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岩波少年文庫『ホラー短編集』全エピソードを解説する!#1

先日から絶賛している岩波少年文庫ホラー短編集全三巻!エドガー・アラン・ポーもいればサキもいる、ブラッドベリもブラックウッドもいる、ということで、古典ホラー小説好きな私としても実に共感できるアンソロジーになっています。

とはいえ読む人によって「この作品は好きだが、これは嫌い」といろいろ感想の違いが出てくるのが、こういう「名作選集」系の面白いところ。

既に読んだ人にとってはご自身の感想の比較になるように、まだ読んでいない人には収録作品の推薦になるように、

全三巻所収の全作品にヒトコトフタコトずつ、解説と私の率直な感想を添えてみたいと思います!

※ちなみに★マークはあくまで「私の主観的な好み」。人によってきっと好き嫌いは別になるので、あくまで目安としてください。

まずは第一巻『八月の暑さの中で』収録作品から!

こまっちゃった(★★)

第一巻の巻頭を飾るエドガー・アラン・ポーの作品。これは翻訳ではなく、現代の少年少女読書にウケるような文体で翻案したもの。ハッキリ言ってこのカルーい文体を採用したことについては好みが分かれるはず。私もあんまり好きになれなかった。。。ただしこれは全三巻の中でも異色の試みなので、この作品が「合わない!」と思っても、本を閉じないで進んでいただきたい!

八月の暑さの中で(★★★★★)

「そうそう!こういう怪談を読みたかった!」と思った。私はこういうのが一番好き!読んだ後に、なんだか断崖絶壁に置いてけぼりにされたような、不安で寒々しい気持ちになる。幽霊も怪物も出てこないのにこの不条理感は一体!

開け放たれた窓(★★★★★)

私が大大大好きな作家、サキの有名作。ストレートなホラーではない、というところで、この短編集の中ではやや地味に見えてしまうが、私としてはやはりこの人は強く推薦したい!語り口の巧さ、ひっかけの巧みさをぜひ感じてほしい

ブライトンへいく途中で(★★★★)

このうえなく正統派のイギリス怪談。舞台設定といい雰囲気といいオチの効き目といい、「イギリス流のオバケバナシはこうでなくちゃ!」と膝を打ちたくなる教科書のような完成度

谷の幽霊(★)

「ダンセイニには他に名作がいろいろあるのに、なぜこれを選んだ!?」と、こうるさい私はイチャモンをつけたくなったチョイス。もちろん好みの問題であり、こういうのが好きという人もいるのかもしれない。私はいまいちノレなかった。

顔(★★★)

レノックス・ロビンスンの作品。いかにもアイルランドらしい世界観の物語。ホラーというよりはセルティックな妖精物語という感じ。

もどってきたソフィ・メイソン(★★)

一見すると典型的なゴーストストーリーにみせかけておいてオチにヒトクセ入れた感じ。ともあれ個人的にこのオチはあんまりだったなあ、、、。

後ろから声が(★★★★)

超絶技巧派フレドリック・ブラウン。この人はトリックが効きすぎていて、しばしば、「ホラーというよりはミステリーかなあ」と思うことがある。けどこの作品は、いい!ドンデン返しに、「あ、そういうことね!」と納得感あった。ちなみに本書の表紙に描かれている遊園地の風景はこの作品の世界観かな

ポドロ島(★★★★)

もともと異色作家ハートリーの代表作。けっこう有名な作品なので別のところで読んだ人も多いかも。何が起こったのかさっぱりわからないのに、なぜか、とても怖い。読み終えた後に「あれはなんだったのだろう?」とあれこれ自分で空想してしまうタイプの人には特におすすめ。

十三階(★★★★★)

ベタと笑われるかもしれませんが、私はやはり、こういうパターン通りの怪談が大好きだ!だいたい、予想した通りのオチになってくれてむしろ気持ちいい。舞台設定上、TOKYOディズニーシーの「タワー・オブ・テラー」を思い出した

お願い(★★★)

ロアルド・ダールが好きな人には、ごめんなさい、どうもこの作家さん、私にはあんまりあわないみたいなのです!でも語り口の技巧としてはさすがと思う。なんとも気持ち悪い話。

だれかが呼んだ(★★★★)

二十世紀の作家さんですが、イギリス怪談の伝統はしっかり継承されている。イギリスのオバケはこうあってほしい、という安心のクオリティ!

ハリー(★★★★★)

ローズマリー・ティンパリというこの作家さんの作品は初めてだったが、怖さという点で本書の中で頭抜けています。よくぞ少年少女向き文庫というフィールドで、これほど怖い話の収録に踏み切ってくれた!怖い、切ない、救いがない!

以上、『八月の暑さの中で』収録の全十三作品を紹介させていただきました!何かピンとくるものがあったら、ぜひ、手に取ってみてください!

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子供の時の私を夜な夜な悩ませてくれた、、、しかし、今は大事な「自分の精神世界の仲間達」となった、夢日記の登場キャラクター達と一緒に、日々、文章の腕、イラストの腕を磨いていきます!ちょっと特異な気質を持ってるらしい私の人生経験が、誰かの人生の励みや参考になれば嬉しいです!