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私がゴミをあさるわけー強迫性障害のこと<5>


小学生時代に発症し、成人して一人暮らしをしてからも私を苦しめた強迫性障害ですが、診断が下りたのは28歳の頃、2軒目のメンタルクリニックにおいてでした。先日投稿した『別れのワインーはじめて精神科に行った時の話』に、初めて精神科へ行ったのは22歳の時だったと書きましたが、それから6年間はメンタルクリニックの類にお世話になりませんでした。20代半ばから29歳くらいまでは波乱万丈の私の人生の中では比較的安定していて、年中海外旅行に行ったり、もう一回大学生をやり直したりとアクティブでした。まぁ普通の人から見たら病んでいた状態だったかも知れませんが、特に大きな問題もなく「リア充」だったと言っても差し支えない時期でした。28歳の時に2軒目のメンクリに行った経緯は、強迫性障害の話とかなりずれてしまうので今は書きませんが(クリニックに行った目的は強迫性障害が主訴ではありませんでしたし)、とにかくもそのクリニックで強迫性障害だという診断が下りました。クリニックに行くかなり前から強迫性障害という疾患についての知識は持っており、自分は間違いなくその障害だろうと思っていましたが、病名がついたことで安心したり、逆にショックを受けるということもありませんでしたーーですが、それらしき症状があるけれども自分が病気や障害だとは全く思ってもいないような人に「それってもしかして......」って話すことが良いことなのかそうでないのか分からない......というのが今回の話です。強迫性障害のそのものの話からはちょっとずれてしまうのですが、よろしければお付き合いください。

もうかなり前の話になりますが、友人と喫茶店でお喋りをしていたときのことです(友人は私が病んでいるとか、そういったことは知りません。家族と不仲だという話はしていましたが具体的なことは話していません)。彼女と家で暖房なに使ってる?という話になり、私は本当にサラッと「私の部屋はエアコンだよ。私、何度もものを確認しちゃうクセみたいのがあって、石油ストーブとか電気ストーブは怖くて使えないんだよね~、消し忘れたかどうか心配になって何度も確認しちゃうからさ。強迫性障害っていう、一種の病気みたいなもんなんだけど、なかなか治んないんだなぁ~こりゃ」と言ったのです。それを聞いて彼女は「えっ!それ私もやるよ?ストーブ消したかなとか、玄関の鍵とかも何度も見るし、いつも外に出るときは写メ撮ってるよ、ほら」と携帯を出してストーブや窓の錠の写真を見せてきたので私はびっくりしてしまいました。強迫性障害という疾病が世間一般ではどのくらいの認知度なのか、またどのくらい患者数がいるのかは知る由もありませんが、友人もまさかの強迫性障害疑惑......けれどもそのことを特に困ってる様子はなさそうだったので私は困惑してしまいました。「ねぇ、そのなんとか障害っていうのは病気なの!?私もそれ?」と訊かれ、なんて答えていいか咄嗟に思いつきませんでした。どうすればいいだろうと考えながら彼女から慎重に少し話を聞いてみると強迫性障害っぽさが濃厚だなと思いましたが、私は医者ではないし断定できない......というのもそうだけれど、今まで自分の行動が病的なものだとは知らなかった人にたとえ遠回しにでも「そうかも知れないね」などと言うのはかなり躊躇われます。

嘘か本当か知りませんが、「肩こり」という言葉を知らない人に肩こりがどんな症状かと説明したらその人が肩こりを感じるようになってしまったとか、「寒い」という意味の語彙を持たない、極寒の地に住む人々に「寒い」というのはどういうことかと話したら寒さを感じるようになったとかいう話のように、相手にとってはありがたくないかも知れない知識を迂闊に話すのはまずい気がして、ちょっと考えてから私は「写真撮るの面倒くさくない?」と彼女に訊きました。「それ、辛くない?大変じゃない?」というような訊き方をするのは、彼女は少し心配性な性格だし、好ましくないだろうなぁと判断したのです。彼女は「全~然。そんなこと思ったことないよ~」と(正直、ありがたいことに)答えたので私はホッとして「そーか、まぁ防犯大事だよね~、うち一軒家だし窓も多くてさぁ......めんどっちいよねぇ、ホント」となんとかごまかしましたーーお茶を濁したのが最良だったのかは分かりません。けれど、別段困っていないという人に「あなた、それ病気かもよ」と言うのもどうかと私は思うのです。向こうから「こういうことをしちゃうんだけど、なんか病気なのかなぁ?」とか相談されたならともかく。

