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巣ごもり2DK─2020年4月4日~4月6日

2020年4月4日
 咳は日に日に軽くなっている。両親の結婚記念日なので、お祝いメールを贈る。今年で、ナント55年!

 今回のパンデミック対策において過去のそれと異なることは、携帯端末から集まったビッグデータが利活用されていることである。Google社は、2020年4月3日、「COVIT-19コミュニティモビリティレポート(Google COVID-19 Community Mobility Reports)」を発表する。同社は「感染症対策の専門家を支援。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)と戦う上で役立つデータ」においてサービス提供について次のように述べている。

世界中で新型コロナウイルス感染症のパンデミック対策が進む中、感染拡大を抑えるために日本では「3つの密を避ける」や、欧米では「社会的距離を取る」といった対策がより一層重要になっています。ご存知の通り、Google マップでは匿名化して集約したデータを用い、特定の種類の場所や店舗の混雑状況や交通状況を表示しています。Google では、こうした匿名化し集約したデータは、新型コロナウイルス感染症対策を担う専門家が様々な判断を下す上で、一助となるのではないかと考えています。
そこで本日より、COVID-19 Community Mobility Reports (COVID-19 コミュニティ モビリティ レポート) の早期公開を開始します(英語での提供)。これは感染症流行のピークを遅らせ引き下げることを目的とした、例えば在宅勤務の推奨、外出自粛、欧米等ですでに発令されている自宅待機令といった対策が与えた変化に関するインサイトを提供することを目的としています。もちろん、本レポートは、Google の厳格なプライバシー規約とポリシーを順守しており、その上で役立つ情報となることを目指しています。
同レポートは、集計のうえ匿名化したデータを使用し、娯楽関連施設(Retail & recreation)、食料品店やドラッグストア(Grocery & pharmacy)、公園(Parks)、公共交通機関(Transit stations)、職場(Workplaces)、住宅(Residential)といった大分類を用い、これらの場所の行動の傾向を時系列のグラフで表示します。数週間単位の傾向とあわせて、48 〜 72 時間前の最新情報も掲載します。訪問の増減率は表示しますが、訪問の絶対数は含まれません。またプライバシー保護の観点から、個人の位置や連絡先、移動など個人を特定できる情報は一切含まれません。
本レポートは、日本を含む 131 カ国が対象で、情報の緊急性を鑑み国レベルだけでなく可能な範囲で地域ごと(日本においては県単位)の情報を掲載します。新型コロナウイルス感染症拡大対策に取り組む専門家の皆さんにとって役立つ内容となるように、今後、数週間をかけ、その他の国や地域を追加していく予定です。

 このレポートを早速確認してみる。興味深いことに、「自粛」の東京と閾値に達して「ロックダウン」のニューヨークの間に人の移動の差が大きくない。ただ、公共交通機関と職場の項目で東京がニューヨークより移動が大きい。小池百合子東京都知事による「不要不急の外出自粛」要請が東京では想像以上に守られている。交通と職場の状況を改善するには、知事のアナウンスメントの修正や自粛のためのインセンティブ政策が必要だろう。

東京 ニューヨーク
娯楽関連施設(Retail & recreation) -63% -62%
公共交通機関(Transit stations) -59% -68%
食料品店やドラッグストア(Grocery & pharmacy) -32% -32%
職場(Workplaces) -27% -46%
公園(Parks) -66% -47%
住宅(Residential) 14% 16%

 夕食は野菜カレー、ポタージュ、野菜サラダ、食後はコーヒー、干し柿。日比谷シャンテ地下2Fにあるお気に入りの「ひつじや」のダイコンの野菜カレーを意識して作ったが、あの味には及ばない。屋内ウォーキングは10150歩。都内の新規陽性者数は118人。

参照文献
「COVID-19コミュニティモビリティレポート」、『Google』、2020年4月4日更新
https://www.google.com/covid19/mobility/


2020年4月5日
 朝はいつも咳が出るが、今日は特にひどい。しかし、それでも9時過ぎには収まる。

 新型コロナウイルスは誰にも感染する可能性がある。だが、そのリスクには政治的・経済的・社会的不平等による偏りがある。それは、改善しなければならないのに、他人事と目をつぶってきた諸問題を増幅して顕在化させる。

