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9.11から20年。これからの日常化する戦争を考える。

要約、引用

米国土安全保障省は13日、2001年9月11日の米同時多発攻撃から20年を控え、新型コロナウイルスの感染が拡大する中での新たな攻撃への警戒を呼び掛けた。「国家テロ警報システム(NTAS)」は「外国のテロリスト、有害な外国勢力に触発・刺激された人物」による攻撃への警戒を呼び掛け、過激な思想や暴力行為を広めるためにネットの掲示板が利用されていると指摘。ドナルド・トランプ前大統領は過激派による「さらに複雑で危険な」脅威に直面しているとして、暴力的な過激派は、新型ウイルスの規制措置の緩和に乗じて攻撃を仕掛ける可能性があると警戒を呼び掛けた。同省は、今年は「新型ウイルスの感染拡大に関連したストレス要因」が「暴力行為の増加につながる可能性がある」と警告している。

新しい戦争「ハイブリッド戦争」

日本も他人事ではないだろう。現代では新しい戦争「ハイブリッド戦争」が主流となっており、我々の身近にも存在するようになった。

ハイブリッド戦争とは、有事か平時、対外か対内、地域(テロなど)か国家、国内か国際、友か敵が非常にあいまいな戦争だ。現代では頻繁に使われるようになった手法である。国家の正規軍は政治・経済・情報・外交などの非軍事的手段への攻撃を補助するために用いる。この戦争は過去の戦争と比べると理論は変わっていないが、方法が大きく変わっている。(1)

このハイブリッド戦争研究は9.11同時多発テロなどの「テロとの戦い」で主に米海兵隊で重要視されるようになった。(2)

しかしながら、現代ではウクライナ危機以降、テロリストなどの非国家主体からロシアや中国といった国家主体へと移り、国家が非正規群を支援する形で通常戦力を使用するという事例がみられだした。(3)

つまり、今の時代、中国・ロシアがバックとなった戦争が我々に降りかかる可能性が高まったということだ。

ハイブリッド戦争の攻撃

メディア研究で有名な佐藤卓己によると、「現代の日本では、軍隊由来の感情的な意見『世論(せろん)』と政治由来の理性的な意見『輿論(よろん)』が混合されており、短期的な視点である世論(せろん)が政治の至上主義になりつつある」と危機感を示している(4)。

安全保障にも詳しい経済評論家の上念司も「今回の衆議院総選挙で中国からの介入が行われる危険性がある」(5)と懸念を示している。

元防衛省でサイバーセキュリティに詳しい松原美穂子によると、「選挙陣営スタッフへの攻撃、投票・集計結果の改ざん、偽のSNSアカウントを用いたプロパガンダ発信・拡散という事例が報告されている。彼らの狙いは特定の候補者を勝たせ、負けさせることで政治的利益を得たり、有権者に選挙制度や民主主義体制への信頼を失わせて、国内バランスを崩し、国力にダメージを与えたりすることである。」(6)と語る。

この三つから考えるに、特に中国は、SNSなどで日本国民の感情をあおり、自分の有利な共産主義、共産党支配のために介入してくるということが予想できる。敵はどういう攻撃を仕掛けてくるのかしっかり学んでおく必要があるだろう。

特に、今の日本は安心社会から脱却しつつあり、政府にも疑いの目が向けられている現状である。共感力を持って信頼できる社会の構築も必要であろう(8)。

過激化

また、新型コロナが流行っているこの時期である。世界経済は回復してきているが、日本経済はまだまだだ。

経済評論家の上念司によると、人々は経済が悪くなると、過激化思想に走ると主張している(7)。特に経済が悪化すれば、失業率が増え、治安悪化にも影響する。(11)

「第二の近代」という時代への突入による個人化(9)なども加わり、人々は孤立し、日常生活での不満により物語に酔心し、過激化(テロリスト化)する可能性もある(10)。

典型的な例として、アメリカで起きたホワイトハウス襲撃事件が頭に残っているだろう。

まとめ

現代は戦争が日常化された「ハイブリッド戦争」にあり、国民の日常に戦争が潜んでいる。また、現在は過激化になる要素も含んでおり、日本国は地政学的に戦争の起きやすい地域に指定としても注目されているため、より警戒が必要となる(13)。

我々は何をすればよいのか。

最初にすべきことは、自分の国、会社、リテラシー(知識)がどれくらいなのか現状を知り、中国・ロシアは何をやってきているのか、どういう現状なのかを知ることである。最も注目すべきことは、敵と味方の「世界観」「政策」「大戦略」(資源の配分)である(14)。

そして、感情的になり過ぎないということである。感情心理学者のディラン・エヴァンズによると、感情にも理性が潜伏し、理性にも感情が潜伏しており、感情を頼った方が良い場合もあるが、人生を左右する決断をする場合は理性に頼った方が良いだろう。大切なのは「いかに理性と感情のバランスをとり、どう感情と理性で苦手分野を補い合うか」ということを主張している(12)。

最も大切なことは、「安全保障に対する関心」「人間心理に対する関心」であろう。

(1)『ハイブリッド戦争の時代』第一章第三節 志田淳二郎
(2)『ハイブリッド戦争の時代』第一章第二節 志田淳二郎
(3)『「ハイブリッド戦争」の理論と実践』志田淳二郎
(4)『輿論と世論』佐藤卓己
(5)『日本分断計画』上念司
(6)『サイバーセキュリティ』松原美穂子
(7)『経済で読み解く日本史』上念司 (このメッセージは全編で一貫して主張されている)
(8)『安心社会から信頼社会へ』
(9)『危険社会』ウルリッヒベック
(10)『歪んだ正義』大治朋子
(11)『明解 経済理論入門』高橋洋一
(12)『感情』ディラン・エヴァンズ
(13)『サクッとわかる ビジネス教養 地政学』奥山真司
(14)音声講座『戦略の階層3.0』奥山真司

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