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【読書録】『1%の努力』ひろゆき

今日ご紹介するのは、昨年発売されてベストセラーになっている、ひろゆき氏の『1%の努力』(2020年、ダイヤモンド社)。

ひろゆき氏は、日本最大級の匿名掲示板「2ちゃんねる」開設者であり、実業家である、西村博之氏だ。メディアにも頻繁に登場する有名な方なので、ご存知の方も多いだろう。

私は、ひろゆき氏の、歯に衣着せぬ辛口コメントやトークが、結構好きだ。メディアで同氏のコメントを見聞きして、共感したり、膝を打ったりすることも多い。そのひろゆき氏の話題の著書ということで、読んでみることにした。

読んでみて、この本は、日本社会で生きづらさを感じている多くの人にとって、気持ちをラクにしてくれる本だと思った。同調圧力に抗えず、他人と同じレールを歩きがちな日本人にとって、視点を変えて、人生を賢く歩んでいくためのヒントが、たくさん書かれている。特に、若い人に有益だと思うが、アラフィフの私にもたくさんの気づきがあった。

以下、印象に残ったくだりを引用させていただく。

「サボる才能」はあるか?

p1

本書は、いわば「レールを外れる人生」の練習だ。

p3

必要だったのは、お金や時間ではない。「思考」だった。
工夫を取り入れ、「やり方」を変えられること、
ヒマを追求し、「何か」をやりたくなること。
つまり、自分の頭で考えるということが大事だった。
だから、スケジュールを埋めるな。「余白」を作れ。
両手をふさぐな、「片手」を空けよ。

p7

 ヒマは全力で作っておいたほうがいい。時間は余るものじゃない。作り出すものだ。

p59

 世の中のことは2つに分けられるという。
「やりたいけど、できない」
「できるけど、やりたくない」
その2つだ。だから、みんな悩んでいる。
「やりたい」よりは「できる」から始めて、少し背伸びするくらいのレベルにすればいい。「やりたい」と「できる」の間を徐々に埋めるような感覚が近い。
 最初から「できる」に「好き」という感情が絡むと、少しめんどくさい。センスの領域に入ってしまい、趣味にするのはいいが、安定収入にするのには向かないのだ。

p109-110

「この体験が、なくなったら困るな」と、あなたがそう強く感じられるものを安定収入にするのがいい。あるいは人生をささげてもいいかもしれない。
 そこには第三者の意見が入る余地はない。
 誰がどう思っているかは、どうでもいい。
 ほかの誰でもない、「この自分」が困るのだから、自分でやる。

p114

 ユーチューブがここまでの規模になれたのは、「著作権を侵害したコンテンツを見られたから」という理由がある。(中略)
 動画サイトが大きくなるためには、グレーな部分をひたすら攻めるしかなかったのかもしれない。

p117-118

「出る杭は打たれる」という言葉があるが、出すぎた杭は打たれなくなる。

p119

 人と会って話をする。それが仕事のベースにあることだろう。
 そこで大事なことは、シンプルだが、「とにかく意見を出す」ということだ。
 みんな空気を読むことが得意なので、意見をいうことは苦手だ。そこを逆手にとって、僕は積極的にやるようにしている。
 間違っていてもかまわない。量的にたくさんの発言をすることを心がける。
 意見を出すことのメリットは、「実作業が自分に投げられることがない」ということだ。
 何も発言していない人は、心理的に「じゃあ、私がやります」と言って手を挙げてくれる。こんなにおいしいことはない。

p152-153

 世の中は、本当にみんな同じことしか言わない。そんな中で、ちょっと違う視点からモノが言えれば、一気に抜きんでることができる。
 もちろん、常に斜に構える必要はないのだが、一度、頭の中だけでも逆張りで考えてみることをクセにしておいたほうがいい。

p155

(・・・)メインスキル(マクロな経営視点)とサブスキル(ミクロな現場視点)を両方持ち合わせることが強みになる。

p158

 昭和の時代は、似たような人をたくさん集めて工場で製品を作る時代だった。
 いまはそれが完全に終わりを告げた。
 クリエイティブな仕事のほうが、利益率も高く、生き残れる時代になったのだ。

