あこがれに似て、恋に似て【掌編小説】
彼女は明るくやさしい。
誰にでも。
こんな地味な私にも。
(もっと私としゃべって。笑顔ももっと。どこにも行かないで。他の人としゃべらないで──)
蜘蛛の糸のような思い。ずっと自分のそばにいてほしいと願う。他の人をすべて排除したいという思い。
これは嫉妬だ。友情ではなく。
自分を恥じた。
都会への大学進学を機に、引っ越しをすることに決めた。
「行かないで」
駅のホームで涙ぐむ彼女。
「またね」
私は電車に乗りこむ。閉まるドアが、二人の間を分けた。
やさしい人。
あなたと自分を壊さない為に、私はさよならをするの。
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こちらはTwitterの 140字小説( https://twitter.com/asakawario/status/1348967312884289542?s=19
) を、追加修正して再掲したものです。
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