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音楽は三者三様⑥ ジャズ マイルス・デイビス編

マイルス・デイビスのアルバム『ワーキン』に吹き込まれた曲「イット・ネヴァー・エンタード・マイ・マインド」(It Never Entered My Mind)は一度聞いたら最後、虜になる一曲です。

マイルス・デイビスはアメリカ生まれのジャズ・トランペッターです(1926年ー1991年)。音楽活動歴は長いです。ジャズという音楽カテゴリーでは括りきれない音楽を創りあげました。マイルスの音楽はまさに「マイルス・デイビス・ミュージック」です。

活動歴が長く多彩な音楽活動のなかで1950年代半ばに注目し、どのような活動をしていたかというと、ある識者はこのように書いています。

1955年末に、マイルスが結成したクインテットは、当時もっとも影響力をもったコンボ言われ、1957年の春まで続いた。いちばん最後に発表された五枚のレコード(プレスティッジの『クッキン』、『リラクシン』、『ワーキン』、『スティーミン』の四枚と、CBSコロンビアの『ラウンド・アバウト・ミッドナイト』)は、このクインテットの成果を集大成した作品として知られている。プレスティッジの四枚は、すべて1956年の5月と10月の二日間で吹込まれ、すべてワン・テイクで取り終え、数年かけてゆっくりと発表されていった。
デヴィッドH・ローゼンタール『ハード・バップ』勁草書房、1997年

たった2日と驚くほどの短期間で録音をしています。

ここで言うクインテット=五重奏のメンバーは、テナーサックスはジョン・コルトレーン、ピアノはレッド・ガーランド、ベースはポール・チェンバース、ドラムはフィリー・ジョー・ジョーンズです。

プレスティッジの4枚、どのアルバムがおすすめかと言うと、ある識者は『リラクシン』と書き、こう続けます。

その他の代表作。現在進行形シリーズといわれている四部作(『クッキン』、『リラクシン』、『ワーキン』、『スティーミン』)では、同日録音で構成され、また《マイ・ファニー・ヴァレンタイン》が入っていることから『クッキン』の世評が高いが、ハードボイルドに突き進んでいく
『ワーキン』こそベストではないか。ただし、四部作、マイルスのミュート、コルトレーンの荒けずりなサックス、ころがるようなガーランドのピアノと、どれをとっても甲乙つけがたく、すべてがモダン・ジャズの聖典といっても過言ではない。
中山康樹『マイルス・デイヴィス』講談社現代新書、2000年

驚異の2日で録音された四部作。すべてはジャズの聖典、おすすめは強いて言えば『リラクシン』、ベストが『ワーキン』です。

では、アルバム『ワーキン』のなかで識者が示す特徴をはっきり聞き取れる一曲は何か?と言えば「イット・ネヴァー・エンタード・マイ・マインド」(It Never Entered My Mind)ではないでしょうか。

同曲はバラードです。トランペット、ピアノ、ベース、ドラムの演奏で、サックスだけが登場しません。サックス演奏の荒削りの良さがありつつもバラード曲だから割愛されたのかもしれません。

ピアノのころがるような伴奏に乗ってトランペットがミュートサウンドでメロディを歌いあげます。ベースとドラムはビート刻むことに徹します。ピアノとトランペットがともに揺れ動く、それもキシキシと揺れる感じが心地よいです。


マイルス・デイビス、アルバム『ワーキン』、「イット・ネヴァー・エンタード・マイ・マインド」(It Never Entered My Mind)

ちなみに、テナー・サックス奏者のスタン・ゲッツ(1927年〜1991年)もトロンボーン奏者のJ.J.ジョンソンと同曲を吹き込んいます。アルバムは『スタン・ゲッツ&J.J.ジョンソン・アット・ジ・オペラ・ハウス』です。

ゲッツの場合は、楽器それぞれが伴奏に徹してサックスが歌うメロディのスムースさを際立てせます。こちらも素敵な演奏です。比べて書きますと、氷がゆっくりと水に溶けていくような滑らかな感じが心地よいです。



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