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巣ごもり2DK─2020年5月4日~5月7日

2020年5月4日
 昨夜から雨が降り続き、屋内は蒸す感じだ。昼前に雨がやみ、気温が下がり、過ごしやすい。

 『東洋経済オンライン』が「コロナで爆発した『在宅勤務できない人』の怒り アメリカ『反封鎖デモ』参加者たちの言い分」というNYTの翻訳記事を2020年5月3日6時10分に更新している。しかし、このタイトルは内容に必ずしもそぐわない。実際、原題は” Why These Protesters Aren’t Staying Home for Coronavirus Orders”である。これはJulie Bosmanと Sabrina Tavernise、Mike Bakerによって執筆され、2020年04月24日に更新されている。

 確かに、抗議参加者には、邦題が示すような生活に切羽詰まった労働者や中小企業経営者もいる。あるいは都市と地方を一律に規制する必要などないと主張する農業従事者の姿もある。しかし、デモは大きくても数千人規模で、そうした切実な思いの人だけではない。むしろ、多様であり、原題の方がふさわしい。参加者の中心はトランプの熱烈な支持者である。南部連合の旗を振り回したり、アサルトおライフルを持参したりする者さえいる。草の根の運動に見えるが、保守系団体が呼びかけ、政治的思惑が透けて見える。率直に言って、かなり胡散臭い。

 ミシガン州の抗議運動は保守派の2団体がフェイスブックを使って扇動した「グリッドロック作戦(Operation Gridlock)」である。人々に州都ランシングまで車で出かけ、クラクションを鳴らして延期に抗議するものだ。呼びかけた団体の一つ「ミシガン州フリーダム・ファンド(Michigan Freedom Fund)」の幹部トニー・ドーント(Tony Daunt is)は、トランプ政権の閣僚、ベッツィ・デヴォス(Betsy DeVos)教育長官のデヴォス家と関係が深い。
 また、ワシントン州の抗議集会には極右民兵団「スリー・パーセンターズ(Three Percenters)」も参加している。この名称は独立戦争で武器を手に取って戦った入植者の人口比と彼らが信じる3%に由来する。また、ワクチンや政府について陰謀論を唱える非主流派組織や現職の共和党議員、公職の立候補者も加わっている。

 抗議運動の参加者は、人口比から見れば、少数にとどまる。規制により追い詰められた労働者や中小企業経営者の姿も確かに見られるが、トランプ支持者が多く、これに乗じて政治的影響力を拡大しようとしたり、存在感をアピールしようとしたりする者も少なくない。それが記事の伝える抗議運動の実態である。

 日本政府は自粛を要請しても補償が不十分だという不満が世論には強い。邦題はこうした背景の日本の読者を記事に誘導するために就けたと思われる。しかし、記事はあくまでもアメリカの文脈に基づいている。原題が示す通り、抗議運動も断片的な情報だけではわからないような内実がある。ところが、邦題はそれを狭めている。自分たちと何が同じで、何が違うのか、何が参考になり何が教訓になるのかを相対的に考えるために、それを読むのであって、メディアが単純化してタイトルを変えるべきではない。

 夕食は、ベーコンの小松菜チャンプルー、野菜サラダ、チリコンカン、茶豆のヨーグルトスープ、食後は緑茶、干し柿。屋内ウォーキングは10010歩。都内の新規陽性者数は87人、計4654人、死者5人。

参照文献
Julie Bosman, Sabrina Tavernise & Mike Baker, ‘Why These Protesters Aren’t Staying Home for Coronavirus Orders’, “New York Times”, Updated April 24, 2020
https://www.nytimes.com/2020/04/23/us/coronavirus-protesters.html
Julie Bosman, Sabrina Tavernise & Mike Baker、「コロナで爆発した『在宅勤務できない人』の怒り アメリカ『反封鎖デモ』参加者たちの言い分」、『東洋経済オンライン』、2020年5月3日6時10分更新
https://toyokeizai.net/articles/-/347788?display=b&fbclid=IwAR1dI1dwmxlf2wy3aJ8Lo4LQw2CMPUODoA5ENH1cVHCOuy-wNBjBLtGzwgQ


2020年5月5日
 いわゆる大航海時代、アメリカ大陸の先住民族は、ヨーロッパ人の持ち込んだ天然痘などの感染症により多数が亡くなり、彼らに侵略される一因となっている。この歴史が繰り返されようとしている。