何も強迫性障害に関わらず、他の病気や問題でも、こういう場面に遭遇すると私は悩んでしまいます。たとえば「うちの親、すごい干渉してくるんだよね、いちいち誰とどこ行くの、その人とはどこで知り合ったのとかしつこく聞いてたり、変なところ行っちゃダメよって言われたり。出かけないで家にいなさいって言われてるみたいできついんだ......うちの親って毒親ってやつかな?」って訊かれたら「うん......毒親っぽいなぁ......」と答えると思うけれど「うちの親ってうるさいんだよね~、これこれこんな風に干渉してきてさぁ。まぁ親も心配してくれてるんだろうし、しょうがないと思うんだよね、ここまで育ててくれたんだし」という言い方をされたら私は「あっ、それ毒親/虐待......」と言っていいのかちょっと悩んでしまいます。親をそういう風に言う人はおそらく毒親という言葉もよくは知らないでしょうから、もし私が説明して相手が「自分の親は毒親ってやつかも知れない!?どうしよう、どうしたら?」と悩み始めてしまったらと思うと、迂闊に言葉に出せないなと思ってしまうのです。機能不全家族育ちの方の中には自分の親が毒親だと気づかなかった方が良かったという人も少数ながらきっといるのではないかと......。何かをきっかけに家や親に違和感を覚えて、自分でネットや本などから情報を得た結果「うちの親は毒親で、私はアダルトチルドレンかも」と気付いたとしても、今まで信じていたものが揺らぐショックが多少なりともあると思うのです。それなのに人からひょっとしたら余計で有り難くないことを教えられるのは果たしていいことなのかと考えてしまいます。あからさまな虐待、たとえば暴力、暴言、自殺教唆をされているにもかかわらず親をかばっているならば「ちょっと待った!」と言えるのですが、何も毒親というのは露骨な虐待をする人とは限りませんよね。毒親の大半は、分かりにくいモラハラをし、そういう問題に明るくない他人に内容を話したら「親子間ならよくあること」などと言われかねないようなことを子供に無自覚にしている人ではないでしょうか。暴力や暴言、ネグレクトなど、広く一般に虐待だと認識されていることと、一見虐待には見えないモラハラとどっちがひどいかなど比べようがありませんが、その人がずっと蓋をしていたものに触れたり開けてしまう恐れがあると知りつつ、自分の「意見」を言うことには非常に抵抗があります。その後のことに責任を取れないのに......。

たまたま、私の友人は強迫性障害についてそれ以上つっ込んで聞いてくることはなかったのでその話はそこで終了でしたが(その後、会っていないので今はもしかしたら「闘病中」かもしれませんが......)、このような話になって、こちらの主観ではYes、けれど本人に言ってよいものかと悩んでしまうことってありませんか?強迫性障害、私は何十年も闘病中......というか、一生完治しないと思っていますので諦めてお付き合いしてあげているといった感じです。投薬治療はしていますが、効果のほどは???と言わざるを得ません(投薬で効果のある方もいるのでしょうが)。そして<4>で書いたように「比較的平穏な日々を送っている時ほど強迫症状が出る」傾向にあるみたいですのでもうなんだかわけが分かりません。強迫性障害のみならず、アダルトチルドレンには付き物の悩み、苦しみも一生ものの問題に違いありません。私自身が治癒、解決できていないことなのに、それは病気かも、あなたの親は毒親かも......と、今まで疑ってもいなかった人に告げるのは必ずしも相手のためになるわけではないのではと思った次第です。そしてこれにはーー己の闇というか見方によっては卑怯な部分でもありますが、自分の迂闊な言動が原因(遠因だとしても)で相手が悩んだり傷ついてしまう結果になってしまったら「自分は相手にきっと充分な責任を取れないし、責められたくない、恨まれたくない」といった意識が働いているように感じますーー親やモラハラ加害者に理不尽にやってもいないことを「やっただろう!」と執拗に責められたり、取るに足らないことで罵倒されたりしすぎた経験とは無関係とはとても思えません。自分が細心の注意を払っていても知らずのうちに人や生き物、ものに危害、損害を加えてしまわないか、そしてそのことで一生もののトラウマに陥らないか、或いはとんでもない報復が待っていたり必要以上の責任を負わされる羽目になるのではないかと異常なほど気にしてしまうのです。私はこれを強迫性障害の症状の1つ「加害恐怖」だと考えています(加害恐怖にも色々あるのでしょうけれど、私の場合は「取り返しのつかないへまをしたり、言いがかりをつけられて責められたらどうしよう、それで人生が狂ったらどうしよう、そうなるくらいなら多少不便を感じてもそういう恐れを排除しよう」という回避的な面が強いです......これまた厄介で......という話の続きは次回に譲ります。

お察しかも知れませんが、この話に登場した友人は機能不全家族育ちです。結婚する際、手切れ金を親に渡して二度と関わらないでくれと言ったそうです。そして、彼女の配偶者......DV男疑惑濃厚です。配偶者の言動に関して「これってDVのうちに入るのかな?」と訊かれたことが何度かあるので「うん、DVだと私は思う」と答えたことがあります。彼女は「私は理由があって働けないから、離婚は出来ない」と言っていました。子供はいなかったのですが、詳しい事情は分かりません。もう連絡を何年も取ってない上、彼女の配偶者は転勤族なのでどこにいるのかさえ分かりません......ありとあらゆるハラスメント、いじめ、凶悪犯罪等の元凶が虐待親、毒親、機能不全家族だと思うと本当にやりきれないし、腹が立つし、呪いたくもなります。

続く