【殺人企業~実録・裏社会の人間との闘いの日々~】第三章:暗雲④妃姫の復帰
第四節:妃姫の復帰
莉愛が辞め…
気が付けば、オープンから半年で半分ほど女の子が辞めていた。
女の子を補充しようにも地域柄、中々女の子は入って来ず…
逆に客が居ない女の子はお店側としては負担になる事も私達、経営陣は分かっていた。
そんな、ある日…
「妃姫を2階で復帰させようか」と久我さんが言い出した。
「それ、秋山が許しますか??」
「俺が言えば秋山も断れないから」と自信たっぷりに久我さんは言い切った。
以前のグループでは秋山は妃姫ちゃんと美咲ちゃんの事もあって、出世は出来ない事は確定していた。
久我さんがホワイトリリーのオーナーに口添えし、妃姫と共に移動させた事で今の秋山の地位がある。
だから、秋山は久我さんに言われた様に数々の客を借金まみれにして来たのだろう。
人は一度おいしい地位に立ってしまうと、その地位を手放したくない事から必死でそれを守ろうとする。
また、その地位を用意してくれた人間の言う事には服従してしまうものだろう…
「●●さんなら、ツケでいいですよ」
飲みたくても金がない。
そんな客達に秋山は悪魔の様に囁いたのだろう。
客も最初はちょっとのつもりで借りたに違いない。
けれど、そこからは底なし沼に落ちる様に堕ちていったのだろう。
奴隷君達はこうして出来上がって行った………
「ただ、妃姫が美咲と働くのを嫌がってるからな~」
久我さんは煙草の煙を吐き、天井を見ながら私達に話した。
いくら妃姫ちゃんの引退と同時に和解(!?)したとしても女同士の確執は早々無くならない。
とは言っても、美咲ちゃんと付き合っている事を秘密にして妃姫ちゃんと二股した秋山がいけないんだけど。
5年前だろうか…
美咲ちゃんとファミレスでゴハンした時に「ウチ…男運ないですよね」とポソリと言った事。
あの時は何の事か分からなかった…けど、今なら分かる。
秋山が妃姫ちゃんに乗り換えた時期から逆算して考えると…
あの言葉は秋山の事を言っていたのだと思う。
美咲ちゃんと妃姫ちゃんの確執は経営陣になってから久我さんに教えて貰った。
そもそも、美咲ちゃんは秋山との事を私は知らないと思っていただろう。
私も言うつもりもなかった。
彼女がいつか話したくなった時に話してくれればいいと思っていた。
ふと、美咲ちゃんの事をぼんやりと考えていると…
「今年の9月までがホワイトリリーのオーナーとの更新だから更新しようかどうしようかと思ってるんだよね~
更新しなかったら1階の女の子で良いタマはピアニッシモに入れて、杏樹やゆい辺りはお祓い箱にしようか」と久我さんが言った。
前々から、ゆいさんや杏樹ちゃんのクビの話はちょいちょい出ていたが…
此処まで出て来ると久我さんも内心、人件費として重いと思っているのだろう。
経営的な視点で見ると、それは強ち否定は出来なかった。
私から見ても…1階の女の子達は正直、スタイルがいい子が多かった。
その女の子達が入って来たら指名客がいない、見た目の部分で2階の女の子の一部が淘汰される事は分かり切っていた。
経営側としては会社を維持していく事を第一に考えなければならない。
私は妃姫ちゃんの復帰、1階の女の子が入って来てくれる事を期待せずにはいられなかった。
だけど、儚い期待だったと気付くのに私はどれだけ時を費やしただろう。
1階を手放すはずなかったんだ。
久我さんからしたら1階も収入の柱の一つなのに…
それでも、期待してしまったんだ。
皆で経営していたお店だったから。
私が営業や会計、お店の仕事をしている間、彼らも動いてくれているって。
信じてたんだ…。
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