見出し画像

【読書録】『「自分メディア」はこう作る!』ちきりん

私の尊敬する社会派ブロガー「ちきりん」さんのご著書、『「自分メディア」はこう作る!』(副題:『大人気ブログの超戦略的運営記』)。彼女のご著書をご紹介するのは、これで4冊目になる。(『マーケット感覚を身につけよう』『自分の時間を取り戻そう』『多眼思考』についての記事もどうぞ。)

ちきりんさんの本は、どれも、私にとって学びの宝庫だが、この本は、彼女がどのように有名ブログを育ててきたかを、詳しく綴っている。「自分メディア」を作るにあたり、考慮すると良い点に気づかせてくれる。

1年ほど前からnoteで継続的に発信し始めた私にとっては、この本は、何をどう発信するか、メディアとどう付き合うべきか、を見直すきっかけをくれた。noteで記事を書いている皆さんのお役にも立つのではないかと思う。

前半の内容

本書の前半は、タイトルのとおり、ちきりんさんが「自分メディア」を育てた10年間のブログ運営の舞台裏について説明してくれる。ご本人がおっしゃるように、意識的に、戦略的にブログを育ててこられたことがよくわかる。以下、私の印象に残った箇所を書き留める。

人気ブログを目指していたわけでもなく、「私の考えたことに興味を持ってくれる人が嬉しいな」という程度に考えて書き始めただけなのに、まさかこんなことになるなんて、自分でも本当にびっくりしています。(p26)

このくだりには、なんだか、親近感を覚えた。今では超人気ブロガーのちきりんさんも、最初から人気ブログを作ることを目標としていたのではなく、純粋に発信を楽しむところからスタートされたようだ。好きこそものの上手なれ、と言うように、発信を楽しいと思えることが、良いコンテンツを生み、それがブレイクにつながったのだろうなと感じた。

ネットで発信する人について、「実名か匿名か」がよく話題になります。ですが、実名開示にはそれなりのリスクがあるのに、当時も今も私には、実名を開示するメリットが何もありません。(p35)

"ちきりん"は匿名であることに加え、個人的な情報を開示することもないし、外見が知られるような形でメディアに登場することもありません。これは、プライバシーを公開することのデメリットが、非常に大きいと考えているからです。(p40)

これには強く共感した。Note上での私の名前である「サザヱ」というのは、本名ではない。実名にしたほうが、リアルの友人知人たちにも応援してもらえるというメリットがあると思い、少し迷ったが、やはり、プライバシーが晒されるのが怖くて、匿名にした。特に、会社員をやっている今、自分の意見を会社の意見と同視され、万が一にも会社の評判を傷つけてしまうことになると、失うものが大きすぎると感じる。

でも、将来独立して、例えばコンサルタントになるなどしたときには、実名を売り出す必要が生じ、実名でのメディア発信に踏み切ることも検討するだろうなと思う。

私にとって最も大事なものは、人生における自由な時間です。やりたいことは山ほどあり、ブログは趣味のひとつにすぎません。有名になりたいわけでもお金を稼ぎたいわけでもなく、自由な時間を確保するために仕事まで辞めたのに、執筆や取材に追いまくられるなんて、とんでもないことです。自分の望んでいる生活を守るためには、勢いに流されず、より意識的に考え、しっかりしたポリシーに基づいてブログ運営をする必要がある。『ゆるく考えよう』出版後、私は真剣にそう考え始めました。(p65)

これにも大いに共感した。今のところ、私は、noteの記事を書くのがとても楽しいが、私がフォローしていたブロガーさんたちの中には、更新に疲れたからと言ってブログを閉鎖される方もいらっしゃった。「人気ブログを育てるためには、とにかく毎日更新!」などという文句も見かけるが、楽しいと思えるペースでないと、継続するのが義務であり苦痛でしかなくなり、それがコンテンツにも表れて、結局成功しないのではないか。

(コメント欄の閉鎖について)ブログのアクセス数が一定レベルを超えると、読者と書き手が健全なコミュニケーションをとることが難しくなります。私も、2010年9月にコメント欄を閉じています。(p86)

私は、今のところ、コメントという形で、読んでくれた方の記事の感想をお聞きできるのがとても嬉しいが、これは、まだコメント数がマネージ可能な程度の数にとどまっているからだ。確かに、ちきりんさんレベルになると、膨大なコメントが寄せられるだろうから、返信するのは大変な労力だろうなと思う。

信用力を売らないことも大事な方針です。ブログの読者は、私を信じてくれています。(...中略...)リアルな社会でもネット上でも同じですが、こういう信用力は、築くにはとても時間がかかるのに、壊れる時は一瞬です。(...中略...)多種多様な依頼が舞い込むので、ひとつずつ迷いながら、判断をしています。特に、「この人たちはなぜ、匿名のブロガーにこんな依頼を送ってくるのか。私になにを期待しているんだろう?」といくら考えても相手の意図が見えない場合にも、依頼は断ってしまいます。目的がわからない依頼ほど怖いものはないと思うからです。(p101)

