるものなどこの世界にはゼロ・・・だけどそれで僕は構わない!AIに僕の仕事を取られようが、AIに僕の尊厳を否定されようが、ぶっちゃけ明日突然人類が滅びようが、僕は関係なく『今』をたくましく元気に生きてやるよん」と言える「スーパー人生肯定論」を哲学的に立ち上げることです。

そんなことが可能なのか・・・!?

その答えは、ニーチェを読んでいても、残念ながら出てこない。ただ、ニーチェご自身は最終的に狂気に陥り精神病院に送られたものの、それはあくまで彼の健康問題であって、

私個人は、ニーチェはヒントになるアイデアならば大量に遺していってくれていると思う。ただし、ニーチェがそうした「信じられるものゼロ時代のための人生肯定思想」を、きちんとした体系にはまとめられず、そのヒントとなりそうなアイデアを断片的に本の中にバラバラと記載し続けるところで力尽きたというのは、その通り。だがもともとそんな「究極の人生肯定論」は、体系的にはまとめられず、さまざまなアイデアの羅列でしか表現できない思想だった、ということかもしれぬ。

いずれにせよ、AI時代の我々がこれに応えるには如何にすべきか・・・個々人が自分で考えるしかないですね。だって、よくよく考えたら、「きっとこれがニーチェの思想だ!」と整理して、それを「確固たる思想として信じてしまったら」、それはそれでニーチェの言っていることと矛盾してしまう。

え?私個人はどう考えているか、ですか?おそらく、ニーチェ自身が「ああでもない、こうでもない」と、いったりきたりいろんなことを考えながら生きていた、その逡巡ライフスタイル自体が、ひとつの答えのようには、私は感じている。日々の思考、日々のニュースをみての懊悩、あるいは日々の人間関係で、好きな人にどうしても惹かれて、嫌いな人にどうしても不愉快を感じる、そんな人生の「浮き沈み」のままにアツく生きていて、それで結局ナニゴトも達成できずにいることも、もしかしたら「折れずに生きる」戦略なのだ(ニーチェの実らない片思いだらけの恋愛エピソードの数々なんて私には共感しかない)。それをやっていて最終的に行き着くところがニーチェ氏と同じく精神病院になったとして、それならそれで、仕方がないと、私は腹をくくっています。

子供の時の私を夜な夜な悩ませてくれた、、、しかし、今は大事な「自分の精神世界の仲間達」となった、夢日記の登場キャラクター達と一緒に、日々、文章の腕、イラストの腕を磨いていきます!ちょっと特異な気質を持ってるらしい私の人生経験が、誰かの人生の励みや参考になれば嬉しいです!