IT=デジタルではないという考え方

僕はこれまで、言葉の大切について、何度も書いてきました。言葉の意味をしっかり考えないことで、失敗を招くことがあるからです。

例えば最近、ITを導入することが経営のDX(デジタルトランスフォーメーション)ではない」という文章を目にし、随分前(2005年頃)ですが、大学の講義で話していたことを思い出しました。

それは「IT=デジタルではない」というものです。

僕が大学の教員になったとき、実は初年度から7科目担当するという、、、高く評価して頂いたということにしておきますが、初めから多くの科目を担当しましたが、その中で、Wordのクラスも担当することになりました。

限られた数の教員の中で、若手の新人ということで依頼されたのでしょう。(笑)

当時はIT革命という言葉が取りざたされ、携帯電話がカラー画面になり、カメラやアプリが一般的になり始めた頃です。学生さんの就職にはパソコン(Office)は必須という時代でした。ITやデジタルという言葉が一般化していましたが、実はよく解らないというのが本音です。そこでデジタルの説明をしていました。

デジタルとは簡単に言えば数字で表すことです。昔、パンタグラフ式の、数字を表示する時計がありましたが、コンピューターが入っていなくても、立派なデジタル時計です。
今デジタルという製品は、例えば電話であれば、無線のような電波の‘波’を音声にしているのではなく、音声を数字化した情報としてやり取りしているものです。

当たり前の話ですが、その頃の学生さんは、頷いて聞いていました。

そうそう、学生さんで思い出したのですが、最近の学祭さんは、スマホネイティブ。自宅にパソコンがないのも当たり前てす。

・IT=デジタルではない
さて、先日こんな話をしました。
タイトルに記した「IT=デジタルではない」という話です。

例えば今、私たちの生活の中で、IT機器は不可欠になりました。「デジタルデバイド」という言葉が示す通り、IT機器がなければ、不便なだけでなく、不利益をこうむります。
また企業においては、IT機器なしでは、業務自体が成り立たないことでしょう。しかしどれだけIT機器を導入しても、経営のDXは実現しないということです。

僕は事業開発を行いますが、そのとき概略でも、安定するまでの事業期間、目標とする売上、基本コスト、コスト率、販売数、利益率、稼働率、事業に関わる人数、など、様々な数字を算出します。
またデザイナーさんと広告物を作るときでも、同じような数値を算出することがあります。
場合によっては、A3で数ページになり、驚かれることがあります。勿論、資料を作成するときはExcelも使いますが、

しかしこれこそが「デジタル化(数値化)」です。

つまり、どれだけIT機器を導入しても、経営が数値化されていなければ、「アナログ経営」ということになります。
少し屁理屈に聞こえるかもしれませんが、統計用紙とそろばんであっても、数値を算出して、適切な判断をしていれば、デジタル化ということになります。

この話を書きながら思い出すのは、Windows95のとき、意味も解らずCD-ROMを買った方がたくさんいたこと。これにあわせて、会社にパソコンを導入したものの、業務が完全に滞ってしまったなんて話もありました。(笑)

・デジタル経営のススメ
少し前の話、ある企業の経営者が、事業改革を進めた中で、「勘」「経験」「努力」ではなく、「仮説」「検証」「データ分析」という話をしています。この人物は、「悪しきKKD」から「適切なKKD」と表現しました。
近年では、データドリブンという言葉も聞きますが、あらゆる数値による経営判断は、最低限行わなければならないことで、何も特別なことではありません。むしろ、数値判断なしに、どのような経営判断が、できるのか、僕には解りません。

「デジタル=数値化」は、あらゆる判断の基礎になります。「数字に現れない評価」も、まずは「数値」を分析することで現れるのです。

ITはなくても大丈夫、まずは「デジタル経営」を考えてはいかがでしょうか。

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