魚崎

元気があります

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最近の記事

無関心な犬

雑談中、同僚のAさんがちょっと困ったように「あの、◯◯さん(私)って何に興味があるんですか?」と訊いてきて、私はそう言われるまで、この会話はわりと盛り上がっているという認識でいたからピッと緊張した。 その日はそれなりに暇だったのもあって、2人でお喋りしながら仕事を進め、例えば食べ物の話なんかをしていた。 互いの好きな食べ物/嫌いな食べ物の話になったとき、Aさんは「カレーとゆで卵の組み合わせが好きなんですよね」と言い、「カレーを作るとき、ついでに同じ鍋でゆで卵も作ります」と続

    • ひとりでもいけ

      夜、外からネコの鳴き声が聞こえてきて、それが数時間ほど続いたために、あたりの様子を見に行った。 家の近くに側溝があり、コンクリ製の蓋の下から声がする。どうやら閉じ込められてしまったらしいのだけど、姿が見えないうえに通行人の気配があると鳴くのをやめてしまうので、居場所をつきとめるのには難儀した。 これが4日ほど前の出来事で、それからは家で静かにしているとたびたび声が聞こえる、というのがこのところ続いていた。 ところが今日の午後、スーパーでの買い物から帰ってくると、中学生くら

      • もちろん請け負い走りだす

        このあいだ、同僚のAさんとすれ違いざま、一言二言交わした際に「生理用ナプキンを持っていないかBさんに聞いてきてくれませんか」と頼まれた。 もちろん請け負い走りだす。 目ぼしい箇所をいくつか回っていくと、今まさに退勤せんとするBさんをギリギリで捕まえることができ、事情を説明してAさんの元へ向かってもらったのだった。 後日、Bさんと話すタイミングで「こないだAさん大丈夫でしたか?」と訊けば「うん、大丈夫だった。ギリギリだったけど」とのことで安心した。 「よかった」と返しながら、

        • 勘で話しかける

          このあいだ、これまであまり雑談をする機会がなかった人から急に「◯◯さんってゲームとかするんですか?」と訊かれた。 私はゲームをやらないから、そう答えたうえで、しかし相手はきっとゲームの話をしたくて振ってきたのだろうと同じ質問を返すと、「いや、私もあんまりやりません」とのことだった。 「え、じゃあ、なんでゲームの話題?」 「なんとなくでした」 「初手から勘で話しかけてこないでくださいよ」と、もちろん本当に話しかけてくれるなという意味ではなく、つっこみとして茶化すように言うと、「

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          白くなった

          いまの時期、中高生は宿題に追われたりしているのだろうか。まだもう少し猶予があるか。 高校三年生の夏は夏休みが無かった。 そういう学校は結構多いと思うが、私の通っていた高校でも、三年生は受験本番に向けて夏も毎日授業を受けるのが通例となっていた。 だから、終業式のあとHRで担任が夏休みの宿題が配りはじめたときにはかなり驚いた。明日からも普通に学校来るのに!? 私は、せめて「夏休みの宿題」という呼称でなく、「夏の宿題」に改めてくれと抗議した。不誠実でしょ、と。 別に聞き入れてはも

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          散歩して話そう

          夏真っ盛りでいよいよ虫たちの威勢が良い。 今日などは自転車を漕いでいると、しばらくハチと並走する場面があった。 大学生の時、大学構内を歩いていると対ハチ用殺虫剤を持った用務員さん3人組とすれ違い、これは! と踵を返してあとをつけたことがある。これから起こるであろう勝負を間近で見たかった。 そのあとどうなったかは記憶にない。たしか、用務員さんたちが職員しか入れないゾーンに向かって行ったから見られなかったのだっけ。 ハチとの並走を経て帰宅し、冷たい紅茶を飲んだ。 紅茶と烏

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          龍の単位

          小学一年生の夏だった。 算数のテキストの中に「自分で問題文を作り、自分で解いてみましょう」という設問があった。 問.りんご1個を買い、みかんを3個買いました。あわせて何個でしょう? 式.1+3=4 こたえ.4個 みたいな。 算数の文章問題でいつもリンゴやミカンのような退屈なものばかり登場することにうんざりしていた私は、これをチャンスとみて問題文に龍を登場させることにした。 問.龍が5匹いました。そこから4匹いなくなると、残りはなん匹でしょう? 式.5-4=1

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          カステラならいける

          このところ暑さによって確実に食欲がグンと落ちてきている。 こうなると食事がめんどくさいものに思えてきて、一錠で一食分のカロリーと栄養素を摂れるカプセルみたいなものってないのかな、などと考える。 もし、そういうアイテムが食事として主流になっている世界があれば、そこの人々はみんなガムを噛んでいると思う。 本来は食事に際して発生していた、咀嚼運動や唾液の分泌が激減したことによって健康上のリスクが高まり、それらを補うために保健機関がガムを推奨するようになったからである。ガムは基礎的な

