年のはじめに考える マネジメント:若者に苦言は黄色信号

僕が今も学校の講義を行っているからでしょうか、経営者の方をはじめ、色々な方と話していて、「最近の若い人ってどうなんですか?」という言葉を聞くことがあります。

今の若い方は簡単に会社を辞めてしまって責任感に欠ける、すこし強く言っただけでパワハラになってしまう、あまり努力をしないなどなど、、、

こうした話に、一理ある部分もありますが、僕はいつも「個人差」と答えるようにしています。なぜなら、僕自身が、学生さんを指導していて、教員の取り組み方で学生さんの姿勢が変化することを痛感しているからです。
以前も記したかもしれませんが、今の若い方は、おそらく私達(の世代)が思っている以上に人を見ています。単に仕事がてきるとか、人望があるといったこと以上に、それぞれの価値観で人柄を見ているように感じます。

またよく今の若い方はメンタルが弱いという話を聞きますが、育った時代が変われば、性質も変わります。これを言うなら、空襲を経験した母に言わせれば、戦後生まれは弱いとか、、、
まあ、そこまで行ってしまえば切りがありません。しかし僕は、今の若い方は、我々以上に繊細なのだと思います。

・価値観の変化

人の話ですから個人差ではありますが、やはり傾向はあります。例えば、「最近の若い方は○○だ」などと聞くと、「○○君の頃から変わったかな」と、自分の教え子の顔を思い出します。

そういう意味では、若い方というよりは、世代別の価値観や考え方かあると言うべきなのでしよう。

人の価値観は一定ではありません。例えばマーケティングでは、セグメンテーション理論によって、消費者の趣向、つまり価値観を細分化します。性別や年齢、職業、地域、ライフスタイルやライフステージなど、多くの分類を行います。
これらの中で非常に大きな分類、つまりマスマーケティングが可能だったのは20世紀の話。より細かな分類が求められるようになり、現在では、特定の人物像を中心にしたマーケティングが不可欠です。また現在では多様な情報や流通チャネルが選択できるので、これらも考えなければなりません。

このとき、世代間の価値観の違いは、とても重要だと思います。

例えば、戦後から昭和30年代までの人たちは、安定した生活を求めていました。そのためには、とにかく必死に働いた世代です。
これが昭和40年以降、昭和50年代に入ると、豊かな生活を求めるようになります。生活はより快適で豊かなものになっていきます。
昭和50年代はまさにバブルの時代、誰もが贅沢ができた時代ですから、働く意義も出世や立場を求めるようになります。
しかし平成に入ってしばらくすると、バブル経済が崩壊します。いわゆる‘ミレニアル世代’と言われる世代は、これ以降に生まれた人たち。現在の消費者の中核をなしています。ITとの親和性が高く、比較的和楽観的でありながら、必ずしも物質的贅沢を好むとはかぎりません。
そして21世紀以降に生まれた、今正に労働者になりつつある世代がZ世代です。彼らは社会問題に関心が高く、社会不安の中で成長したことから、自身の価値観や幸福を大切にしています。

・価値観の変化と正しさの変化
僕が話す方々、「最近の若い人は」と仰るのは、主に50代の方々です。しかしこの方々から見れば、それ以前の働き方は、かなり非常識なものと言えるでしょう。

社会はその時代ごとに、新たな問題に直面し、改善されてきました。必ずしも全てが正しいとは言いません。最初に述べたように、世代による特徴や、それ以上に個人差があります。ただ、おしなべて言えば、若い方のほうが、より優れた社会の価値観を持っているということになります。
以前、バブル時代から1990年代の話が出たとき、若い方は明らかに「信じられない」という顔をしていました。つまり、「最近の若い方は」と言いながら、今では非常識なことを堂々と話していたのです。

・世代の変化とマネジメント
先にも挙げたように、ミレニアル世代は現在40歳前後、Z世代は社会人になり始めた世代ですから、現在の消費市場や労働市場の中核をなす人たちです。この人たちに、「現在」の非常識を押し付けてもうまくいかないのは当然です。
これはマネジメントやマーケティング、ブランディングにおいても同じです。企業や経営者がいくら良いことを言っているつもりでも、現在の良識に合っていなければ受け入れられません。

それではどのように考えるべきなのでしょうか。

近年、SDGsの重要性が説かれています。しかし多くの企業で、SDGsは、例えばCSRと同様に、単なる自然環境保護=寄付などの社会貢献(本来の意味とは違いますが)と、捉えられています。しかしこのような考えでは、今SDGs教育を受けている世代からは、評価されない企業になってしまいます。

マネジメントにおいても同じです。

若い方に迎合する必要はありませんし、なし崩しにしてしまう必要はありません。企業や経営者の考え方に賛同して採用された人であれば、その考え方を説明すればよいのです。

新しい価値観を基準とすることで、企業は若返りを図り、常に社会の価値観に合わせていくことができます。

今、日本では世代交代に苦しむ企業が多いのは、価値観の変化を知らないためではないでしょうか。


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