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真剣トラべローグ 突入!宮廷のお台所!の巻〜トルコショックからの回復旅行記その4〜完結編

イスタンブール 4日目

おはようございます。昨晩は全身ペースト状の豆的な何かでぎっしり満たされた己の体を、すぐさまそっと横たわらせることに成功し、まるで芋で出来た鈍器で静かに殴られたかのような傷ついた私の心と体は、やがておぼろげなイスタンブールの月夜に静かに溶けてゆきました。寝入り端にすこし冷静になりふと頭をよぎったのは、よもや何もかもが幻だったのではないか... 塩分濃度と記憶の残存率は比例しているのだろうか... ということだったけれど、そのままぼんやり寝付いたら、意外と明朗明快な朝がやってきた(消化できた)。うん、己の哀れな境遇を正当化して、ただぶつぶつ不平を遠巻きに呟くだけなど、石の裏に棲む虫だ、矮小ネット蛮族だ。コームダウンだよ矢島、シヴィライゼーションだよ矢島。いま誇り高き異邦人として目と舌を研ぎ澄まし、その汚いお口は謹んで真実を見極めるのだよ!!

ということで、すっかり仄暗い疑問符で溢れ返ってしまったオスマントルコキュイジーヌ、今日こそこの日記内の不穏な空気感、さっぱり拭い去って晴れやかな気持ちでもりもりオスマンご飯食べたいと思います。フレンチも中華も、やはりその三大料理たらしめる最大の理由は各王朝、宮殿内の贅を尽くしたお料理研究にあるとみる。ではもうこの際、王朝のレシピ再現などと回りくどいことはせず、王宮そのものを拝見してみようではないか。

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ということで、やってきました、トプカプ宮殿。約4世紀にも渡ってオスマン帝国の君主が住み続けた宮殿、栄華の象徴であります。フランスで言えばヴェルサイユ宮殿てとこですかね?わたし、デザイナー的にはぎりアウトレベル(日本のデザイン界的には即追放レベル)の隙間恐怖症(マキシマム信仰)なんで、その手の奴隷労働が見え隠れするような(すいません)豪華絢爛はかなり大好物です。てことで、期待値はもともと高いです。入城いたします!

あ、へー??こういう感じ?

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つい、ヨーロッパの王宮のような造りを想像してしまった、のですが、まず意匠がどーのというよりは、彼らのスピリットそのもの(居住空間へのこだわり)がヨーロッパのそれとは随分異なるものだということに気づきました。簡単に言ってしまえば非常に開放的です。まず壁、間仕切りが少ない、それが談話室でも謁見の間でも、どこか外と内がひとつなぎで、お庭へと風が抜けるように作られています。

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お庭は意外と簡素ですが素敵です。今も小綺麗に手入れされておりますが、古い記録では18種類の梨の木、14種類の梅の木、7種類のマルメロの本が植えられていたそうな。全体的に大地と風を感じます。極端にインドア内向き思考なわたくしでも嫌な気持ちしない、フリースピリット感、ていうか床文化??

あ、この感じですこれこれ

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それもこれも彼らがやはり遊牧民族だったからなんですかね。東から馬に跨り大陸を移動し、そうしてここイスタンブール(旧・東ローマ帝国)をついぞ侵略しお宮を構えたわけなんですよね。大地の民ですね。

とりあえずタイル細工はとっても素敵です。たまらん。

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ただ全体的に造形としては意外と過分な要素はあまりない感じですね。ロココ、バロックのような飽食感がない。決して貧相なわけではないんですけども(人間&自然!(雑)空間のリッチな使い方という観点ではむしろ現代と感覚は近い気がする)。ただ、400年もの年月の栄光と繁栄の城、というよりは400年間神々がお暇をつぶされていたお城、と言った方がなんとなくしっくりきますね(褒めてます)。

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おお!お台所です!いよいよ宮殿のお台所です!

「オスマン帝国の宮廷料理は、宮殿の厨房で帝国内の特定の地域出身のシェフ達が、異なった食材で作り、実験した事によって多様な物となっていった。宮殿のシェフは、米や簡単な料理の調理法によってテストされ、雇われていた。彼らは異国情緒溢れる食感や食材を実験し、新たな料理を発明するという目的のため、数多くの地域から派遣されていた。」by wikipedia

だそうです!!

