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(感想)思いを表現する勇気

(以下、筆者Xより転記)

姫川あゆり企画『世知辛い』観賞。主人公は通信制高校に通いながら活動する金沢の売れっ子女優。という設定が、脚本・演出の姫川本人を彷彿とさせるため、語られていく主人公の状況が、事実なのかどうかと困惑してしまう。そう観客に体感させようとしたのなら、相当難易度の高い演出を行っている。

主人公マレンの設定に事実が含まれているのか、全くの作り事なのかはわからない。ただ、縁者達から並々ならぬ切実さが感じられた。そこにあった物語は強く主張するものだった。

私のように深読みしてしまう観客もいる中、家族というプライベートが垣間見える題材を上演する、姫川と演者達の度胸を感じた。

家族の死や障害者について書かれた作中台本を読んだ俳優が「こういうことは演じたくない」というふうにこぼす。その、世間の空気を読むような消極的な態度にマレンはもの申す。

そういった題材が金沢の演劇界で見受けられにくいのは、ただ単に関心が持たれていないのだろうと思っていたが、演者の側からすると感じるところもあるのかもしれない。何にせよ、「それはおかしい」と声を上げるのは勇気がいることだ。

言いたいから言う、演じたいから劇にする。そんな純粋な衝動と、その力の元になっている様々な思いの混ざり合いが伝わってくる公演だった。

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