「アイム ヒア」
渡辺 篤さんの「アイムヒア プロジェクト」の途中経過を拝見しに、R16スタジオへ。
R16スタジオでは、クリエイター・アーティストが集い、オープンスタジオとして作品を発表していました。
「アイムヒア プロジェクト」とは、
ひきこもり生活を送る方自身が撮影した部屋の写真を募集し、その写真を渡辺さんがアートとして表現するプロジェクト。
わたしは、正直、ひきこもりの方々の生活空間を覗くのは…怖い。しかし、ひとが目を背けてしまいたくなるものをどう表現するのか、そして、なぜ表現しようと思ったのか。聞きたいことがあふれて、お邪魔しました。
白い部屋。
やぶれた壁から見えるのは、ひきこもり生活が行われている部屋の写真。本来ならば見えないものをわたしたちは隙間から、「覗く」。
怖い、なんとかしたい、知りたい、どうして…?、そんな気持ちで。作品の前に立つと、私たちは覗かずにはいられないのです。
渡辺さん曰く、「覗く」際に自分自身が感じた気持ちも含めてアートとのこと。葛藤、戸惑いなど……、ことばにしにくい思いを現代アートならば表現できるといいます。
渡辺さん自身、ひきこもりを経験。そして、家から出るときに自分の部屋の写真を撮ったのだそう。
社会で生きる決意と、ひきこもった時間を無駄にしないという覚悟とともに。
ひきこもり当事者の方々の部屋の写真のなかから読み取れるその人の心と生活。
ある人は、
法律書や精神医学、家族についての専門書が並ぶ部屋に住む。きれいに整頓された美しい空間だ。なんとかして今この状態から抜け出したい、そんなもがきを感じる。
ある人は、
ストロングゼロの空き缶の山で生活する。退廃性と強いセルフネグレクト。安く酔えることを求めている。そして、その缶を部屋にため続け、自分を攻め続けることで、精神を保っている。
そんなふうに、一つ一つの部屋を覗いていくと、怖さが少しずつ和らいでいくことに気づきます。「覗き」続けて最後に残るのは、ひきこもる彼らの心への関心と、苦しみを少しでも緩和させたいという思いでした。
ひきこもりを止めさせることが正解なのだろうか?
ただありのままを受け止めて放置することが正解なのだろうか?
おそらくその人自身の気持ちや、置かれた状況や、周囲の環境や……さまざまな要因によって「なにがいいか」は異なってくるのでしょう。
「アイム ヒア」
私たちにできることは、まずその声に耳を傾き続けることなのかもしれません。
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