 『AFP』は2020年5月4日13時32更新「ブラジル・アマゾンの先住民、新型コロナで「絶滅」危機 著名写真家が大統領に公開書簡」においてそうした状況を次のように伝えている。

 ブラジルのアマゾン(Amazon)熱帯雨林地帯に暮らす先住民族が新型コロナウイルスの感染拡大により存続を脅かされているとして、同国の著名写真家セバスチャン・サルガド(Sebastiao Salgado)氏(76)は4日までに、ジャイル・ボルソナロ(Jair Bolsonaro)大統領に早急な保護対策を取るよう求める公開書簡を送った。感染症に対抗できる手段がないため、対策を急がなければ先住民族が「絶滅」する恐れもあるとサルガド氏は警告している。
 サルガド氏は書簡で「5世紀前、欧州からの移民により持ち込まれた疾病によってアマゾン先住民族の多くが死んだ」と指摘し、「今日、ブラジル全土で新たな災いが急拡大している」「COVID-19(新型コロナウイルス感染症)に対抗するすべがないため、先住民たちが絶滅してしまう恐れもある」と訴えている。
 書簡には5万人分近くのオンライン署名が集まっているほか、ブラッド・ピット(Brad Pitt)さん、マドンナ(Madonna)さん、ポール・マッカートニー(Paul McCartney)さん、リチャード・ギア(Richard Gere)さん、メリル・ストリープ(Meryl Streep)さんといった有名人も署名を寄せている。
 サルガド氏は貧困に苦しむ人々を世界各地で撮影し、これまでに国際的な賞を数多く受賞している写真家。近年はアマゾン熱帯雨林地域に暮らす人々を題材とした写真を撮り続けている。
 アマゾン先住民族の多くが暮らすアマゾナス(Amazonas)州は新型コロナウイルス流行による被害を最も受けた州の一つで、保健省によるとこれまでに500人以上が死亡している。

 ボルソナロ大統領は「ブラジルのトランプ」と呼ばれ、世界的に2010年代に登場した非自由主義的民主主義の政治指導者の一人である。彼らは合理性を欠く判断をしばしば取り、現代的課題に向き合わず、社会の保守層に支持を得るような言動を繰り返し、高度経済成長流の経済政策を猛進している。それを要約すると、パターナリズムだろう。19世紀英国のベンジャミン・ディズレーリ首相の現代版だ。東西冷戦終結後、国際社会は近代主義の負の遺産の解消に取り組んでいる。しかし、彼らはその負債をさらに増やしている。

 夕食は和風ポークカレー、野菜サラダ、食後はアイスコーヒー、干し柿。端午の節句なので、伝統的ではないけれど、子どもの好きな料理の代表のカレー。ウォーキングは10154歩。都内の新規陽性者数は58人で、計4712人。

参照文献
「ブラジル・アマゾンの先住民、新型コロナで「絶滅」危機 著名写真家が大統領に公開書簡」『AFP』、2020年5月4日13時32更新
https://www.afpbb.com/articles/-/3281583


2020年5月6日
 新型コロナウイルスの感染拡大を抑制するために、政府は規制や要請による外出制限を実施、「ソーシャル・ディスタンス(社会的距離)」の保持、や「三密(密閉・密集・密接)」の回避などを人々に求めている。感染ルートの解明や対策の効果の検証・公開などを目的としてスマートフォンの位置情報やBluetoothが利用されている。こういった携帯端末の活用はこれまでのパンデミックと異なる事情である。移動や集会の自由の制限自体はスペインかぜ以来のオーソドックスなパンデミック対応だが、デジタル技術による捕捉は初めてだ。

 位置情報はマクロなレベルから移動による人の密度を調べる際に利用される。一方、Bluetoothはミクロレベルである個人の感染追跡もしくは曝露通知の解析のために必要だ。いずれもプライバシー侵害や目的外の利用の危険性があり、その防止が求められる。近代においては移動や集会の自由が認められている。特定目的のために同意したとしても、監視されなければ、それを政府や企業が自己利益の利用に転用しかねない。警戒するのは当然である。

 人が集まれば、社会的距離を取るのが難しくなり、感染リスクが高まる。人が集まると思われる場所をいくつか選定、外出制限が実施される以前の状態を基準にし、以後の状況を比較する。外出制限策の実施状況をこれによって把握することができる。Googleの「COVID-19コミュニティモビリティレポート」が代表例だ。

