新聞の投書欄からすてきな投稿を発見しました(続「熱血! 古典教育・国語教育」)
今日紹介したいのは、2021年の年末の投稿欄の「私の金メダル」というテーマに寄せられた投稿のひとつです。
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初の「もう1回読んで」
こども園や放課後児童クラブで絵本の読み聞かせのボランティアをしている。今年4月に訪れたこども園での出来事が忘れられない。
「きょだいな きょだいな」という絵本を読んだ。子どもたちが巨大なピアノや電話機で遊ぶという楽しい内容だ。物語の良さを引き出すためにテンポ良く、抑揚をつけて読み上げた。
最後のページを閉じて、「はい、おしまい」と言った時だった。静かに聞いていた3歳の男児が突然、「もう一回読んで」と叫んだのだ。すると、他の子どもたちも同じように、「読んで」「読んで」とせがんでくれた。
ボランティアを始めてから、今年で6年になる。200回以上の読みきかせをしてきたが、初めての「アンコール」だった。うれしそうな子どもたちの笑顔は、私にとってまさに金メダルだった。
※2021年(令和3年)12月30日(木曜日)『読売新聞』朝刊〔第10面〕。投稿者は、東北地方の七十代前半の男性です。
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一冊の絵本の読み聞かせを通じての、投稿者の男性と地域の子どもたちとの心温まる交流の様子が目に浮かぶようです。
これを書かれた方は、読み聞かせだけでなく文章を書くのもとてもお上手であることにも気づかされます。なぜならば、これだけの短い文章の中で、たくさんのことが伺い知れるからです。
まず、「もう一回読んで」と叫んだ「3歳の男児」が「静かに聞いていた」とあるので、他の子は歓声を上げたり笑ったりしていた中で、彼は相当集中してお話を聞いていたということがわかります。その上で、お話自体ととそれを引き出した投稿者の男性の読み聞かせに対する素直な評価をほぼ反射的に述べたのでしょう。
男性は「テンポ良く、抑揚をつけて読み上げた」とありますが、物語を読み込んで何度も練習していたのでしょうね。
また、アンコールをせがんだ男の子が「3歳」だとはっきり記しているのは、男性が何度もその園を訪れているのが前提の表現であるとも思いました。だとすると、その男の子が男性の読み聞かせを聞くのは初めてではなかった可能性もあり、この時のお話と読み聞せは思わず「もう一回読んで」と叫んでしまうくらい、まさに「金メダル」級だったことが想像されるのです。
そして、彼の評価は他の子どもたちにとっても納得できるものであったから、「読んで」の「アンコール」が起こったというわけです。
「6年」、「200回以上」の「ボランティア」というのも頭が下がる思いです。地域の高齢者によるボランティアの例は、またこちらのシリーズでも紹介してみたいと思いますが、ごく限られた人間関係や地域にとどまらない世代を超えた交流は、子どもたちにとっても高齢者にとっても、今後ますます重要になっていくと感じています。
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