【殺人企業~実録・裏社会の人間との闘いの日々~】第二章:起業③引退、不安、反省
第三節:引退、不安、反省
梅の花が咲いた頃。
無事に記録を達成し、お店を引退した後は心身の休養からか、家でのんびり過ごす事が多かった。
勿論、親孝行で父親と旅行にも行ったし、
ずっと仕事ばっかで会えなかった友達に会ったりと自分としては、ゆったりとした時間を過ごした気がする。
今思うと、この時に会社について、もっと勉強すべきだったし、法律もちゃんと勉強するべきだった。
しかし、人は実際に何か起きない限り、やらないのかもしれない。
あとは、遅くてもいいから自分一人で始めるべきだった。
不安な気持ちからか久我さんの手を取ってしまったのが間違いだったのかも。
だから、神輿に担がれた名ばかりな社長になってしまったんだと思う。
ただ、この時は恥ずかしい話…
会社を立てたのは良かったものの仕事がない状態だった。
肩書は社長でもニートと何ら変わりがない。そんな状態が不安で仕方が無かった。
そんな私の心の揺れもそれも久我さんの計算の内だったのかな??
よくよく考えたら、そんなにキャバクラの社長になりたかったのかと言えば違ったのかもしれない。
今振り返ってみると、私は本当に何がしたいのか分らない状態で起業してしまったのだと思う。
中にはそれで、その後、明確なモノを見つけて成功する人もいるとは思うけど、私は自分と言うものも分かっていなかった。
昔から組織と言うモノが苦手だった。
1対1など対顧客、対個人に対しては上手くやっていけるものの、
その個人が沢山いて複数に絡み合う組織ではやりにくさや生きづらさを感じていた。
だから、キャバクラなど店舗で個人を売る仕事が合っていたのだろう。
もし、お店を持つなら小さくても良いから個人で経営していくべきだったのかもしれない。
だけど、過去をいくら振り返っても今更遅い。
きっと、この時の私は疑う事なんて1㎜も無かったんだと思う。
それだけ、久我さんを信頼していたんだと思う。
桜の花が咲き、散った頃。
私は都内に呼ばれて久我さんと手塚さんと食事をした。
何所に入ろうか迷っていたら久我さんが「ここにする?」の一言でお寿司屋さんに入る事になった。
昼時ではなかった為、ガラガラで私達だけだった。
まだ前のグループを抜けていなかった手塚さんもいたので秘密の会合をするのには打ってつけだった。
「俺はNを推す」
「知っています。3大大手で有名ですよね」
私達は投資など色々なビジネスの話をしつつ、どの方向でいくかなど話していた。
そんな中、久我さんが口を開いた。
「凛華ちゃん、とりあえず暫く、うちの店の会計をやって貰っていいかな?あとは不動産に行って店舗の下見をお願いしないとね」
「えっ?投資とかでいくんじゃ??」
「それは、今じゃないかな。まずは1階にお店を押さえたから、俺ら4人でやるお店は同じビルでやった方が効率いいと思うんだ」
私と手塚さんは久我さんの話に耳を傾けた。
「1階に店を構えたのはオセロで言う4つ角を押さえた様なものだからね♪」
久我さんは意気揚々と自分の戦略を述べた。
「流石!久我さん!」
私は目を輝かせてそれを聞いていた。
手塚さんは元々、やたら喋るタイプではないので、久我さんの隣りでクールに頷く感じでそれを聞いていた。
一通り、お寿司を平らげた後、私達はお店の前で別れた。
私は明るい未来を想像して意気揚々と電車に乗った。
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