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40代女性の【母の介護20年 父は無関心】をコーチングするとしたら?

😞 今回は、相談者が「認知症の母の介護に無関心な父に振り回されている」事例です…🙂行動の選択理論でコーチング人生案内#165

 40代の女性。認知症の母を20年介護しています。当初は母を治したい一心で、様々な本を読んだり病院に行ったりしました。東京に住んで働いていたため、週末に実家に戻って家事や介護をこなし、週明けにそのまま出勤するという生活を10年続けました。

 この間、父は何もせず、症状が悪化する母を罵倒するばかり。病院代や生活費は私が出しました。心底父に落胆し、母を実家から連れ出して2人で暮らし始めました。すると、母は笑顔が増え、安眠できるようになりました。しかし、私がうつ状態になってしまったのです。母の年金頼みの生活がしばらく続き、最近ようやく時短で継続的に働けるようになりました。

 私は女性として大事な時期を母のために費やしました。それなのに父は私たちの人生に無関心で許せません。今後の指針をご教示ください。(神奈川・S子)

(読売新聞2022年9月15日)

✅次のようなプロセスで、相談者の答えを引き出す質問、コーチングの展開を考えてみました💦


▶︎ 相談者が話したい「困りごと」を受けとめ、まとめると

・自分は女性としての大事な人生の20年を、認知症の母の介護に費やしてきたが、その間、父は、症状が悪くなっていく母を罵倒するばかりで、母と娘の人生に無関心であり続けた。そんな父が許せず、困っている。

▶︎「困りごと」を「願いごと」に転換して、話してもらうと

・自分は、父の自分たちに対する無関心が許せない。今後の指針を教示してほしい。

▶︎ 相談者の「困りごとのパターン」を考えてみると

  • 願いごとが叶わない、願いごとが不明確

  • 相手や状況に振り回されている

  • 「自分」に自分が振り回されている
    (注:この「自分」は、自分の気分や感情、喪失感、記憶、思い込み、心理的な症状、もう一人のダメな自分、完璧主義の自分などを指す)


🚩①相手の困りごと、願いごとの話を受けとめたうえで、②次の質問や展開をしてみること、を考えました

・20代から、認知症の母の介護に自分の人生を捧げ、本当にご苦労されてきたと思います。その間、お母さんとあなたのことに無関心であり続けたお父さんを許せないという気持ちも、人間として、当然抱かれるようなお気持ちだと思います。

・ご自身が母の介護のために、人生の大事な20年を犠牲にし、失った、という喪失感をどう埋め合わせてくれるのかと父に迫りたいお気持ちなのか、叉は、ご自身として、その喪失感をこれからどう取り戻していけるのか、もう、諦めざるをえないと思われているのか、などが推測されますが、あなたご自身が、どのようなさまざまな思いを持たれているのかを、明確にされることも大事なように思います。

・そのうえで、これから、未来に向けて、あなたご自身は、いろいろなことで、何がどうなったらいいと思われているのでしょうか。

この点も、難しいかもしれませんが、思いつく限り、「何がどうなったらいい」と挙げてみてください。

・ところで、もし仮に、20年前に、両親が離婚されていたり、お父さんが何かの事故や病気で亡くなられていたりしていたら、これまでの20年は、具体的にどう違っていたと想像されますか?

もし、父がいなかったとしたら、お母さんとあなたの生活、人生はどのように違っていたでしょうか? それとも、あなたは、お母さんに対して、同じような対応をされていたでしょうか?

例えば、経済的な面や、週末以外のあなたが東京で働いておられた期間とかは、どんな違いがあったでしょうか?

・今は、お母さんと二人暮らしで、お母さんは笑顔が増え、安眠できるようになり、あなたはうつ状態になってしまったが、最近は時短で継続的に働けるようになったとのことですが、今の生活であなたが得ることができていることで、これから先も失いたくないもの、これからもずっと続いてほしいこととして、どのようなことがありますか?