 吉田は平常よく思い出すある統計の数字があった。それは肺結核で死んだ人間の百分率で、その統計によると肺結核で死んだ人間百人についてそのうちの九十人以上は極貧者、上流階級の人間はそのうちの一人にはまだ足りないという統計であった。勿論これは単に「肺結核によって死んだ人間」の統計で肺結核に対する極貧者の死亡率や上流階級の者の死亡率というようなものを意味していないので、また極貧者と言ったり上流階級と言ったりしているのも、それがどのくらいの程度までを指しているのかはわからないのであるが、しかしそれは吉田に次のようなことを想像せしめるには充分であった。
 つまりそれは、今非常に多くの肺結核患者が死に急ぎつつある。そしてそのなかで人間の望み得る最も行き届いた手当をうけている人間は百人に一人もないくらいで、そのうちの九十何人かはほとんど薬らしい薬ものまずに死に急いでいるということであった。
 吉田はこれまでこの統計からは単にそういうようなことを抽象して、それを自分の経験したそういうことにあてはめて考えていたのであるが、荒物屋の娘の死んだことを考え、また自分のこの何週間かの間うけた苦しみを考えるとき、漠然とまたこういうことを考えないではいられなかった。それはその統計のなかの九十何人という人間を考えてみれば、そのなかには女もあれば男もあり子供もあれば年寄としよりもいるにちがいない。そして自分の不如意や病気の苦しみに力強く堪えてゆくことのできる人間もあれば、そのいずれにも堪えることのできない人間もずいぶん多いにちがいない。しかし病気というものは決して学校の行軍のように弱いそれに堪えることのできない人間をその行軍から除外してくれるものではなく、最後の死のゴールへ行くまではどんな豪傑でも弱虫でもみんな同列にならばして嫌応なしに引き摺ってゆく――ということであった。
(梶井基次郎『のんきな患者』)

 これはパンデミックではなく、肺結核に関する小説である。けれども、今回の新型コロナウイルス感染症にも通じる。確かに、感染リスクは経済的不平等が反映する。しかし、未知の部分が多いこのウイルスに発症して死に至る時、そうした違いはない。だから、他人事として捉えることは楽観的すぎる。

 夕食は青椒肉絲にジャガイモと豆腐の中華スープ、野菜サラダ、キュウリとちくわの和え物、食後はコーヒー、干し柿。屋内ウォーキングは10669歩。都内の新規陽性者数は143人。

参照文献
梶井基次郎、『檸檬・ある心の風景 他二十編』、旺文社文庫、1972年

2020年4月6日
 咳はぶり返した感じだ。けれども、やはり9時にはウソのように亡くなる。

 パンデミックは「インフォデミック(Infodemic)」を引き起こしている。それはフェイクニュースが幅を利かせるポスト真実時代ならではの現象でもある。そうした誤情報・偽情報は人々に深刻な影響を及ぼしたり、国際世論を操作しようとしたりし、当局や民間機関がその監視・対処に追われている。刑罰を科した政府もある。台湾ではシェアしただけで処罰されることもあり、3月末までに59人が摘発されている。刑罰は、最高3年の懲役または300万台湾ドル(約1080万円)の罰金である。また、フェイクニュースのファクトチェックを公表しているメディアも少なくない。

 しかし、インフォデミックはフェイクニュースだけが起すものではない。渡部加奈子記者は『日本経済新聞』2020年4月6日7時00分更新「コロナで注意『インフォデミック』とは」においてそうして減少に就いて次のように述べている。  

2020年4月6日の日本経済新聞朝刊1面に「善意の投稿 人類翻弄」というニュースがありました。新型コロナウイルスに関する情報は拡散しやすく、「インフォデミック」の恐れがあるといいます。「インフォデミック」とはどのような状態を指すのでしょうか。
インフォデミックとは、ネットで噂やデマも含めて大量の情報が氾濫し、現実社会に影響を及ぼす現象のことです。疫病流行の際には出所不明の情報が広がりやすく、世界保健機関(WHO)も科学的に根拠のない情報を信じないよう、公式サイトで注意を呼びかけています。
SNS(交流サイト)が浸透したことで、過去より情報が拡散しやすくなっています。1日に受け取る情報量などを元に算出した「情報拡散力」は、2003年の重症急性呼吸器症候群(SARS)流行時と比べて68倍になりました。2月末、トイレットペーパーの買い占めが起きたのもSNSのデマ投稿が発端でした。
怖いのは、デマ投稿よりもデマを否定した情報の方が拡散し、結果的にトイレットペーパーの買い占めを招いた可能性がある、という指摘です。デマを否定した投稿者は「正しい情報を広めたい」というつもりでも、投稿を見た人が品不足を連想して行動を起こす可能性もあります。SNSに投稿する際は、慎重な情報発信を心がけたいものです。

 インフォデミックの危険性は「デマ投稿よりもデマを否定した情報の方が拡散」、結果的にそれを実現してしまうことだ。トイレットペーパーがなくなるというデマを否定する投稿を目にしたとしよう。しかし、品不足を否定する投稿があるということは、それを事実と信じて行動する人が多いのではないかと予想し、自身も店に向かうことがあり得る。故人が正しいことをすれば、社会全体として必ずしもそうなるわけではない。アダム・スミスが「神の見えざる手」と言ったように、相互性があるからだ。

 夕食はチリコンカンのパスタに野菜サラダ、ポタージュ、食後はコーヒー。ウォーキングは10190歩。都内の新規陽性者数は83人。

参照文献
渡部加奈子、「コロナで注意『インフォデミック』とは」、『日本経済新聞』、2020年4月6日7時00分更新
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO57688620V00C20A4I10000/


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