光と影、陰と陽の美しさ
「人間にとっての本当の幸せは、光の下にいることではないと思う。」
日本を代表する建築家・安藤忠雄の言葉である。40年間建築の世界を生きてきて、その体験から学んだ、彼の人生観だ。
この言葉ほど、人々を勇気付ける言葉はないのではないだろうか。建築家志望の人に限らず、全ての人に対してだ。
この言葉で、誰もが今を一生懸命に生きることができると思う。
建築家・安藤忠雄
安藤忠雄とは、日本を代表する独学の建築家だ。
1941年の大阪に生まれ、若かりしときは旅をして、チェ・ゲバラに傾倒し、ガンジス川のほとりでゲリラ的生き方を決意したという過去がある。
時代に対する反逆精神を表現しつつ、東大やハーバード大学で教えるという経歴も持つ。
ちなみに、僕は安藤忠雄の名前は知っていても、彼の建築は全く知らなかった。
今も正直よくわかっていない。
しかし、彼の生き方・姿勢・考え方にひどく刺激を受けたのである。
光と影
『建築家 安藤忠雄』は、彼の考え方を綴った本だ。
この本の最後のページにこんな想いが表現されていた。
人生に”光”を求めるのなら、まず目の前の苦しい現実という”影”をしっかり見据え、それを乗り越えるべく、勇気をもって進んでいくことだ。
情報化が進み、高度に管理された現代の社会情勢の中で、人々は、「絶えず光の当たる場所にいなければならない」という強迫観念に縛られているように見える。
大人の身勝手のせいで、幼い頃から、物事の影の部分には目を瞑り、光ばかりを見るよう教えられてきた子供たちは、外の現実に触れ、影に入ったと感じた途端、すべてをあきらめ、投げ出してしまう。そんな心の弱い子供たちの悲惨な状況を伝えるニュースが、近頃はとみに目立つ。
何を人生の幸福と考えるか、考えは人それぞれでいいだろう。
私は、人間にとって本当の幸せは、光の下にいることではないと思う。その光を遠く見据えて、それに向かって懸命に走っている。無我夢中の時間の中にこそ、人生の充実があると思う。
光と影。それが、40年間建築の世界で生きてきて、その体験から学んだ私なりの人生観である。
この言葉から伝わる勇気はどれほどであろうか。
辛い想いや上手くいかない経験があるからこそ、人生の素晴らしい瞬間や嬉しいことが、より一層輝くというのだ。
光と影。
これは、人間の永遠のテーマなのかも知れない。
陰と陽
光と影は二面性だ。相反する二つの要素が合わさって一つを作っている。
この二面性、つまり陰と陽は、古今東西を問わず、世界中が探究している命題なのかもしれない。
映画『スターウォーズ』はフォースの力の二面性であるし、『古事記』に書かれている日本神話はイザナギとイザナミの二面性を表している。
世界中の物語が伝えているのは、畢竟、光と闇、陰と陽、この二面性の美しさなのであろう。
ちなみに、太極拳などで有名な下の図。
これは陰陽を表している中国発祥の模様である。これもまた雑談だが、「太極拳」は英語で「Tai-chi」と言う。僕の名前が「たいち」なのがなんだか感慨深い笑。
陽の中に闇があって、陰の中に光がある。
笑顔の裏には闇があり、孤独の裏には愛がある。
これは僕が好きな言葉だが、二面性の心の美しさのことなのだ。
平原綾香も「jupiter」の中で歌っているではないか。
愛を学ぶために孤独があるなら
意味のないことなど起りはしない
建築家・安藤忠雄が40年間の建築家人生で感じた人生観とは、まさにこのことなのかも知れない。偶然彼の本を読むことになり、こんなことを感じたわけである。
挑戦と恐怖
人は何か一歩を踏み出すとき、多くの場合は恐怖を伴う。
完璧主義な僕は、この恐怖を心から遅れていた。今も、何かしようとするときはビビってしまう。
でも、二面性の美しさ、二つで一つが完璧だとすると、この恐怖をも愛おしく思えるのではないだろうか。その道程に立ち塞がる影は、その先の光をより明るくしてくれると信じれば、勇気が自然と湧いてくるであろう。
死と生。
これもまた二面性だ。
後悔なく死ぬために、今を一生懸命に生きるのは素晴らしい「積極的な光」のような気もするけれど、死を輝かせるために唯一残された「消去法的な光」なこともあるのかもしれない。
どんな理由でこそあれ、今を一生懸命に生きていきたい。
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