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真剣トラべローグ  失意の甘菓子紀行〜トルコショックからの回復旅行記その2〜

イスタンブール2日目 後半戦

さて、羊の香りはするけれど羊の肉は入っていない5種類のペースト状食物を、固くなったトルコ風フランスパンで丁寧にすくい取って胃に納め、食後の甘いお茶(最初から甘かった)を無心に流しこむと、ようやくお留守にしていた文明生物ヒューマノイドの穏やかなこころが我が肉体に戻ってまいりました。こうして小雨のイスタンブールを食堂の中からぼんやり眺めていると、あらためて当たり前のことに気づく。わたしは異邦人なのだ。人間界ではそれを好意的にゲストと呼び、動物界ではそれを捕食対象と呼ぶ。あとから聞いたのだけど、トルコ人は9割が絨毯売りなのだそうな。9割て。それ日本でいうと国民のほとんどが畳屋みたいなことか?違うか。誇張はあるが、なんにせよ要するに彼らは、シルクロードの果ての地で脈々と受け継いできた商人の血を今日も巡らせ、絨毯を売る。この人らは、この人らの生業は、絨毯を買う人間に絨毯を売ることなのだ。狙われ騙され馬鹿にされ、犯罪被害にあった気持ちでいましたけれど(いや実際ひどい被害もあるみたいですけどね)、別に絨毯自体は国が誇る素晴らしい工芸品であることに偽りはないですし、日本で買うより格段に安い。わけではあるんですよねえ。

うん、わたしは絨毯を売る人間に絨毯を売られそうになっただけなのだ。自然の摂理だ。そう思えばなんだかこの国で異邦人としての気位と優しさを保てるような気がしてきた。ということで気を取り直して出発します。いざ絨毯の国よ~~我飛ばん~ʕ•ᴥ•ʔ

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現在アヤソフィア、ブルーモスクという中心地の大きなモスクの周辺広場、スルタンアフメット地区におります。相変わらず行き交う人々からは大変流暢な日本語でお声がけいただきます。 あなた絨毯売る人!わたし絨毯今いらない人~! と強い気持ちで商人の国を歩き続ける農耕民族戦艦ヤマトはやじま、トルコの皆さんご機嫌よう。ぐいぐい進むよ。目が合うと面倒なので無意識に人間の視線を避け足元を見るようになって気づいた。

おや......

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猫ちゃん...

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ここにも...

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ここにも...

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猫だらけ... (お人馴れのすごさから、トルコ国民から長年愛されているのが伝わってきます)

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足元にすごい量の癒し到来した......(耐え切れずスーパーで猫フードを調達したわたしとお猫様ら)

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このまま一生ここにいることがすごく自然なことのように思えてきてまずいので、強い気持ちで再出発します。

さて猫広場を無事抜け、市場でないストリートにやって来ました。なにかを窓際の床で一心不乱に包む婦人。

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こちらは...よくわからない粘性の高そうなものが金太郎飴状に巻き込まれているものや、それがまんじゅう状に包まれているもの、パイ状に包まれているもの、あとはツバメの巣状に何かが包まれているものなどを販売しているお店...

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お茶菓子屋ですね。しかし何一つ味の想像がつきません。大変エキゾチックです。あらためて食文化・三大王者としての風格を感じ始めました。王者は、どうやら練る・包むが得意のようですね。あと全体的に砂漠の民感と言いますか、ぎゅうっと力強く互いの空気と水分を抜き合って強固に仕上がってるものが多いですね。(保存効きそう)

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金太郎飴状のものは、切られて求肥みたいに並べられます。トルコ銘菓、通称「ターキッシュデライト」(トルコの悦びという意、語源は「喉の満足」)」というもののようです。ゆべしと表現されてますね。たしかに。delightstock.jpeg

トルコゆべしなど、いくつか試食しました。味は!砂糖味です!いさぎよい、突き抜ける甘さです!!食感は基本ヌガーっぽいですね。求肥っぽいものもすごい粘りと固さです。粘りが体感糖度をぐんとあげてきます。ああーゆべしに確かに近い。味は若干目指したところがまだよくわかりませんが、補足の隙を与えない一貫した哲学を感じるので、これがこのジャンルの完成形なのでしょう。ちなみにナッツを多用するのですが、中でもピスタチオがダントツに多いのがなんとなく不思議な傾向に感じました(日本だと高価でそこまで乱用しませんよね。このピスタチオそのものが食べたことないぐらい味が濃くて美味しいんです。できれば、練らず、包まず、そのままそっとしておいて欲しい美味しさ。小生ピスタチオは主にカリフォルニア産かイラン産だと思っとりました。どうしてもこのトルコ産ピスタチオが食べたくて帰国後探したんですがほぼまともに日本では手に入らなくて悔しい。余談でした。)

形状に至ってはわかりやすい美学を感じます。並べて積む、積んで盛ってく、のスタイルです。ヴィジュアルは全体的に好みです。シルクロードの魔法感すごい。

こちらは珍しくぷるんとしておりますが同時にべたっとしております。トルコの食べ物は今のところ練られてぎゅっとしたものと、練られてべたっとしているものに出会うことが多いです。検証を進めます(現場からは以上です)。

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いやしかしこのデライトショップ、町の至る所にありましたが、どのお店も老若男女現地の方でごった返していました。観光地のにわか菓子ではないんですね、愛されナショナルスウィーツです。見渡せばなんかトルコのおじさんみんなこれ食べながらお茶飲んでるな...(道端で)ああこれですこれ。このグラスに入れてね。

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道端で、店先で、お茶飲んで半永久的におしゃべりしてる中年男性らの多さよ。つい、あなたたち少しは仕事しなさいよ(絨毯売りなさいよ...)という気持ちになってしまう。

理解は進むが疑問も増える。ちなみにやはりこの日は前半のダメージが残留していたようで、見返すと写真はほぼ猫とトルコゆべしでした。

あれホテルの中にもいた...

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さて全く旅行記然としてこない矢島トラベローグ、3日目に続きます。

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