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異国の味

 長崎医学部には特色がある。
 特に感染症研究に実績があり、高度感染症研究センターも置いてある。
 その当初は風土病との闘いがあった。
 風土病は海外起因のことが多かった。
 長崎は離島を管轄に多数抱えている。
 私のその離島で生活している。離島は国境に接しており、交易によってフィラリアなどの寄生虫やB型肝炎などのウィルスの流入があったという。それで研究が進み、長崎からは風土病が根絶されていく。
 次に目を向けたのは、アフリカ諸国のウィルス系伝染病である。
 特にエボラ出血熱に対しては解明が進んでいる。
 このためにアフリカ諸国からの、留学生が多数いて研鑽を積み上げている。

 そんな留学生の一家にご招待を受けた。
 ホームパーティで極めて多国籍な人々が募っていた。
 もちろん基本言語は英語で、サブ言語として長崎弁があった。
 基本的には肌色の濃い人々だ。
「我々の肌はBlackではない、Tan色なんだ」
 そう言ってやけに目立つ白い歯で、笑った。
 古びた日本家屋に彼らは壁に、幾何学的な意匠をあしらった布を貼っている。ランプも裸電球に貝殻で作ったようなシェードが掛かっている。
 異国で見たままのような光景であった。
 テーブルに並んだ料理からは、利きなれないスパイスの香りがむせ返るようであり、その材料は何であるのかがよく判らない。
 肉なんだろうか、魚なんだろうか。
 その中でもさらに異才を放つ料理がアルミ製のバットに盛られていて。
 それが大層、気に入った。
 ああ。こんなものもアフリカにあるんだなあ、と感心して。
 そのホストに尋ねてみた。
「この料理はなんていうの?」
 彼は怪訝な顔で、澄まして言った。

「okonomiね、コッチが関西風、コッチが広島風ネ」




 

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