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「ケアしケアされ、生きていく」「不完全な司書」を読んで、自分の職場を考える

はじめに

『ケアしケアされ、生きていく(竹端寛著・筑摩書房)』『不完全な司書(青木海青子著・晶文社)』を同時に読んでみました。私はIT企業で11年間働いており、ケアという言葉で連想する福祉や介護の仕事とは無縁の職場ですが、『私が大好きな職場をもっとよくするためには』という方面で本の内容を照らし合わせたくなったので、ここに記します。

きっかけはオムラヂ

2冊とも2023年秋・冬に出版された本ですが、私が初めて竹端寛さんを知るきっかけとなったのは、とても好きでよく掃除等の家事をしながら聞いている、インターネットラジオ番組『オムライスラヂオ』の『生きるためのファンタジーの会』というコーナーでした。私見ですが、普段は青木真兵さんがラジオ内でリードして話しているのに、このコーナーの時は青木海青子さんのほうが生き生きと話しているのがなぜか好きで、「きっと竹端寛さんが海青子さんの話を引き出しているのではないか」と推測しました。それで、竹端さんのことを知りたくなり『ケアしケアされ、生きていく』を買って読んでみることにしました。海青子さんのファンなので『不完全な司書』は以前から購入していました。


ケアすること/されることは人間である以上避けられない

いきなり核心なのですが、両者の本に書かれていることは、私としては『ケアすること/されることは人間である以上避けられない』という言葉に集約されるのではないか、と考えました。以下、「ケアしケアされ、生きていく」の冒頭より引用します。

ケアって、一見すると「弱者のための特別な営み」のように思う人も多いでしょう。でも、実はあなたの日常がなめらかに、つつがなく廻っているのは、普段意識していない、気づかないところで、ケアがうまく埋め込まれているのです。

ケアしケアされ、生きていく p.9

日常生活と仕事は切り離されるものでは決してなく、今日私が集中して仕事に従事できたのも、休みの日の自分が平日の食料を買い込み、部屋の掃除を行い、洗濯を済ませていたからです。また、社内においては仕事で使用するサーバやネットワークがスムーズに利用できるのはインフラ担当者が整備してくれているからであり、お客様や取引先と契約を結ぶための基本的な取り決めを法務担当者が整備してくれており、様々な回線を利用する際はセキュリティに問題がないか、就労環境は衛生的に適切か、などなど、自分の仕事は様々な前提の上に成り立っています。
そんな自分の仕事もまた、ほかの人から見れば、その人が仕事を始める上での前提なのです。これが「ケア」であると私は思います。

身体の有限性を認める

時々、自分の体調を崩してまで働き、お客様や会社の要望に応える、使命感が強く、優秀で、皆から頼りにされてしまう方が見受けられます。きっとどの企業にもいらっしゃるのではないでしょうか。
その方に頼ってしまうことで、一時的な企業の収益は見込めるかもしれませんが、決して持続可能ではないように思います。人間の身体は有限ですので、基本的に終わりのない企業活動に全力で一人が対応するのは不可能だと思います。持続可能な経営のためにも、一人ひとりが自分と周りをケアする余裕を持っている状態でいることが重要ではないかと考えます。

職場におけるケアとは、自分の範囲外に気付けるかどうか

自分や他者をケアする余裕が無ければ、遅かれ早かれいつか破綻するのです。仕事中、余裕がないときに考えている図式があります。
下図のように、自分に余裕がゼロのときは「誰が見ても自分の範囲」だと自分と他者が認識している部分をやっとの思いで実施します。
日常生活が回せていない等、余裕がマイナスのときは自分の範囲ですらこなす・気づくことができません。仕事どころではないのです。
余裕ありのときは、やるかやらないかは別として、自分の範囲以外のことも気が付くといった経験をよくしました。この時に大切なのが、全部やるのではなく、やるかやらないかの判断を入れることです。やらないほうが全体として良い場合もあるので、まずは皆で把握をしておき、改めてやる/やらないを議論することが大切だと思います。
「気づいたとしても共有なんてしたら、即自分の仕事になってしまう」といったご意見があるかもしれません。そのお話は心理的安全性にかかわるトピックにて書きたいと思います。

ケアする余裕があると、見て見ぬフリが減る

人が自分の範囲を狭めたり、範囲外を見れなくなってしまうことは、ケアする余裕・ともすればケアを受ける余裕を無くすことだと考えます。ケアを受けるにも余裕が必要で、例えば冒頭の「社内インフラを整備してくれる人がいるから自分の仕事ができる」といったことに気づけなくなったり、「ちょっと社内インフラに障害が発生したらこの世の終わりのように感じて全てを憎んでしまったり」です。自分を大切にすることで周りのことが見えるようになり、なんのために働くのか・誰のために働くのかを考えることが出来るのです。

おわりに

あまり本の感想になっていないですが、読んで下さりありがとうございました。平日はIT企業の協業推進と、同企業の茶道部(毎月第三木夜)を、土日祝は兵庫県西宮市の自宅にて、友人知人に対して、本と生活のある個室サウナ『SaunaKanit』を運営しています。是非お気軽にお友達になってくださいね。




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