また「Chikirinの日記」には、記事広告(タイアップ記事)はほとんどありません。(...中略...)今後も自分自身が興味を持てる企業を訪問し、紹介することはあるでしょうが、あくまで「私自身がワクワクできるビジネスだけ」を紹介していくことになると思います。(p106-107)

なるほど、人気ブログに成長すると、そういうオファーがどんどん舞い込むようになるのだなあ。無名のブロガーが有名になり、そういう依頼が舞い込むようになると、嬉しくてホイホイと何でも引き受けてしまいそうだが、そこは慎重に行こう。将来ブレイクしたときのために、覚えておこうっと。

(...)私自身もブログの執筆と運営に適した資質を備えていました。そのひとつは、難解な文章が理解できない、微妙なレベルの読解力の持ち主だったということです。本好きではあったけれど、ニーチェもカントも2ページと読み進めず、「もっとわかりやすく書いてほしいよ……」と、心から恨めしく思っていました。自身が難解な文章を理解できないため、私の書く文章は極めて平易です。この「誰が読んでもわかりやすい文章」は、ブログの人気化を大きく助けてくれました。(p151)

難解な文章が理解できない、というのはご謙遜だろうけど、このくだりにも共感した。大学で文系だった私は、難解な書物を、1行1行、込められた深い意味を考えながら読解しなければならなかったり、また、洗練された文章を書かなければならなかったりしたことに、とても辟易していた。

しかし、最近では、ネットでのメディア媒体が急激に増え、情報の授受のスピードが急に上がったことによって、パッと見て要点が目に入る読みやすさ、わかりやすさがより重視されるようになったと感じる。

以上、特に強く印象に残った箇所を引用させていただいたが、他にも、色々な示唆を得ることができる。ブログ運営など、メディア発信について悩んでいる方には、ご一読をお薦めする。

後半の内容

本書の後半は、ちきりんさんのブログから、ご本人のセレクトした21の記事を掲載している。「ベストエントリ集」と表現しているだけあって、全て珠玉の記事。彼女の考え方がよくわかる記事ばかりだ。

そして、面白いのは、各記事に、「炎上レベル」🔥マークを付していることだ。炎のマーク1~5(🔥~🔥🔥🔥🔥🔥)で表現し、読者の意見が分かれて、賛成意見と、批判的な意見や拒絶反応の両方が数多く寄せられたレベルを示している。

炎上するということは、賛否両論ということだが、私は、不思議と、彼女の言うことには、ほぼ全てのトピックにおいて、すんなりと賛同できる。実は、ちきりんさんの生い立ちには、私との共通点が多くある。地方のご出身であったり、ずっと実家を出たいと思っていらっしゃったり、大学生になって人生が開けたと仰っていることなど、とても似ているのだ。彼女の考え方がこれほど心地よく痛快に感じるのは、そのせいかもしれない。

また、彼女の意見の内容もさることながら、表現も、ご本人ご自身がおっしゃるように、誰が読んでもわかりやすくて、素晴らしい。もやもやとした違和感の正体を見事に言語化してくれていて、読んでいて、霧が晴れたようにすっきりとする。そして、それを解決するには、実はこうすればよいのではないか、という新たな視点を与えてくれて、なるほど、と膝を打つのだ。

これら「ベストエントリ」21の記事のうち、私は特に次の5つの記事が素晴らしいと思った。大いなる納得感を持って、うんうんと頷きながら読んだ。

これらの記事は彼女のブログで、今でも公開されているので、以下に各記事へのリンクを掲載させていただく。

「仕事と家庭の両立なんて目指すのやめたらどう?」

(p179)(炎上レベル5🔥🔥🔥🔥🔥)(2014.6.11掲載)

「摩擦回避か生産性重視か。コミュニケーションのトレードオフ」

(p205)(炎上レベル1🔥)(2011.10.25掲載)

「得るモノ、失うモノ」

(p209)(炎上レベル2🔥🔥)(2010.12.14掲載)

「下から7割の人のための理科&算数教育」

(p225)(炎上レベル5🔥🔥🔥🔥🔥)(2014.2.25掲載)

「全国の子供たちに告ぐ お年玉はソッコーで使うべき!」

(p231)(炎上レベル5🔥🔥🔥🔥🔥)(2014.1.1掲載)

今回も沢山の学びをいただいて、ちきりんさんには感謝の気持ちでいっぱいだ。これからメディア発信を始めようとする人や、既に発信しているけれど迷いや悩みがある人などに、特にお薦めしたい。

ご参考になれば幸いです!

ちきりんさんのご著書についての過去記事もどうぞ。


この記事が参加している募集

読書感想文

サポートをいただきましたら、他のnoterさんへのサポートの原資にしたいと思います。