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[小児科医ママが解説] おうちで健診:歯みがき”以外”の乳歯ケアって?夜間授乳は、虫歯の原因になる?

「教えて!ドクター プロジェクト」の「乳幼児健診を知ろう!」にそって、解説させていただいている「おうちで健診」シリーズ。

前回は、歯の生える時期や生え方のバリエーション、また歯みがきやフッ素について見てきました。


今回は、歯みがき「以外」の歯のケアについて。
また夜間授乳と虫歯の関係
そしてまとめとして、歯に関する受診の目安を書きたいと思います。


主な参考文献はこちら。

●「正常ですで終わらせない! 子どものヘルス・スーパービジョン」
(阪下和美、東京医学社、2017年)
●子どもたちの口と歯の質問箱(日本小児歯科学会)


歯みがき「以外」の、赤ちゃんの口腔ケア。


前回お伝えしたとおり、もちろん歯みがきは大切なケアです。

ただし歯みがき「以外」にも、赤ちゃんの歯のために気をつけてあげられるポイントがあります。


①寝る直前の飲み物


たとえば寝る直前にミルクやジュースを飲んで、そのまま歯みがきをせずに寝てしまうと、糖分が口の中に長時間とどまったまま、夜~朝まですごすことになります。

当然、虫歯のリスクは高くなりますね。

できる範囲で、下記のポイントが守れると良いと思います。

●寝る直前の飲み物は、水やお茶など、糖分が入っていない飲み物にする。
●夕食後~寝る前にどうしてもミルクを欲しがる場合は、飲んだ後に歯みがきをする。
1歳ころを目安として、哺乳瓶を卒業していく(ストローマグやコップなど)。


母乳やミルク「そのもの」が、虫歯の原因というわけではありません。
こうした飲み物にふくまれる糖分が口の中に長く残っていることで、虫歯のもとになる菌が歯の表面にくっつきやすくなるのです。

具体的には、歯みがきができていなかったり、唾液の分泌が不十分だったりすると、結果として虫歯になります。

寝る前の母乳や、夜間授乳が、決してそれだけで虫歯になるわけではないんですね。

虫歯が心配だから夜間授乳をする、という考えはしなくて大丈夫です。
歯が生えていて、まだ夜間授乳している場合は、より一層、寝る前の歯みがきを頑張ろう!
というニュアンスでOKです。


また哺乳瓶については、1歳くらいを目処に、やめていけると良いでしょう。

寝る直前に、哺乳瓶でミルクなど糖分をふくむ飲み物を飲むと、上あごの前歯の裏が、虫歯になりやすいと言われています。
早いと生後7~8ヶ月で、上あごの前歯が生えてくるお子さんもいます。

上の歯がはえたら、そろそろ哺乳瓶卒業かなぁ・・・ということで、ストローマグや、コップをトライしていく目安になるでしょう。


②大人の口の菌をうつさない。


大人の口の中にいる、虫歯のもととなる菌を、赤ちゃんうつさないことも大事です。

具体的には、以下のことに注意できると良いでしょう。

●大人が口をつけた食べ物や飲み物を、赤ちゃんにあげない。
●大人の食器を、赤ちゃんと共有しない。

ふいに大人の口の中に、赤ちゃんみずから指をぶっこんでくることも多々あるので、ナーバスになりすぎる必要はないですが、これも大切な乳歯ケアですね。


「歯」についての、受診の目安は…
①1歳3ヶ月で、歯が1本もない。
②フッ素入り歯みがき粉を、大量に飲んだ。
③「2つの歯がくっついたような歯」がある。


さて最後は、前回の記事のふりかえりもかねて、歯についての「受診の目安」をまとめておきましょう。


①1歳3ヶ月で、歯が1本もない。


たしかに1歳をこえてから、歯が生えてくるお子さんもいます。
また歯が生えてきそうなサイン(歯茎の膨らみや、歯茎が部分的に白く見えているなど)がある場合は、心配ないでしょう。

ただし1歳~1歳3ヶ月くらいをこえても、こうしたサインも全くない場合は、一度相談いただいて良いでしょう。

小児歯科でレントゲンを撮るなどして、歯があるかどうかを確認します。



②フッ素入り歯みがき粉を、大量に飲んだ。


前回もお伝えしましたが、1回の歯みがきで通常使う量の、フッ素入り歯みがき粉を飲みこんだとしても、中毒量にはなりません。

2~3歳くらいまでは、お口を水に含んだ後に、ぺっと出すのが難しい場合も多いです。
適切な歯みがき粉の量を使っていれば、歯をみがいた後に、フッ素入り歯みがき粉を飲み込んでしまっていても問題はありません。

たとえば体重15kgくらいのお子さんだと、フッ素入り歯みがき粉(1000 ppm = 0.1 %)を丸々1~2本飲むと、中毒量となり、腹痛や吐き気が出る場合があります。

このように歯みがき粉を大量に飲んでしまったという場合は、受診を検討してください。


③「2つの歯がくっついたような歯」がある。


「2つの乳歯が、合体したような歯」あるいは「乳歯の先っぽが割れているような歯」。

これらは「癒合歯(ゆごうし)」や「癒着歯(ゆちゃくし)」の可能性があります。

癒合歯
画像は「子どもたちの口と歯の質問箱(日本小児歯科学会)」より引用させていただきました。

「たまたまこういう歯ができた」というだけなので、急いで受診する必要はありません。
また必ずしも、永久歯も同じような形をした歯が生えてくる…というわけでもありません。

6歳ころ、永久歯の状態を確認するために、小児歯科に相談する形でOKでしょう。

また歯並びも多い相談ですが、お子さんのお顔の骨もまだまだ成長過程ですので、乳歯の歯並びは基本的には様子を見ます。
なお、歯並びと指しゃぶりの関係は、過去の記事もご覧ください。

…ちなみに歯が生えるときの熱について「知恵熱」や「teething fever」などと言われるように、歯が生えるときに熱が出るか?というのは、医学的には明確には証明されていません。

が、経験上、37度台の微熱くらいは出るだろう、とする意見が多いです。
ほかにもよだれが増えたり、機嫌が悪くなったりすることもありますよね。

ただし、歯が生えてくるというだけで、38度以上の熱が出ることは考えにくいですので、別の原因を考えることが多いです。


いかがでしょうか?
2回にわたって、歯について見てみました。

歯が生えてこない悩みもあれば、早くから生えてきて困るという悩みもあるし、生えてきた歯について悩むこともある。
本当に子育てって、気になること・悩むことの連続ですよね…!

少しでも皆さまが安心して子育てできるような、材料の一つになれば幸いです。

(この記事は、2023年1月27日に改訂しました。)


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