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酔いどれ雑記 159 魅惑の荒廃園芸の世界


荒廃園芸。なんと素敵な響きでしょうか。以前とあるSNSにそんな名前のコミュニティがあったのですが、荒廃園芸とはただのガーデニングではなく、わざとシャビーな感じにして「お洒落でしょ?」というようなものでも当然なく「かつては人が手入れをし、楽しんでいたと思われる植物の夢の跡」です。なので荒廃園芸とは主が放置した結果、自然が自由を謳歌しているものの、確実にそこには文明があったことを示唆している素晴らしい光景です。

植えた時にはきれいに並べたであろうプランターや鉢は割れたり苔生し、本来植えたものじゃない植物がどこからか紛れ込んで好き放題生え、隅に申し訳程度に園芸種の花が咲いている。雑草のごとく殖えまくった多肉植物も荒廃園芸にはよく見られます。そして小人やら動物やらの陶器の置物がぼうぼうの草や積まれた鉢の間に置かれていたりするのも味わい深いです。そのような人工物があると哀愁度が上がります。

あ、「単に蔦などが絡まった建物」は趣があっても荒廃園芸とは呼びません。たとえばこちらは石造りの教会に様々な植物が覆い、これ以上ないくらいの風情がありますが、「荒廃園芸」ではないのがお分かりいただけますでしょうか。なおこちらはブルガリアにある世界遺産、ボヤナ教会です。内部に描かれた古いフレスコ画が見事なのですが撮影は禁止なので写真はありません。

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こちらはわたくしが狭いベランダで楽しんでいる園芸ですがこれも荒廃園芸ではありません(ただ、今は荒廃園芸化しつつあります......あまりにもひどいので写真は撮りません......って、今回のテーマに相応しいから本来それを載せるべきなのでしょうが)。

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こちらはこぼれた土の上に好きに繁殖しまくった多肉の花です。屋根までせり出さんばかりです。こういう、どんな天候下でも丈夫でたくましい品種は何の手入れも要りませんから荒廃園芸ではよく見られる光景です。

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外を歩いていると、見事な荒廃園芸を見る機会はかなりあるのですが、なんせよそのお宅の写真を勝手に撮ることは出来ませんし、撮らせてくださいとお願いするのもためらいます。不審者だと思われないかと......。普通(?)に手入れされた庭や鉢植えの写真を撮らせてくれと頼むのも怪しいと思われかねないこのご時世なのに「なぜこやつはこんな写真が撮りたいんだろうか、怪しさ満点」って思われるの必至ですよね。なので荒廃園芸を見かけたときには眺めるだけにとどめておきますが、素敵すぎて感嘆の声を上げそうになることもしばしば。

荒廃園芸、それはかつて愛でられた植物たちの栄華の名残で、生ける墓場で、確実にそこには小さな幸せと文明があったことを感じさせる素晴らしい空間なのだ!