p169

 普通の人が価値を感じないことをたまたまやっているのがいい。

p169

 大勢の中で1人しかいない役割は、特殊なポジションとしてメリットが発生する可能性が高い。
 だから、あまり後先のことは考えずに、手を挙げるといい。

p171

(・・・)自分の能力をにらみながら社会のニーズに合わせられる人のほうが、世の中では成功しやすい。優秀な会社員としても向いている。(中略)
 社会のニーズに合わせていけるかは重要だ。そして、それは能力値の絶対的な高さとはまた別の話である。
 以上の話は、安定収入を稼ぐ本業において考えるべきポイントだ。(中略)仕事と趣味は分けて考えよう。

p183

 いろいろなところに手を広げ、勘所を探り、うまくいきそうなものだけに集中する。そして、うまくいったら、それが「努力だったのだ」と後付けされる。
 それが真理だ。
「たまたま」を待とう。努力を押し付けるのはやめよう。それだけで、世の中はもっと幸せになるだろう。

p190

 何かを成し遂げるために頑張らなければいけない場所を選んだ時点で、ちょっと頑張っただけでうまくいってしまう人に本気を出されたら、すぐに先を越される。
 正面突破の方法だと、ハンデのついた100メートル走をやらされているようなもので、絶対に勝つことができない。
 だから、自分にとって頑張らなくても結果が出る場所に行ったほうが、絶対にうまくいく。逆説的な話だが、それが真理だ。

p193

(・・・)グーグルでは、仲間の和を乱さない「いい人」を率先して採用する。ヘタに競争してギスギスするよりも、グーグル内の平和なコミュニティでのびのび仕事したほうがうまく回るからだ。

p198

 自分のキャラを考えて、「いい人」として生きていくのも、「1%の努力」のひとつかもしれない。
 みんながみんな、出世や競争だけを考えて生きていくのは息苦しい。
 ここまで本書で語ってきたように、自分のタイプに合った働き方を見つけよう。働き者か、そうでないか。どちらの道があってもいい。

p199

 本書では「たまたまうまくいった」という正論を出した上で、それでも「何かちょっとでも考え方によって変えられた部分」として、1%の努力という落としどころを探ってきている。

p204

 一歩引いてみて、自分だけのせいにせず、「1%の努力」で代えられる部分はどこなのかを考えてみるのだ。
 そうやって考え方のクセを変えることで、人生はラクになる。

p205

 僕の座右の銘は、「明日やれることは今日やるな」だ。
 明日になったらやりそうもないことだけ、その日中にやるようにしている。

p216

「働かないアリ」に必要な要素は2つある。
 それは、「ダラダラすることに罪悪感がない」と「自分の興味のあることに没頭できる」ということだ。

p251

 僕はよく、「役者なんかより経営者のほうがよっぽど演技力があるな」と感じることがある。
 平気でウソをついてお金を引っ張って会社を存続させて「ウソをウソじゃなくする力」があるのが、いい経営者である。

p262-263

(・・・)世の中すべて「ネタ」だということ。
 受験がうまくいかなくても、就職が決まらなくても、事業で失敗しても、お金がなくなっても、家で友達と酒を飲みながら自虐を言えば、ゲラゲラ笑ってくれる。
 それに代わる人生の楽しみが他にあるだろうか。

p273

 人生において、自分には向いていない分野に見切りをつけるのも大事なことだ。自己分析をし、自分の本当のタイプを見定めよう。
 放っておいても何かやるタイプと、本当に何もしないタイプがいる。前者は、それをそのままやっていればいいのだが、後者は、消費者にしかなれない。だから、手っ取り早く就職してしまって、そこの会社にしがみついて生きていけばいい。そういう道もある。