 新型コロナウイルスは軽症ないし無症状の自覚なき感染者と濃厚接触しても感染する可能性がある。感染のルートを明らかにしたり、そうした状況にあった人に通知して検査を促したりするために、近距離無線通信のBluetoothの技術が利用される。これにはスマホへの特定アプリのインストールが不可欠である。これがミクロレベルの利用だ。Liza Lin & Chong Koh Pingによる『WSJ』2020 年 4 月 23 日 8時5分更新「コロナ追跡アプリ普及せず、シンガポールの誤算」などがこうした技術を紹介している。

 そのアプリを入れたスマホのユーザー同士が濃厚接触距離以内ですれ違うと、Bluetoothを通じてIDが相互交換され、履歴として一定期間記録される。あるユーザーに感染が判明すると、履歴から発見した濃厚接触者にこの事実を通知、検査を促す。接触者が検査を受けることで、さらなる感染を抑制できる可能性がある。

 ただ、これが効果的に機能するためには、できる限り多くのスマホユーザーにアプリをインストールしてもらうことが不可欠だ。濃厚接触をしても、その人がスマホにアプリを入れていなければ、履歴に残らない。可能性のある人が見逃され、さらなる感染につながりかねない。

 アプリのインストールにはそれに関連する政府や企業への信頼が必須である。個人情報が目的外に利用されないか、もしくは漏洩しないかなどの不信があっては、いかに新型コロナウイルスが怖くても、利用を見送る。また、感染を明らかにした際の差別の危険性もある。日本ではすでに悪質な差別事件が起きている。社会への信頼も普及には不可欠だ。

 世界的に経済再開を中央・地方政府が進めようとしている。しかし、それには感染の拡大の懸念がある。そこでコンタクトトレース技術が期待される。活動を再開して、感染が起きたら、このシステムを利用して迅速に対応すれば拡大を抑制できると政府は考えている。感染を抑えつつ、経済も活動させるには、これが欠かせないというわけだ。

 しかし、こうしたデジタル技術は感染拡大抑制には信頼が不可欠だと物語る。政府や企業が普段から信頼性を市民との間で構築してきたのかがそこに現れている。そもそも陽性になった際、政府や企業が休業補償を用意していなくては、検査を促されても避ける可能性がある。加えて、発覚した際の世間の差別も怖い。信頼がなければ、せっかくの技術を生かせない。政府や企業、社会に信頼がないと、感染拡大につながってしまうだろう。ウイルスには人格などない。だが、その感染拡大防止には信頼が必要である。今回のパンデミックには不信の禍もある。

 夕食は、親子丼、なめこの味噌汁、キャベツの浅漬け、野菜サラダ、食後は緑茶と干し柿。強烈な雷が鳴り響く。屋内ウォーキングは10080歩。都内の新規陽性者数は38人、死者数は5人。都の陽性者は4日連続100人を下回る。3日91人、4日87人、5日58人、6日38人だが、検査実施人数は3日399人、4日219人、5日は109人。検査結果判明までタイムラグがあるため、日々の検査人数と感染者数は対応していない。また医療機関の検査数も集計されていない。

参照文献
Liza Lin & Chong Koh Ping、「コロナ追跡アプリ普及せず、シンガポールの誤算」、 『WSJ』、2020 年 4 月 23 日8時05分更新
https://jp.wsj.com/articles/SB11705746827708923692704586340283375042232


2020年5月7日
 新型コロナウイルス感染症は極めて広範囲に影響が広がり、日々のニュースに驚かされ、自身の認識の狭さを自覚させられる。今回のパンデミックは反省的思考をもたらす。

 新型コロナウイルス禍は人間の行動を変えている。しかし、それにとどまらない。動物の中にも人間の行動に依存しているものがいる。好例がねずみである。

 『NHK』は、2020年5月7日 14時12分更新「“ねずみ”が日中住宅街に 飲食店の営業自粛などで行動変化?」において、ねずみの行動変化について次のように伝えている。

