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マッチングアプリと共に進化する高校生が素敵/『オルタネート』(加藤シゲアキ)感想

今日こそは「やるやる詐欺」にならぬよう、「本屋大賞ノミネート作品勝手に全部感想書いてみる」の企画・6冊目を進めたいと思います。


今回手に取ったのは、NEWSのメンバー!

アイドルの加藤シゲアキさんの小説『オルタネート』(新潮社)。


アイドルの書いたキラキラ青春小説なんて…ナメクジ星から来たヌメヌメ暗いヌメ子(←私のこと)には絶対に合わないわ…と中々手が伸びなかったのですが( ̄▽ ̄;)


えいや!!! と物語の世界に飛び込んでみると、本作は、キラキラ・アゲアゲのお話ではなく、現代の「人との繋がり」を爽やかに描いた青春群像劇でした。

直木賞候補にもなり、吉川英治文学新人賞も受賞した本作、私の言葉で魅力を伝えきれるか不安ですが、これからも応援していきたい作家さんなので、頑張って感想を書いてみたいと思います。


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本作は、高校生限定マッチングアプリ「オルタネート」が必須となった時代を生きる東京の私立高校生たちの物語です。


オルタネートに登録されている高校生は120万人。


お互いが「フロウ」(フォローみたいなもんかな?)を送り合うことで「コネクト」となり、メッセージなど直接のやり取りができるようになります。

他にも、ユーザーが指定した条件に合わせて、友人、恋人など相手を選別してくれる機能があったり、ブログも投稿できたりと、オルタネートはダウンロード必須の人気アプリとして君臨していました。



本作は、このオルタネートにそれぞれ別の向き合い方をする、3人の少年少女の物語が交互に描かれます。


まず登場するのは、高校生でも珍しく、とある事情でオルタネートをやっていない調理部の部長・蓉(いるる)。

料理人の父を持ち、調理部の部長を務める女の子で、昨年参加し、とんでもない屈辱を味わった全国配信の料理コンテストに今年も乗り込むべく、ペアの相手を探しています。



次は、母親との軋轢により、オルタネート信奉者になり、「自分の判断じゃなくてオルタネートの判断で人間性のいびつな部分でさえピシッとはまる人と出会いたい」と強く望んでいる凪津(なづ)。


彼女はオルタネートで出来るだけ相性の良い恋人と出会うべく、スマホにある情報を全部オルタネートに提供し、遺伝子レベルで相性の良い相手を探しています。



そして最後は、大阪の高校を中退し、〈現役高校生〉しか使えないオルタネートにログイン出来なくなってしまった男の子・尚志(なおし)。


悲壮感漂う思い出が多い大阪を抜け出し、上京して、音楽家の集うシェアハウスで暮らし始めますーー。


😀😀😀


彼らは現代の高校生らしく、オルタネートをサクサク使いこなしつつ、勉強や部活動に打ち込み、恋をして、時に悩み、時に前進し、爽やかに青春を謳歌しているように見えました。


わ~最近の若者だな~と思ったのは、オルタネートで出会った男性同士のカップルがラブラブな日常動画を配信していたり、オルタネートに出会いを頼りつつも、「オルタネートって、俺たちにとって敵か味方か、よくわからないもんね」と、このマッチングアプリを絶対視せず、達観する視点を持っていたことです。


私が高校生の時にこんなアプリがあったら、めちゃくちゃ気になって一日中眺めてしまいそうだし、依存しておかしくなってしまいそうです( ̄▽ ̄;)

「私変なことしてないかな?」「浮いてないかな?」って…。

なくて良かったーーー!!!😂😂😂


ついでに大学卒業までガラケー族で本当に良かったーーー!!!


スマホ持ったの働き始めてからで良かったです。本当に…。

まあそんなどうでもいい私の話は置いといて。




物語の少年少女は、オルタネートで時にゆるく、時に強く繋がりつつも、友情や恋、家族の問題や勉強で悩みながら、どんどん進化してアップデートされていくオルタネートと同じように、人間としてしっかり成長して、一層魅力を増していくところが素敵でした。


3人それぞれの物語が、ラストの大団円に向けて、勢いよく結集していく感じもキラキラしていてとても良かったです😊


ページをめくる手が止まらず、夢中になって読んでしまいました。



また、本作は料理と植物の描写が、読者が興味を持つように、詳しく鮮やかに描かれていたのも印象的です。


マリーゴールドがセンチュウっていう害虫を食べてくれるから、一緒に植えるとトマトの助けになるなんて知らんかった…。(「コンパニオンプランツ」というらしいです)

オルタネートは、人間の生活を豊かにするあくまで手段なんだなと。


それを使う少年少女たちが、傷つきながらもたくましく成長していく様子にグッときた青春群像劇でした。

時々ドキッと心に刺さる一文も出て来て、オススメの一冊です。



さゆ


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