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お寿司とさくら

家庭の味が面白い料理の一つにお寿司がある。一人暮らしをするまで、お寿司といえばサラダ巻きやちらし寿司、お稲荷さんのことだった。

家のちらし寿司は、鮭フレーク、塩もみきゅうり、炒り卵、枝豆、ごまが混ぜ込んである、いかにも春らしい色合いのもので、いろんな食感、特にきゅうりがポリポリとアクセントになって、いくらでも食べられた。

サラダ巻きとお稲荷さんは、ばあちゃんの係だった。
サラダ巻きは、レタス、きゅうり、ツナマヨ、カニカマ、卵焼きが入っている。カニカマが、ときどき豪華に海老になるときがあって、それがとても好きだった。
お稲荷さんにはにんじん、れんこん、椎茸のみじん切りが醤油と砂糖で甘辛く煮込んだものが混ぜ込まれていた。

母やばあちゃんがお寿司を作っているそばから、まだ温かい酢飯を頬張るのがとても好きだった。

18で一人暮らしをするようになって、友達と回転寿司にも行くようになった。
気づけばわさびを抜かなくてもよくなっていた。
卵と海老のお寿司はとらずに、サーモンや、はまち、赤貝を好むようになった。
マグロ専門の居酒屋で、安くて美味しい大トロ、中トロの握りを食べた。
秋刀魚のお寿司が美味しいことを知った。

回らないお寿司に連れて行ってもらった。

ばあちゃんは気づいたら、お稲荷さんもサラダ巻きも作れなくなっていた。

こないだ帰省から戻る道中、母にカニをごちそうしてもらった。
そこで初めて生のカニの握りを食べた。
カニの身がトロリとシャリと溶け合ってとても美味しかった。

生きている限り、お寿司の世界は広がっていく。

帰省から戻った昨日、家のそばの河原の、散り始めた桜並木を赤子と夫と3人で歩いた。さくらの花びらが雪のように降り積もっていた。

今年の目標、なんて持たずに生きてきたけれど。
なんとなく、今年は、お稲荷さんを作ってみようと決めた。

#日記 #思い出の味 #エッセイ #コラム #フタガミサヤ #家族 #春

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