・また、お父さんのことが許せないお気持ちは、それはそれとして、今の時点で、お父さんに何でも言えるとしたら、具体的に何をしてほしい、リクエストしたい、ということがあるでしょうか、実現するかどうかはわかりませんが、とりあえず、いろいろ考えてみてください。

・あなたとしては、今後、お父さんとはどのような関係、距離感を保ちたいのですか? そのような父との関係のあり方、距離感について、あなたが、強く決心することができるとしたら、その決心に、「長年のお父さんの無関心」がどのように影響していそうですか?

・今は、なかなか、あなたの未来のことを考えるのも難しいかもしれませんが、もし、これから、あなたの人生が報われる方向に変わっていくとしたら、あなたは、これから未来に向って、どのような人生になれば、少しでも、「失われた20年」を取り返せそうですか?

・これからの自分の未来を、自分の手でよくしていきたいというお気持ちの強さは、どのくらいおありでしょうか?

・そして、あなたの望むさまざまな未来が、手に入ることが分っているとしたら、手始めにどのような小さな行動から、始めてみたいですか?

・自分の幸せな未来に向って、ご自身ができることを着々と進められて、願いごとが、小さなことも含めて、全部ではないけれど、いくつも実現していけてるとしたら、そのときには、「お父さんに対する恨み」は、今とどのように違っていそうですか?

・以上のようなことを、考えてみられたとき、何か気づかれたこととか、思われたことはありますか?


✅参考:回答者(いしいしんじさん)の言葉です💖

 ひとができる以上のことを、あなたは成しとげた。

 生き方を変え、生活を変え、自分のほぼすべてを 捧ささ げた結果、ひとりの人間を病から引きあげ、安らかな眠りと笑顔をとり戻した。

 つぎはあなたの番だ。

 文面から、いままでの暮らしに圧迫され、閉じこめられたように感じ、息をつけずにいるあなたの、声にならない声がにじむ。長い介護に、知らず知らず、あなた自身を依存させてしまっている気配も感じる。

 あなたが生きていくためにもっとも大切なのは、当たり前だが、あなたの、清新ないのちだ。たったふたりでここまで来た自負はあるだろう。ただ、お母さんにあなたの、いのちのケアはできない。お母さんもまた、あなたの生気が薄れていくと同時に、笑顔が薄らぐのではないだろうか。

 誰かの手、あたらしい声を、暮らしに入れよう。そのことがきっと、母をいっそう陽気に保つ。あなた自身も、とりまくこの世界を信頼する力を、少しずつはぐくむことができる。

 やり抜いてきたように、あなたは生き方を変えられる。自信を持ち、あたらしい生活の中で、あなた自身を取り戻してほしい。

 父にかかずらうのは、時間と労力の無駄だ。別の星にいると思っていい。

(読売新聞2022年9月15日)

💟新聞の人生案内の回答は一種のティーチングに当たると思います。「本人から本人の答えを引き出す対話」としてのコーチングとの違いがよく分りますので、コーチングが、より社会に認知される一助になればと思います。


✅ 以下、選択理論コーチングの補足です。

              😋 筆者独自の見解や表現も入っています.

1,相談者が満たすと幸せ感が増ず基本的欲求(ニーズ)

  • 愛所属の欲求(愛したい、愛されたい、仲間でありたい、仲間がほしい)

  • 力・自己価値の欲求(自分が価値ある存在でありたい、認められたい、自分を認めたい)

  • 自由の欲求(自由でありたい、自由にしたい)

  • 楽しみの欲求(楽しみたい、学びたい、追求したい)

  • 生存の欲求(生存に必要なことを満たしたい)


2,選択理論コーチングの基本的な三角モデル


3,今回使った「選択理論の考え方のエッセンス」

🌻 選択理論の第1の原理 
・自分の考え方や見方、行動は、自分が自由に選択できるし、変えられる、と考えましょう。
 
・自分には、未来に向って自分が幸せになるために行動する責任がある、と考えましょう。

・効果的な行動を選択するために、「自分が満たせていない基本的欲求(ニーズ)が何か」を、自分に問いかけましょう。

🌻 選択理論の第2の原理 
・相手(本人)の行動を変えられるのは相手(本人)だけであって、他者は助言や情報提供、リクエストができるだけ、と考えましょう。(影響は与えられるが、相手を変えることはできない。「相手が自ら変わることを決める」と考える)