p275

「自分にしかないもの」「他の人があまり考えないこと」という武器で勝率を高めたり、勝ったときはすごく気持ちがいい。自分の持っている能力や機能を、どこのポジションに持っていけば人生がラクになるか。それをいつも考えていると、人生が生きやすくなるし、シンプルに楽しい。
 あなたにとっての「1%の努力」とは、どんなことを指すのだろうか。それは、あなた自身にしか決められないことだ。

p276-277

まずは全体の感想。平易な文体で読みやすい。あっという間に読めた。著者の赤羽での生い立ちや、2チャンネルの創設の話など、読み物としても興味深い。

読みやすさを追求しており、大事なところしか太字にしない、と断言している。お忙しい方は、太字の部分だけを拾い読みするのでも、十分に得るものがある。

この本は、読者を、努力神話から解放してくれる本だと思った。周りと同じことを良いことだと盲信し、思考停止してしまう、典型的な日本人の悪いところを指摘してくれる。そして、ラクに賢く生きるための考え方を教えてくれる本である。

サボれるところで、サボる。余白を作る。やりたいことを追求する。自分が頑張らなくても結果を出せる分野を探し、逆張りする。たまたまのチャンスを待ち、それを逃さず、しっかりとつかむ。

みんなから抜きんでるために、唯一の役割を買って出る。みんなが空気を読んで意見を言わないところで、どんどん意見を言う。迷わずに、とりあえず行動してみる。

他方で、いきなり好きなことだけを仕事にするのは難しい、という現実も、冷静に指摘する。社会のニーズに合わせて、できることから始めて、まずは安定収入を確保することも勧めている。

また、ガツガツと競争し成果を追い求めるばかりが人生ではない、とも述べる。「いい人」になって、雰囲気作りの面で会社に貢献する、という生き方があってもよいし、会社にしがみついて生きていく人生があってもよい。

そのためにできる、1%の努力は、人によって違う。それが何かを考える。

これらのメッセージを通じて、ひとつの決まったレールの上を走らなければいけない、といった均一的な価値観の呪縛から、読者を解放してくれる。

これを読んで、ひろゆき氏のようなオピニオンリーダーや、このような著書が、あと20年前に出ていれば、日本の経済力や活力も、ここまで落ちることはなかったのではないかと感じた。

私のようなアラフィフ世代や、さらに上の世代の人は、昭和の日本の価値観を刷り込まれて育ってきたのではないだろうか。理想の人生とは、男性の場合は、大企業に入社してサラリーマンになり、会社が求める仕事を要求どおりにコツコツとこなし、長時間働いて、努力を評価され、会社の典型的な出世コースに乗っていく。女性の場合は、夫を立てて、家事や育児を完璧に行い、家庭を守ることに専念する。そういうものが、あるべき人生であると教えられた。少なくとも、私の実家や義実家では、そうだった。

しかし、そういう価値観に縛られたままでいれば、クリエイティブな発想やアイデアは生まれにくく、社会は発展しにくい。また、多数派と感覚の合わない個人にとっては、人生を幸せだと感じられなくなるだろう。

この本を読めば、社会や他人の目を気にすることなく、自分が好きなことや勝負できるところを探し、そこに資源を集中して、効率的に、ラクに生きればいいんだということを、自然と悟ることができる。そして、多数派と違う生き方をすることに、罪悪感を抱かなくてもいいんだと気づくことができる。

そういうマインドを持てる人が増えてくると、ひろゆき氏が2ちゃんねるを立ち上げたように、色々なアイデアやイノベーションが生まれ、社会もどんどん活性化されていくのではないか。

アラフィフの私にとって、この本は、残りの半世紀を、いかにラクに、好きなことを追求して、幸せに生きていくかを考えるための、良いきっかけをくれた。私より若く、この先の人生がずっと長い人ほど、この本から受ける恩恵は、もっともっと大きいだろう。たくさんの若い人に読んでいただけるとよいなと思う。

これからも、ひろゆき氏の著書や、メディアでの発言などをフォローしたいと思っている。

ご参考になれば幸いです!

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