【殺人企業~実録・裏社会の人間との闘いの日々~】第二章:起業④始動
第四節:始動
その日はよく晴れた日だった。
不動産へ行くと車が用意されていて、借りる予定の物件まで車で案内された。
久我さんの運営するキャバクラ「ホワイトリリー」の前を通り過ぎ、
ビルに入ると次々と空き店舗を見て回ったが、ホワイトリリーの店舗を知っているだけに正直どれも古いと感じた。
最初に地下の物件を見学した時、
「地下は止めましょう。地下は気が滅入る(汗)」なんて手塚さんが見た目とは違って情けない声を出していた。
(この人は意外とお茶目な所あるんだよね~)
「手塚さんって、霊感あるんですか?」
「少しね。前の店にもいたよ」
「まじっすか!?」
「えっ!?知らなかったの??(笑)」
そんな話をしつつ、2階に移動した。
キャバクラとして使う店舗としては、まぁまぁ普通かなと思いつつ店内を見回す。
(しかし、どの店舗も古い。しかも造りがキャバクラやるにも使いにくそう………)
流石に不動産の人を目の前に言いにくい事があるのは私だけではなかったらしくトイレの入り口の所で瀬名君が私を手招きしていた。
「ん?どうしたの?」
「毛。便器に毛が付いてるんだけど………」
「あぁ…(汗)」
(確かに微妙だなー。だけど、毛とかは掃除すればいいか。)
昔から変な所に目ざとい瀬名君を思わず笑ってしまった。
瀬名君は前のお店の店長だった。
彼は容姿端麗である事から自信家だった。
短気で自分を曲げない所があり、私は現役時代、何度かぶつかった事もあった。
そんな思い出も今となっては懐かしいなと思いつつ、これからは経営陣として一緒に頑張っていこうと思った。
私達は最上階にある店舗に戻った。
古びれたソファーに腰を掛けながら久我さんは私の年収の話を交えつつ不動産担当のお姉さんに熱心に交渉していた。
私はその横で久我さんの交渉の様子を見ながら、
いつか自分も自分の力で交渉出来る様に学んどこうと思い…久我さんをじっと見つめていた。
数日後、私は久我さんと手塚さんと不動産屋にいた。
不動産屋に着いてから私の目の前にあるのは書類の山だった。
社判を作ってなかった私はそれらの書類、一つ一つに自分の住所と名前を書く事に。
「えっ?社判作ってなかったの?俺、前の会社の時、そんなの真っ先にやっていたよ(笑)」
「手塚さん!!そーゆー事は早く言ってくださいよ~」
そんな私の嘆き声を聞いて二人は笑っていた。
「掛かりそうだし、一服しに行く?」と久我さんが促すと二人は外に出て行った。
その後、私はひたすら書類にサインしていった。
「此処まで、上手く運んだね」
「えぇ。後はこれからですね」
二人は外に行った時、もしかしたら…
私の知らない所でこんな会話をしていたのかもしれない。
上手く、私を乗せられたとか言っていたのかな。
それとも、この時は本当に皆で頑張っていこうって思っていたのかな?
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