緊急事態宣言が出された先月以降、SNSでは住宅街で日中にねずみを目撃したという映像などが投稿されていて、専門家は飲食店の営業自粛や外出自粛でねずみの行動が変化している可能性があるとしています。
このうちツイッターに投稿された映像には、ねずみが日中に草を食べている様子が写っています。
撮影した40代の男性によりますと、ねずみを目撃したのは先月19日の午前11時ごろ、東京 練馬区の住宅街で、夢中で植え込みの草を食べていて撮影のために近寄っても逃げようとしなかったということです。
男性は「繁華街でねずみを見かけたことはあるが、このあたりで見たことはないので珍しいなと思った。人間が活動しなくなるとネズミはこんなに活発に動くようになるんだなと感じた」と話していました。
ほかにも、先月26日の午後5時ごろに東京 町田市の駅の近くの交差点で撮影したとされるねずみや、今月3日、夕方に群馬県の住宅街の歩道や富山市の用水路にいたというねずみの写真などが投稿されています。
駆除を行う全国の業者でつくる「ねずみ駆除協議会」の委員長、谷川力さんは「飲食店の営業自粛で繁華街で生ゴミが少なくなるなか、餌を求めて住宅街に移動していることが考えられる。ねずみが感染症を媒介するおそれもあるので、対策を考えなければいけない」と話していました。

繁華街でごみをあさる姿 ねずみの行動調査
ねずみの行動の変化について専門家は都心の繁華街で調査を始めています。
今月1日、駆除業者でつくる「ねずみ駆除協議会」と、ねずみの行動を研究をしている東京大学の清川泰志准教授は都内の繁華街を歩き、ねずみの動きを観察しました。
清川准教授などによりますと、ねずみは夜行性で、通常、暗くなってから動きが活発になるということですが、この日の調査では午後5時半からの30分間だけで道に出てきたりごみをあさったりしているねずみ、少なくとも5匹を確認しました。
清川准教授は「ふだん食べないようなものを食べて、ふだん見ないような時間に動いているので、おなかがすいて困っているのではないか。餌を求めてねずみが移動しているのか、あるいは飢えて死んでいるのかを調べていきたい」と話していました。
ねずみ駆除協議会と清川准教授は、今後、全国の駆除業者にアンケートを行うとともに、海外の研究者などと協力してねずみの行動の変化を調べることにしています。

ねずみの行動変化 休業の大型商業施設でも
ねずみの行動の変化は臨時休業している大型商業施設でも見られるということです。
主に首都圏でねずみの駆除を行っている会社によりますと、臨時休業中に駆除を進めるため都内のある大型商業施設の中の42店舗に捕獲装置を8日間置いたところ、合わせて61匹の「クマネズミ」が捕獲されたということです。
臨時休業する前の3月は夜間に1度、6時間ほどの駆除で6匹捕獲したということですが、人が出入りしないことでねずみの警戒心が緩んで行動が活発になっている可能性もあるとこの会社では見ています。
また別の商業施設では、建物の中にはあまり入ってこないとされる「ドブネズミ」も捕獲されているということです。
駆除会社の横山光紀技術本部長は「餌を求めてあらゆるところをはいかいし始めていると思う。一般の家庭に入り込まないように今のうちにできるだけ多く捕獲しておきたい」と話していました。

野生動物の行動変化 海外でも都市部に出没
野生動物の行動の変化は海外でも確認されていて、食べ物などを求めてふだんは近寄ることのない都市部などに出没しています。
このうちイギリスではロンドンから20キロ余り離れた近郊にシカの群れが現れ、住宅地の芝生に座り込んでいたり、中東のイスラエルでは町にイノシシの群れが現れ、ゴミ箱や花壇を荒らしたりしている姿が確認されています。
また南米のチリでは、ことし3月に外出制限が出されて以降、人の姿が少なくなった首都サンティアゴで山間部に生息するピューマが少なくとも4頭姿を現し、そのうち2頭が住宅に入りこんだところを捕獲されました。
捕獲した地元当局は「非常に珍しい現象だ。外出制限で人の姿のない町へ食べ物を探しに来て迷ったのだろう」と話していました。
世界でも日本と同様、野生動物が食べ物を求めて人間の生活圏に入り込み、ゴミ箱や農作物を荒らす被害が出るなど問題となっています。
今回の外出制限では長期にわたって人間の生活圏で人が姿を見せず、駆除も十分に行えない状況となっていることから、新型コロナウイルスの感染の拡大が収まり、外出制限が解除された後も野生動物は出没を繰り返す可能性があるとして、人間と野生動物の共存が今後より難しくなることが懸念されています。

