[小児科医ママが解説] おうちで健診:歯が生えてこない。歯の生え方が気になる。歯みがきのフッ素はどうしたらいい?
「教えて!ドクター プロジェクト」の「乳幼児健診を知ろう!」にそって、解説させていただいている「おうちで健診」シリーズ。
今回は「歯」について。
「教えて!ドクター」のフライヤーにも書かれている「歯が生えてこない」からはじまり、歯みがきってどうしたらいいの?歯の生え方が変じゃない?・・・などなど、こちらも細かいお悩みがつきないですよね。
本当は小児歯科の先生方のご専門になりますが、小児科医としてもお伝えできる範囲で、文献や清書の情報をもとに、見ていきますね。
主な参考文献はこちら。
歯が生えてくる時期は、生後6ヶ月~1歳など、幅広い!
赤ちゃんの歯は、まだお母さんのお腹の中にいる頃から(妊娠4ヶ月頃には)、すでに原型ができていると言われています。
その後生まれてから、生後6ヶ月をすぎてくると、下の真ん中の前歯がニョキっと生えてきます。
こうして2歳半~3歳になるまでに、乳歯20本すべてが生えそろうのが、典型的です。
が、生える時期・生え方・生える順番はかなり個人差があります。
1歳をすぎてからやっと、①真ん中の歯が生えてくるお子さんもいます。
①真ん中の2本が生えた後に、(②その外側の歯は生えず)⑥犬歯が生えだすお子さんもいます。
生え方も、斜めになっていたり、左右でバランスが違って見えたりすることもあります。
寝返りができ、うつぶせが好きなお子さんも増えてくることも、歯並びに影響します。
ただし医学的には、歯の生え順や、歯が斜めに生えているかどうかは、正直さほど重要ではありません。お顔の骨もどんどん成長して、形が変わってくる時期。歯並びも日々変化します。
生え順や歯並びについては、基本的には様子を見ます。
1歳~1歳3ヶ月をこえても、歯が1本もなければ、小児歯科に相談。
上にも書いたとおり、1歳をこえて、はじめて歯が生えてくるお子さんもいます。
また歯茎の膨らみや、歯茎が部分的に白く見えている場合は、もうすぐ歯が生えてくるサインです。
1歳をこえて、はっきりした歯が見えなくても、こうしたサインがあれば、生えてくるのを待ってOKです。
そんな場合は、一度、小児歯科に相談していただけたら幸いです。
乳歯が本当に無いかどうかを、歯のレントゲンなどで確認するからです。
非常にまれではありますが、外胚葉異形成症といって、歯の大部分が欠損して生まれてくるお子さんがいます。
歯が今後生えてくる見込みがあるのか、生えてこないのであれば、お食事などの栄養のとり方・言葉の発音などについて、どう治療や対応をしていくかなどを、考えていく必要があります。
そのため、1歳をこえてしばらくしても歯が全く生えてこない場合は、歯科の先生に相談をすると良いでしょう。
なお完全に歯がない、とまではいかなくても、部分的に歯が欠損しているケースは、まずまずあります。
よく親知らず(第三大臼歯)については、全く無い人もいれば、上下左右4本ともある人もいれば、左1本右2本だけある、などと聞いたことがあるかと思います。
親知らず(第三大臼歯)は欠損のバリエーションが多い歯の一つですね。
ほかにも、上の側切歯(上記の図で④)や下の第2小臼歯(上記の図で⑦)も、欠損しているため、生えてこない場合が少なくありません。
乳歯の先っぽが割れてる?6歳ころ(永久歯)にチェックを。
さて、生え方や生える順番のほかにも、歯の形にもバリエーションがあります。
下のように、歯の先端が割れているように見える場合があります。
これは癒合歯(ゆごうし)や癒着歯(ゆちゃくし)、あるいは双生歯(そうせいし)といって、下顎に生えてくる歯で、まずまず見られるものです。
もともと歯の原型としては2本だったけど、くっついて生えてきたり、1つの歯の原型が2つにわかれて生えてきたり・・・といったメカニズムで、こうなります。
この場合も、急いで受診や検査をする必要はありません。
また、乳歯がこうした状態でも、生え変わって大人の歯である永久歯でも、同じ状態とは限りません。
乳歯が抜けて、永久歯が生えてくる時期(6歳ころ)を目安に、永久歯の状態をチェックする意味で、レントゲンなどの検査を検討すればOKです。
なお先端が割れていると、食べかすがたまりやすく、虫歯のリスクになります。歯みがきの際には、割れ目も注意してみがけるとバッチリです。
最初の歯みがきは、ガーゼでもOK。寝る前の1回は欠かさずに!
