マーケティング 価値を考える:女子高生はなぜドトールにいないのか.1

先日、打ち合わせで町中のスターバックスへ行くとかなり混んでいて騒がしく、打ち合わせにはちょっと向かないようでした。待ち合わせていた方がちょうど来たので、すぐ近くの、異なるチェーン店のカフェへ。
こちらはそれほど混んでおらず、さわがしくもなかったので、打ち合わせをすることができました。

僕は普段、カフェ・ド・クリエやドトールコーヒーをちょくちょく利用します。
以前は喫煙席があったこともありますが、飲食店内が禁煙になつわてからも、やはりこれらの店を利用し、自分からスターバックスへは行きません。
なぜかと聞かれると少し困りますが、理由の1つは「慣れ」でしよう。この「慣れ」は、マーケティングを考えるうえで、なかなかのくせ者です。これはスイッチング・コストで謂う「手間コスト」に当たるものです。
もう1つの理由は、前者の2店に比べて、スターバックスが「高い」と感じたからです。

・価格も品質の1つ
マーケティングの講義で、「〇〇の品質を挙げてみましょう」と問うと、学生さんからは、その製品やサービスのスペックやデザインなどがあがります。しかし価格を挙げる学生さんはまずいません。しかし私達は、普段の生活の中でも価格にかなり敏感です。
例えば最近「高見え」という言葉を見ます。100円均一やファストファッションの製品でありながら、高級品のように価格が高く見える、デザインの良いものを指します。ここには「価格よりも高く見える、良いものに見える」というコストパフォーマンスが含まれています。
これ以外でも、私達は無意識のうちに、「費用対効果」を考えて買い物をします。ですから価格も重要な品質の1つなのです。
先の話では、僕にとってスターバックスの飲み物は、その価格に合わないと感じたことになります。

・価格では測れない価値
さて、僕が「高い」と感じるスターバックスには、最初に記したように多くの女子高生がいます。
可処分所得から考えれば、明らかに学生さんの方が、使えるお金は少ないはずです。それでも、例えば僕が普段立ち寄って飲むコーヒーの、倍以上の値段の飲み物を手にしています。この理由を「映えるから」と言っているようでは、本当の意味で、スターバックスにいる女子高生の価値観を説明したことにはなりません。
僕自身、何度か企業や店舗のSNSマニュアルを作成しましたが、こうした企業は大抵の場合、闇雲にSNS発信をしていて、スタッフがイヤイヤ、ただ毎日発信しているだけのものになっていて、何の効果も生んでいません。これならスタッフの負担になり、質(ブランドイメージ)を下げるだけなので、やめた方がマシです。

それでは、スターバックスにいる女子高生の価値観をどのように理解すればよいのでしょうか。

・機能的価値と情緒的価値
価値について考えるとき、様々な基準があります。その中で、今回は「機能的価値」と「情緒的価値」について考えてみましょう。
「機能的価値」とは、製品やサービスが持つ機能そのものの価値を指します。機能に対して費用対効果が高ければ‘オトク’や‘高いコスパといった評価を得ます。スペックなどが重視されるものは、機能的価値が重視されます。
一方、情緒的価値は心の動きを価値として判断します。要はどれだけ心が動いたかによって価値が決まります。近年注目されるようになった経験価値やUXの基になる価値と考えればよいでしょう。
情緒的価値の代表的な視点は、「カワイイ」ではないでしょうか。大学院生時代に、「カワイイを完全に数値化できたらノーベル経済学賞がとれそう」というバカ話をしていたことがありました。その後キモカワなどという言葉が現れ、「絶対ムリ!」と話していましたが、今後はAIによって、ある程度分析が可能になるかもしれません。

・「映える」だけを目指しても、、、 
僕は今、マーケティングの講義で、UXマップの課題を出しています。なぜマップなのかというと、UXには時系列があるからです。この時系列と5W1Hを考えることで、UXマップを作ります。
僕の記事で何度か登場した、バズるや映えるという言葉をやたらと使う人物、、、彼が、彼の言葉を実現したところを見ることはありませんでした。なぜなら、誰がどんなふうに心を動かされるか語れないからです。

スターバックスにいる女子高生は、ほとんどの場合2人以上です。学校の授業から開放され、街をあるき、オジサンには高いと思える飲み物を手にお喋りをして、友達と新しい商品を手にしたことを喜び、写真や動画と共にその気持ちを伝える、、、

こうした行為に至る全ての流れ、つまりストーリーが、特定の情緒へと繋がります。

こうして考えると、「カワイイ」もそこに至るストーリーと考えると、理解しやすいかもしれません。

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