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この町は僕を知ってる



仄暗い、じっと仄暗い、
月ももう嫌になる季節です。
忙しない、ちと忙しない、
じぃっとしてればいいものを。
どっちかにしておくれよ町よ、
重い静寂に滲み出る生活。
そこがダメなんだよこの町は。
もっと、そうさ、このまま、もっと、
沈んでおくれ、いっそ底まで。
チカチカ信号機もご苦労様々、お前のことなんかもう今じゃ誰も見ちゃいないよ。
あれまどうしちまったんだよお前、頭は動いちゃいないが手と足はまだ動くみたいじゃんか。
にっちもさっちもいかないこの町の憤りも、午前3時の過ちも、僕を知ってるつもりのこの町も、全部このバイパスのクレーンに乗っけて流してってくれよ山奥にトラック。
原色に塗られ重なる道路の真ん中で中指立てて突き飛ばされる日々です。
ゆきずりの風に指を凍らせながら次のトラックを待ち続ける日々です。

午前3時26分、町境に流れる川に飛び込んだ少年達を、バレないように、そっとシャッターに収めた僕は、収めた写真を1枚1枚丁寧に丁寧に、バイパスに通る横断歩道の白線に、バイパスに通る横断歩道の白線に埋め込んで、埋め込んで、目の前を少年たちがかけて通り過ぎていった。少年たちは陸橋の両端をバリケードで塞ぎ、狼煙をあげて遠吠えをした。午前3時57分、僕はまだ、見ていることしか出来なかった。

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