400年に渡る食の研究所、実験の場ということです。しかも贅を尽くした古今東西の材料と料理人を揃えたってわけですよね。シルクロードをはるばる旅した、あの山積みの香辛料たちのめくるめくエキゾチシズムも、ここにきて遺憾なく発揮されそうです!

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大きな鉄鍋がすごいあります。あと竃...と鉄鍋、中くらいの竃... あ、火かき棒みたいなものもありますね。あと色々な太さのこん棒もみたいのもありますよ!他は...食器含めあまり珍しいものは見当たらないですね。で、なんか思ったより野性味......いや、違うんですよ。違うっていうか、 すみません何度もブルボン王朝比較に出して他意はないんですけれど、なんかこうゆうの作りそうな厨房想像してたんですよ勝手に。

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剣城を差してみたりね....そうそうこういう厨房ね

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えーと此処はね、食の研究... 研究所というよりはなんか... 何かを思い出すな......

あ!!

モンゴルのおばさま

これ、これですわ。モンゴルのご婦人のお台所!(ゲル内部)

もうね、私、もうわかりました。すとんと来ましたよ。勝手に納得させていただきました。カールドロゴだ!ここは誇り高き男たちドスラキ族の屋城だ!!

遊牧騎馬民族

カールドロゴ

↑ドラマ(HBOドラマシリーズ GAME OF THRONES)見てない人すみません。要は遊牧騎馬民族てことですね!!

ああ頭ではわかっていたはずなのに、王朝という言葉に惑わされて農耕民族の固い頭では何故か理解が及ばなかった... 彼らは風と大地と血肉を愛する遊牧民族なのだ。血の気の多い漢たちが馬に跨り大陸中を征服し、そうしてここイスタンブールの地を占領、お城を築き上げたわけですよね。しかも教会だって、キリスト教時代の建築のまま乗っ取る形で無理やりイスラム教会に改築するような、パワープレイなわけで。こうなってくるともう彼らの文化全てが優劣の問題ではなくスタイルの問題、精神の問題として片付いていきますね。肉は豪快に竃で焼く、鉄鍋で煮こむ、よくわからんものは潰してペースト状にしまう!絨毯を売る!羊も売る!俺たちはずっとそうして生きてきたんだ、という誇り高い大陸の漢スタイルだったんですよおお!!

よくわからんエビ型の果実のムースを作ったり、タワー状に焼き上げられたビスキュイに花々のクレームと神々の詩歌をあしらうような(適当)無意味で華美で繊細なことはせんということなんですよね。もそもそしてるだ、塩味が足りないだ、全部ペースト状だの、ああだこうだと細かいことを気にしていたのは、結局すべてタマなし極東にこにこ文化圏の人間が言うことだったんですよ。ああすみません。

すいません、精神論に飛びましたが、暮らしぶり含め全て納得がいきました。特にお料理に関して言えばこの「遊牧民の男気スタイル」というので、全て私の中では片付きましたよ。今矢島はアップデートされた。今なら私、全身羊まみれ(匂い)で絨毯も買える、ていうかむしろ売りたいよ!!!

男の中の男!!カールドロゴ!!(GAME OF THRONES)もういちど

カールドロゴ

宮廷料理というワードに囚われて判断を鈍らせていましたが、昨日食べたあれは紛れもなくこの宮廷内で作られていたと今、確信に変わりました。やはりあれは立派なここの王朝スタイルだったわけですね。言うなれば女性的というよりはゲイ的な繊細な芸術性が恐らく文字通り排除されたであろうこの宮廷内で、600年間愛されてきた料理たちだったわけです。

P.S 名シェフの肖像、壁に飾られておりました。

料理人

シェフ......  所詮、メスの、しかも極東の農耕民族のわたくしの舌ではシェフの境地にはついぞ到達できませんでした...  (うん、でも基本豪快なのはわかったけど、さすがに香辛料の研究はしてたと思われるよね。なんかこう絵の具混ぜてるうちに灰色になっていった‥みたいなことなんですかね。ていうか羊自体が匂い強いですからね。うーん。)

