CI(コーポレートアイデンティティ) 指針を示し品格を与える

前回は経営理念(企業理念)がどのように機能するかについて、企業のお手伝いで取り扱った事例を挙げて説明しました。今回は経営理念を企業に浸透させ、利益をもたらす考え方、CI(Corporate Identity:コーポレートアイデンティティ)について記したいと思います。

CIとは自らがどのような存在なのかを理解・認識する作業です。これは単にどのような製品やサービスを提供するのかではなく、それぞれの理念や規範を事業を通じて形にすること、そのために構築された理念を企業の内外に浸透する作業です。
と、マーケティングの教科書ではこのように説明されています。しかしこれではよく解らないと思います。またCIというと、多くの場合「ブランディング」の一環として、主にデサイン会社がサービスとして行っている場合が多いです。ロゴマークや名刺などのデザインで行われています。この考えは間違っているわけではありません。優れたデザイン会社であれば、本来のCIの機能を果たしてくれます。しかしここで説明するCIから考えると、不十分と思われる点もあります。そのため、ここではCIの構成要素について説明したいと思います。

CIの構成要素
企業のCIを行う時CIの構成要素を明確にすることから始めます。CIの構成要素は以下の3点です。

・MI(Mind Identity):理念の統一
・BI(Behavior Identity):行動の統一
・VI(Visual Identity):視覚の統一

MIの理念については前回記しました。僕が企業のお手伝いをさせて頂いた事例でも、経営者ご自身の発言などによって、会社内の問題が解決に近づいたことを紹介しました。これは2つ目の構成要素であるBI(行動の一致)にも関わります。
ここでは行動の統一としていますが、Behaviorという言葉には「ふるまい、態度、行動、挙動、行儀、素行、(生物の)行動、(生物の)習性、(機械などの)運転、動き」などといった意味があります。つまり理念を基に普段からどのような姿勢や心構えで、どのような振る舞いや態度、行動を取るのかが大切になります。これを僕は「行動指針」と説明しいて、経営者の方に考えて頂きます。
BIに似たものとして「クレド」があります。「クレド」はラテン語で「信条」「志」「約束」といった意味の言葉です。企業経営だけでなく従業員など事業に関わる人がどのような志を持つのか、どういった約束を果たそうとするのかと言う考え方です。具体的にはリッツカールトンホテルのクレドが有名です。また従業員の「モットー」である「紳士淑女をおもてなしする私たちもまた紳士淑女です」も有名です。しかしあまり知られていませんが、同時に明確な行動指針が示されています。

そして最後にVI(視覚の統一)を行います。ロゴマークやロゴタイプ、コーポレートカラー、ユニフォームなどのデザインを統一し、社内の人には働く誇りを持たせ、顧客には一目で理解してもらえるようにします。

実はデザイン会社が行うCIが不十分な場合があるというのはこの点にあります。つまりCIは理念を浸透させ、行動指針を遵守する、また行動指針に準ずるサービスを提供できるようになる必要があります。言い換えれば、いくら見た目を統一したり、イメージを一新しても、行動による品質が伴わなければ、企業イメージは良くならないどころか、形だけで中身がないと見なされかねません。

ですからCIを行う際、理念と行動指針の達成が最も重要なのです。

現在僕が携わっているCIの事例を少し紹介したいと思います。
理念を基にCIの要素やMVV、コーポレートスローガン、コーポレートステートメント、コーポレートメッセージなどを策定しています(これらについてはあらためて記します)。併せてホームページなども検討していますが、まずは理念と行動指針の徹底を行っています。服装や接客態度などもありますが、僕は2つの方法を提案し、実行しています。
1つ目は言葉遣いです。普段の社員さんたちは仲良く話していますが、業務品質を改善するため、会議中や業務連絡、実際の作業中など、業務に携わる間の会話の言葉遣いをしっかり改めるようにしています。
2つ目は指さし確認です。しっかりと指を伸ばして、はっきりと確認を発言するよう提案しました。

これらの方法はどの業種や職種でも効果があるわけではありませんが、この企業については、最も効果的だと判断し、提案しまし、実際に効果を出し始めています。

僕は常々「名は体を現す」が「体のない名は欺瞞しか生まない」と考えています。

企業のCIは適切に行うことができれば、企業に品質、品格、信頼をもたらす重要な手段だと考えて下さい。

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