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「ありふれた愛、ありふれた世界」12

シーン12 病院・カンファレンス室(夜)

弘一と健太郎。
書類の整理などしている。夜。

健太郎 「いよいよ明日ね」
弘一  「ああ。健太郎、お前にまた会えるとは思わなかったな」
健太郎 「これもムブティの神様のお導きね」
弘一  「あのさ」
健太郎 「何ヒロちゃん?チューして欲しい?」
弘一  「違う。お前何で女になってんの?」
健太郎 「ああそっち。私は自分本来の姿を取り戻しただけ」
弘一  「本来の姿」
健太郎 「何ヒロちゃん。チューしたいの?」
弘一  「違うって言ってんだろ」
健太郎 「いつでも言って」
弘一  「お前幸せそうだなあ」
健太郎 「当たり前でしょ。私は幸せよ」
弘一  「まあ、健太郎が幸せならそれでいいか」
健太郎 「ヒロちゃん」
弘一  「チューはしねえぞ」
健太郎 「違う。本当に大丈夫?家族の手術なんて。それに・・・」
弘一  「・・・(震えている手を見せる)」
健太郎 「・・・」
弘一  「前回も完璧じゃなかった・・・怖いよ」
健太郎 「ヒロちゃん・・・」
弘一  「なあ」
健太郎 「ん?」
弘一  「赤ちゃんっていいよな」
健太郎 「何?ちょっとやだヒロちゃん。赤ちゃん欲しいの?私無理よ」
弘一  「知ってるよ!そうじゃなくて世界と愛の顔を見てるだけで嬉しくなるんだよ。俺の甥っ子と姪っ子だぜ。あいつら大したもんだよ。いい大人をこんな気持ちにさせるんだから。でもさ、人は赤ちゃんにまで優劣をつけたがる・・・バカだよなあ」
健太郎 「そうね」
弘一  「障害だろうが脳腫瘍だろうが俺が全部守ってやる」
健太郎 「ヒロちゃん」
弘一  「ん?」
健太郎 「カッコいい!チューしてあげようか」
弘一  「やめろ」
健太郎 「いい顔してる」
弘一  「そうか?」
健太郎 「あのときと同じ顔してる」
弘一  「あのとき?」
健太郎 「あの手術をしたとき」
弘一  「ああ」
健太郎 「完璧な手術にしようね」
弘一  「障害も残さない・・・俺たちならできる」
健太郎 「そう、私たちならできる」
明日香声「すいません」

明日香、入ってくる。

弘一  「お。明日香どうした」
健太郎 「こんばんは」
明日香 「こんばんは。あの・・・」
健太郎 「私はお邪魔みたいね」

健太郎、去る。

弘一  「何か用か?」
明日香 「あんたが手術するんだって?」
弘一  「ああ」
明日香 「愛ちゃん大丈夫なの?助かるよね?」
弘一  「・・・」
明日香 「自信ないの?」
弘一  「・・・」
明日香 「あんたがいなくなったのって、医者になりたかったからなんでしょ」
弘一  「なんで知ってるんだ」
明日香 「花畑さんから聞いた」
弘一  「そうか」
明日香 「うん」
弘一  「余計なことを」
明日香 「腕のいい外科医だって」
弘一  「どうかな」
明日香 「アフリカで沢山の子供たちを助けてきたんでしょ」
弘一  「助けられなかった子供たちもいる」
明日香 「そうなんだ」
弘一  「別に腕なんてよくねえよ」
明日香 「愛ちゃんは助けられるよね?」
弘一  「・・・」

サスライトが消えてブルー転換に

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