🌻 「外的コントロールの心理」から「内的コントロールの考え方」に転換
・変わろうとしない相手(変えられない状況、環境)に、自分が振り回されていることに気づきましょう。

・自分は自分なりに、相手は相手なりに、それぞれが「精一杯の行動」をしていると考えましょう。


🌻 選択理論における「人間関係」の重要性
人の長期にわたる心理的な問題(悩み、不幸感)の大部分は、その人が、現在の重要な人間関係で、満足できる関係を持てていないことに原因がある。

・人は、現時点で、一つ以上の満足できる人間関係が持てていなければ、幸せな生活を送れない。逆に、一つ以上の満足できる人間関係を持つことができれば、今よりも幸せになれる可能性がある。

🌻 外的コントロールをやめて、人間関係を近づける
・いやがる相手を変えようとしても、相手の抵抗を生み、人間関係が遠ざかるだけ、と考えましょう。

・(本人を外側から変えようとして)相手を批判したり、強制したり、脅したり、文句を言ったりすることはやめましょう。

・「今、自分が1番気になる人間関係の相手は誰か」を、自分に問いかけましょう。

・その人との現在の関係性で、自分の基本的欲求(ニーズ)がどの程度満たせていないか、叉は、満たされているかを考えてみましょう。

・外的コントロールを相手にしたり、相手からされたりして、反応しあい、自己防衛のための行動を取り合っているときは、自分も、相手も、それぞれの心の中の大切な基本的欲求(ニーズ)に、関心の目が向けられていないことに気づきましょう。

・自分の中の大切な基本的欲求(ニーズ)が何かに気づいて、それを満たせる行動をとりましょう。

・自分の中の基本的欲求(ニーズ)が満たせるような相手の具体的な行動を、相手にとってくれるようにリクエストしてみましょう。

🌻 相手の内的コントロールと行動、願望、欲求充足
・相手の行動や反応(抵抗、攻撃、逃避など)も、自分のと同じく、相手が本人のニーズや価値観、欲求を満たすための精一杯の行動なのだと考えましょう。

 
🌻 自分と相手の「現状(のステージ)の知覚と将来の願望」
・自分は今、人生やキャリアのどのようなステージにいて(入っていて)、未来(次のステージ)に向って何を望んでいるかを具体的に考えてみましょう。

🌻 相手との人間関係(具体的やりとり)の願望-人間関係の距離感
・自分は相手との関係で、未来に向って、どのような距離感で、具体的にどのようなやりとりができる(叉はしない関係)でありたいのか(自分の立ち位置をどこにするのか)、

そして、そうであることによって、自分は相手とどのような人間関係を得たいのかを考えましょう。

🌻 自分の「自分」との関係
・もう一人の「自分」も、「自分なりに精一杯がんばっているんだ」と考えましょう。そして、もう一人の「自分」の心の声を聴き、応援者として励まし、勇気づけてあげましょう。
(注:ここでいう「自分」は、自分の気分や感情、喪失感、記憶、思い込み、心理的な症状、もう一人のダメな自分、完璧主義の自分などを指す)

・辛い思いをしている「自分」は、どうなりたい、本当はどうありたいと望んでいるのか、「自分」の心の声を聴いてみましょう。

・もし、第3者が「今の自分」の状況だったら、自分は「その第3者」の状況をどのように考え、どんなアドバイスをするかを考えてみましょう。

🌻 自分の欲求充足
・自分が満たせていない、自分にとって大切なニーズや価値観、欲求が何か、を考えましょう。

・もし、自分の願いが実現したら、今とどう違ってくるか、そのときは、今と違う何をしているかを考えてみましょう。

🌻 現在とっている行動とこれからの行動プラン
・自分が願っていることのために、今どんな行動をしているか、それをしていて実現できそうか、どんな新しい行動ができるかを考えてみましょう。

・「もし願いが実現したときは、今と違うこんな行動をするだろう」という具体的な行動を考えてみて、先どりしてやりましょう。そして、どんな変化があるかを見てみましょう。
 

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