専門家「野生動物 外出制限で町中の目撃回数が増加」
長年、ヨーロッパ各地の野生動物の生態を研究し、生息範囲などのモニタリングを行っているイタリアのサッサリ大学のマルコ・アポロニオ教授は、新型コロナウイルスの感染が拡大し、外出が制限されるようになってから野生動物が町中で目撃されるケースが増えていると指摘しています。
新型コロナウイルスの影響について、アポロニオ教授は「外出制限で人々の外出が禁止され、町中に人がいなくなり、動物にとって邪魔するものが何もない。これは野生動物にすぐに認識され、そして、ふるまいを順応させている。明らかに、町中で目撃される回数が増えている」と指摘しています。
今後、外出制限が解除されて町に人が戻ってきた場合の野生動物の行動について、アポロニオ教授は「動物は一度学習してしまうと、気にせず町中に出てくるようになり、違う行動をとるようしむけるのは難しい。新型コロナウイルスが人と野生動物の共存の難しさを顕在化させている」と話し、外出制限の期間中に町で簡単に食べ物が手に入ると学習してしまうと、その後も継続して出没する可能性があるとの見方を示しました。

 パンデミックは人間の行動に変化を促す。それは相互性によって他の生物にも影響を及ぼす。一定期間続けば、その新たな行動も習慣化sる。かりに人間の行動が元に戻っても、動物のそれは改まらず、摩擦が生じてしまう。禍が改善した時に備え、動物と棲み分けするために、人間がかつての環境に近づけるように工夫しなければならない。

 三鷹の美容院で散髪するために、巣ごもりをに入って以来、初めて中央線に乗る。中央線の車内は、各座席に2、3人程度で空いている。ほとんどがマスク姿だ。

 三鷹駅界隈は以前と同じ風景だ。ただ、荻窪と同じように、マスク姿の人が目につく。
 晴れてくれて、助かる。いつものように、南口から10分ほど歩く。2車線の自動車道に面したマンションの2階に階段で上る。いつも道理の急階段でで上半身がつきそうだ。店のドアを開けると、黒いマスクをした姿で迎えてくれる。「いらっしゃいませ!ありがとうございます!助かります!」

 店に入ると、すぐ消毒液で手洗いをする。夫人に上着とサングラスを預け、彼に促されて椅子に座る。店内にはこの3人だけだ。

 美容師負債とは独立前からのつき合いだ。数年前から今の店を夫婦で続けている。東京都の要請に応じて連休の終わりまで店を閉め、5月7日から営業再開している。

 窓を開けて換気をよくしている。ただ、道路に面しているので、自動車の音が少々うるさい。また、バスやトラックなど大型所領が通過すると、少々揺れる。

 天パなので、カットだけでもいつも1時間半以上かかる。だから、2人で様々な話題に触れながら会話をする。この美容師との話はいつも楽しい。ヘアースタイルの流行からカラーリング、メークと神の関係など美容師のリテラシーを学べる。今日はマスクのゴムを十文字にして耳にかけるとヘアースタイルの邪魔になりにくいと教えてもらう。

 志村けんが亡くなってからパタッと客足が遠のいたという。予約が入っても、感染者数100人越えなど増加のニュースがあると、キャンセルの電話がかかってくる。営業時間の短縮や休業日の追加、バイトの休職などできる限りの手を打って赤字を増やさないように努めている。後ろ髪を切りながら、彼がこうつぶやく。「私、この1カ月でめっきり紙が白くなりましたよ」。

Almost cut my hair
It happened just the other day
It was gettin' kinda long
I could-a said, it was in my way
But I didn't and I wonder why
I feel like letting my freak flag fly
And I feel like I owe it to someone

Must be because I had the flu for Christmas
And I'm not feelin' up to par
It increases my paranoia
Like lookin' at my mirror and seein' a police car
But I'm not givin' in an inch to fear
Cause I promised myself this year
I feel like I owe it to someone

When I finally get myself together
I'm gonna get down in that sunny southern weather
And I find a place inside to laugh
Separate the wheat from the chaff
I feel like I owe it to someone
(Crosby, Stills, Nash & Young “Almost Cut My Hair”)

 夕食はタイ風のチキンとピーマンの炒め物、ひき肉と豆腐のタイ風スープ、野菜サラダ、小豆のチリコンカン、食後は緑茶、干し柿。ウォーキングは10131歩。都内の新規陽性者数は23人。ただ、PCR検査数は6日が65件。医療機関が保険適用で実施した検査が速報値に含まれていない。

参照文献
「“ねずみ”が日中住宅街に 飲食店の営業自粛などで行動変化?」、『NHK』、2020年5月7日 14時12分更新
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200507/k10012420271000.html


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