歯みがきの話がでてきましたが、いつから・どんな感じでやればいいのか?という相談もお受けします。
まず時期については、最初の歯が1本でも生えてきたら、歯みがきデビューです。
といっても、いきなりブラシで1本しかない歯をみがくのは難しいです。ガーゼや布などで、歯をぬぐってあげればOKです。
もちろん、赤ちゃん用の歯ブラシを使っても良いです。が、みがくためというよりは、口の中に歯ブラシが入るのに慣れるため、という目的になります。
またみがく回数や頻度については、もちろん毎回の食後で歯みがきできたらベストですが、集団生活や色んなご事情でむずかしい場合も多いと思います。
できれば朝夜の1日2回、どうしても難しければ、寝る前の1日1回は必ずできると良いでしょう。
歯みがき粉はフッ素入りで!
また、歯みがき粉のフッ素が必要なのか?体への影響は?というご質問もいただきます。
結論から言えば、歯みがき粉は「フッ素入り」をオススメします。
フッ素が虫歯予防につながることは、ご存知の親御さんも多いと思います。
フッ素は歯のエナメル層の再石灰化をうながして、脱灰を予防したり、細菌の活動をおさえることで、虫歯を予防したりします。
そのため米国小児科学会では、2014年ころから、「最初の歯が生えたら、フッ素入りの歯みがき粉を、すべての子どもに使用する」ことを推奨しています。
なおアメリカでは、上水道にフッ素が入っている州もあり、日本よりもフッ素の摂取に積極的です(日本はこのような地域はありません)。
一方で、フッ素を取ることによる、体への影響は気になりますよね。
たしかにフッ素症といって、フッ素を過剰に摂取することで、吐き気や腹痛、また歯が変色するなどの影響が出ることがあります。
一般的には、体重あたり5mgのフッ化物を摂取すると、中毒量になるといわれています。
ただしこれ、かなりの量です。
例えば、体重15kgくらいの4歳のお子さんがいるとします。フッ素入り歯みがき粉(1000ppm=0.1%)をどれくらい飲んだら、中毒量になるでしょうか?
正解は、歯みがき粉1本~2本を一気に丸のみしたら、中毒量になります。
※ 体重15kg → 中毒量のフッ素は75mg → 歯みがき粉 75gが中毒量。子ども用の歯みがき粉は、だいたい1本40~50g。
たしかに子ども用の歯みがき粉は、フルーツの味がついているなど、口当たりは良いものが多いです。
が、歯みがき粉を丸々2本、一気のみできるかというと、甘みや量のため、途中でギブアップするお子さんのほうが、圧倒的に多いと考えられます。
上記の理由から、普通に歯みがき粉として使うぶんには、フッ素の過剰摂取をおそれる必要はありません。
ただしもちろん、フッ素入り歯みがき粉は、お子さんの手の届かないところに置いておくのは鉄則です。
万が一飲み込んでしまったかもしれないという場合は、医療機関に電話で相談して、受診を検討してください。
歯みがき粉のフッ素の濃度:5歳までは500 ppm、6歳以後は500~1000 ppm。
ではお子さんにとって最適な、フッ素の濃度や量はどれくらいでしょうか?
日本口腔衛生学会からは、以下が提案されています。
まず大前提として、どれくらいフッ素が含まれているか、フッ素の濃度が記載されている歯みがき粉を選びましょう。
またお子さんの場合は「1000 ppm(0.1 %)」を超えないものを選んでください。
さきほどのフッ素摂取にともなう副作用のため、また、虫歯を予防するには上記で十分な濃度だからです。
なお 2017年3月以後、フッ素濃度が1000 ppmを超える歯みがき粉が、日本で承認されています。が、6歳未満のお子さんでは「1000 ppm以上の歯磨き粉は使用しない」とされています。
実際に市販の歯みがき粉を見てみると、赤ちゃん・子ども用の歯みがき粉で(濃度が明記されているものは)1000 ppm以内にちゃんとおさまっています。
中でも、6歳未満で推奨濃度とされている「500 ppm(0.05%)」により近いものは、以下の歯みがき粉です。
なお白井個人は、上記いずれの歯みがき粉のメーカーさんなどと、一切の関連はありません。あくまで文献(小児用歯磨剤(および歯磨剤類似商品)のフッ化物配合に関する調査)を参考に、一例として提示しています。
また製造過程の変更などにより、フッ素濃度が変更されている可能性もあります。必ず最新の情報はご自身でご確認ください。
逆に、フッ素がほとんど・全く入っていない製品もあります。
今回の情報をもとに、どんな歯みがき粉を使うと決めるかは、親御さんの選択の自由です。
が、歯みがき粉ごとで、含まれるフッ素の量が色々ちがうなだな~というのは、心にとどめておいてもらえたら幸いです。
その他、歯みがきなどについては、 「子どもたちの口と歯の質問箱(日本小児歯科学会)」のページが参考になります。
いかがでしょうか?
歯ひとつとっても、やはりお子さまそれぞれ、生える時期や生え方も様々であること。
フッ素入りの歯みがき粉の大切さ。
そんなことが伝われば幸いです。
次回は、歯みがき「以外」の歯のケア。また夜間授乳が虫歯の原因になるのか?そういった点を、見ていきたいと思います。
(この記事は、2023年1月28日に改訂しました。)
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