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          謎の激痛

          午前四時。 右肩から首にかけての鋭い痛みで目が覚めた。起きようとしても痛すぎて力が抜けてしまい、頭を持ち上げられない。ぎっくり腰の首バージョンみたいな状態になっていた。ぎっくり腰になったことがないからイメージだけれど。 ひとり天井をながめ続け、朝が来れば、ゆっくりと慎重に動いて、どうにかこうにか整形外科にたどり着いた。中学生の頃、部活の剣道で足を傷めた際に通院していた信頼できるクリニックである。 診察では、「すごく痛いんです!夜も目が覚めたんです」「でも昨日まではこんなんじ

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          幽霊のいでたち

          幽霊を見たことがない。 長い髪を垂らして白いワンピースを着ているイメージはある。靴はハイヒールが似合うけれど、なにも履かずに裸足なのもしっくりくる。 ある日曜日、私は部活練習のため学校の体育館にいた。中学生のときの話である。 休憩時間になると、友達が「トイレいくの着いてきて」と言ってきた。お腹が痛いが、ひとりで行くのは怖いらしい。 体育館を出て校舎に入ると、その日、吹奏楽部などの文化部は不在で、校舎内には私たち以外に人の気配が全くなかった。 私たちは剣道部に所属していて、袴

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          未踏の地を銘々歩く

          先週が誕生日だった。 しかし、なぜかここ数日に「誕生日わすれてた、おめでとう!」と約一週間遅れでのメッセージが集中した。 それぞれ別々のコミュニティだから、示し合わせたのではなく、それぞれに思い出すきっかけでもあったのだろうか。なんにせよ嬉しい。 ある友達は、お祝いメッセージのあとに「報告が2つある」と続けた。 「ひとつ目は、出張で北極に行く」とのことで、これには驚いた。 本当にかっこいいと思う。 私はドキュメンタリー番組、特に極地観測船の密着などは、なかなか縁遠い世界なの

          未踏の地を銘々歩く

          出来事をただ自分の中に保留して黙っていることも可能だが、それでは仲良くなりにくい

          夏だからイチャイチャしている中高生をこのところよく見かける気がする。 一緒に下校は、中高生カップルがとる最も基本的な動きの一つだ。 私も中学3年生のとき、彼女を家まで送る形で下校したことがあった。 毎日そうしていたわけではなく、付き合っていた数ヶ月のうち、一緒に下校したのは数度だけである。 その数える程の下校でも彼女の通学路についてはちゃんと覚えられた。 彼女の家の近くには「常光」という表札の掛かった家があった。この家を通過すればもうすぐお別れだという目印に私の中では、なっ

          出来事をただ自分の中に保留して黙っていることも可能だが、それでは仲良くなりにくい

          となりのとなりは私でもある

          昨夜は眠りにつく頃、外で野良猫のケンカが開催されていたようで、鳴き声がすごかった。 高校の頃、教室のドアをちゃんと閉めないクラスメイトがいた。彼は教室に出入りするとき必ず引き戸を10センチほど開けたままにするのだった。 彼と私は普段会話する仲でもなかったから、そんな相手の細かい所作にまで意識を向けるはずもなく、最初は彼のこの癖に気付かなかった。 きっかけは、あるとき席替えによって、私が教室の一番廊下寄り最後方の席になったことで、それは冬だったのだけど、休み時間終わりに教室に

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          結婚。パピコのフタ。ニンジンの乱切り群。

          友達から、奥さんとの写真が送られてきた。 フォトウェディングと言うのか、和装の写真も洋装の写真もあり、それぞれ良い感じのスポットを背にしたツーショットだった。このためにロケに出向いたのだろう。 気付いたとき自分でも驚いたのだけど、その写真らを眺めながら私はニヤけていた。 友達夫婦の晴れ姿というのは、こんなに素敵で心打たれるものなのかと、衝撃だ。しゃらくささを一ミリも感じない。 大学四年のとき、この友達と大学そばの喫茶店でお茶を飲んでいた。普段は専ら学食でお喋りしているのだけ

          結婚。パピコのフタ。ニンジンの乱切り群。

          遠くにありながら密着する

          月を見ながら歩いていた。買い物の帰り道である。 月はけっこう好きで、つい意識を向けてしまう。 子供のころは、たとえば車に乗っている時にどれだけ移動しても上を見れば必ず月の姿があり不思議だった。自分に付いて来ているのだと思った。 遠くに超然とありながら常に私を密着マークしてくれているのは頼もしい。 ふと視線を前に戻すと、いつのまにか向かいから歩いて来ていたらしい野良猫が私ともう50センチほどの距離にいて、本当にびっくりした。ウワッと声が出て仰け反ってしまったのだけど、猫は歩みを

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          ぼんやりスペシャル

          すこし前、白いシャツに飲み物をこぼしてしまい、事態を甘く見積もって普通に洗濯するも、すっかりシミになっていた。 まあ、思い入れのあるシャツでもないのだけど、漂白剤というのがどれくらい力を持っているのか興味があって、いい機会だからと用意した。 洗面器に漂白液と水を混ぜ、そこにシャツを漬け置く。 思い入れのあるシャツでもない、と言うと、他に思い入れのある服があるようにも聞こえるが、決してそういうわけではない。 私はオシャレやファッションのことが何一つ分からないのである。 シャツ

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