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ぼくがとくべつ好きなこたちです 仮想のビートに乗せて どうかどうか
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#短編小説

僕はこの町を待ってた

僕はこの町を待ってた

あれはある昼下がりの、夕方の日差し迫る、いい風の吹く頃の事でした。

いつものように崖を登って空を眺めていると、何処からか列車が通り過ぎてゆく音が聞こえてきました。

当然、周りに線路など無いし、空耳にしてはちょっと長いし鮮明に聴こえたので、これはこれは不思議に思って、ぼおっと、悪戯に時を浪費し黄昏ておりました。

時刻は午後5時過ぎ。

暫くすると夕焼け小焼けのチャイムがじわりと遠くから聞こえて

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イカに蝕まれながら

イカに蝕まれながら

賞味期限切れの感動の名曲を思い出した夕方の車内はセピアで塗り尽くされた遺跡だった。

公衆便所で目を覚ました明け方の僕は、さっきまで気にしていたはずの彼女の在処を既に大海へ流してしまっていて

見知らぬ街は面影を再生するたびに姿形を変えて何処へとやらへ逃げていく。バイパスに面した生活がおもむろに人々の正気を蝕んでいくのが何故だか目を通して解るようになっていた。

失った正気を取り戻した僕は、再び公

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REFLECTS→それでいて、胎道

僕 はい、じゃはじめまーす。

パチンと手を叩くと同時に目を閉じる。暫くして目を開けると驚いた表情。

状況を飲み込むと、私は話し始める。

私   (観客席に向かって写真を撮り、床に置く)どうもこんにちは、従順なわんコロのような可愛さと健気さ。私です。これから皆に私、のことについて話していきたいんですけど、んーまずね、私には弟がいます。年の離れた弟がいます。弟は自由奔放な性格で、好きなことを

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