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短編小説

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#合宿

『All The Things You Are ~ジャズ研 恋物語~ 18』

『All The Things You Are ~ジャズ研 恋物語~ 18』

 桜子さんが内定をもらったのは、日本に本社のある某有名楽器メーカーだった。俺はあとでそのことを聞いてびっくりした。あの人、本当に俺のアドバイスを真に受けたらしい。桜子さんの大事な人生の岐路に、俺がいた事は何だか少し誇らしいといえばそうなのだが。
 さてMJGといえば、毎年恒例の夏合宿に突入していた。仕切りは既にD年に任せているので副部長としてやることはあまりない。部員が呑み過ぎで度を越したバカをや

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『Night And Day:Take2 ~ジャズ研 恋物語~ 8』

『Night And Day:Take2 ~ジャズ研 恋物語~ 8』

 菊田のオリジナル曲の作成に、俺はひたすら付き合っている。普段たいして練習しない彼がピアノの鍵盤に向かってずっと座り続けていることは、D年以上の誰もが不思議がった。
 「いまのとこさ、メジャーセブンスでも良くね?」「確かに」俺の提案がスルリと通った。こいつがメジャー系のコードを愛しているのは、C年の頃からの付き合いで承知済みだ。
 合宿は3日目。D年ふたりがキャッキャ夢中になっている様子に、昨日か

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『Night And Day ~ジャズ研 恋物語~ 7』

『Night And Day ~ジャズ研 恋物語~ 7』

 ジャズ研は夏に毎年恒例で合宿を行う。山中湖の湖畔にあるサウンドヴィレッジというスタジオ併設のコテージが何棟も立っている場所で、近年はそこばかりを使っていた。去年の夏からもう一年か…と俺は感慨にふける。
 コテージの1Fはスタジオになっていて、部屋割りされた各々が楽器を置いている。一通り荷物が片付いたところで、F年の吾郎さんが「酒の買い出し行ってくるぞ~」と言う。テナーのE年の遠山先輩も「吾郎さん

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