*ちなみにこっからは私の超勝手な予想ですけど、オスマン帝国の男社会てのが、食だけでなく全ての文化スタイルを築いた要因と仮定します。君主(男)の興味と言えば上手い肉喰って素敵なお庭でお酒と美しい女性を嗜む、退屈したらその辺の輩の首はねる。これはまあ普通ですよね、世界各国君主の平均的な考え方です。君主でなくてもそうか。ただ女性がここでは、あくまでもハレム内にのみ存在する。で、このハレムの女性たちは全員奴隷市場から買われてきた女性で、その中から君主は妾を選び、子を産ませるらしいです。つまり大きい声では言えませんが女全員が成り上がり、美しいけれど野良育ちの、もともと芸術文化にあまり親しみのない遺伝子が王室にどんどん入り込んでいくと。でもこれが例えばヨーロッパとかだと政治的権力のもと、他国のブリンブリンのお姫様が王室に入り込んできて、ドレスだお料理だお部屋のインテリアだ、とあれこれ注文をつけたりする。これによっていわゆる男の権力行使だけではない、もっとふわっとした女性的な我儘がそこら中に横行し、結果、多様な芸術文化が育っていったりするのではないかとも思ったんですけどね。愚推ですかね。)

ということで、改めてグーグル先生で「世界三大料理」を調べましたが、その出どころも判断基準もよくわかっていないそう。なんだよそれ。でも強烈に「スタイルがある」というのは何より大事なことだと個人的に思うんですよ。なのでわたくしがあらためて認定しましょう!

てことでトルコ入国以来、さんざん胃袋に詰め込んできたペースト状のもの練り物丸め物その他もっさりしたもの色々が、今ようやくわたくしの血肉となり、草原の天使が心に降りてきたところで、あらためて、愉快にオスマン街ご飯食べにゆきたいと思います!はれやか!

最終日に行き着いたロカンタ(食堂)、心が晴れやかなのかここが当たりだったのかわからないけど一番美味しかった。(あと清潔で丁寧な接客だった)

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ずっと気になっていた栗〜!

やきぐり

&とうもろこし〜

とうもろこし

そしてボスポラス海峡名物・鯖サンド ボートの上で焼いてる。何それ超かわいい。ていうかトルコの屋台はみんなかわいい。

サバ屋台

さばさんど

ピザ(はトルコ発祥らしい)。まあこれは想像通りの味ですが形が良いのとルッコラ添える文化、やはり好きです。

トルコピザ

あと、ここは最終日ぎりぎりに辿り着いた別のバザール。実はどのガイドブックもあんまり推してないし、ノーマークだったのだけど、完全に私の求めていた、売り場のすみで埃をかぶった、小粒だけれどぴりりとウィットの効いたキュートでファニーなファンシー雑貨(お手頃値段)が勢ぞろいしている!!トルコに関して言えば、市販のガイドブックはまるごとゼロ信用でした。

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猫ちゃん店主のお茶屋さんで茶道具いろいろ買ったったりました。この猫ちゃんの横のやつみたいの、全部セットで40リラ(600円くらい)で買えます。安い~楽しい~ʕ•ᴥ•ʔ

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詐欺(未遂)も文化と許容できるようになったディープトルコ浸りした私でも、最後まで慣れなくて恐ろしかったのはとにかく街中に大型犬の野犬が多いこと。十数頭とかで群れてます。トルコの富裕層はステータスで大型犬を飼うらしく、世話できなくて軒並みみんな手放す、らしいです(おおい!)。 

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街は犬も猫もそこら中にあふれていて、住民はそれに何をするでもなく共存しています。風と大地の民たちよ。わたくしは彼らが基本的にすべてを受け入れる懐の深さのあることを知ってしまったよ。とにかく誰かやってきたら、絨毯売れるやつには売るし、売れないやつは放っとく。野良犬も放っとく。

長いようで短いトルコの旅が終わってしまった。語れることはまだまだあるけれどとりあえずはこの辺で。

最後にもう一度、誤解のないように言わせていただきます。これはあくまでも個人的な経験に基づく主観だらけの偏ったトラベローグです。この国、この街の人々は基本親日で、ある種大変オープンマインドです。そしてこの気持ち、伝わるかはわからないけれど、個人的には消化に1年もかかった癖に結構今一番行きたい国だったりする。なんてゆうか市販でもグーグル先生でも、「正しい」ガイド(情報の多様性)をあまり見かけられないのが残念な限りなのだけど。

こんな時期(2020年5月)なので、あえて旅行の話をしたくなりました。一刻も早く、また愉快な旅ができる日が来ることを願って。

LOVE,

(イスタンブール道端でドナドナされていた子達)↓

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