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【出版社への道②】出版社のスイミー理論

前回、「直販の道を選びました」とお伝えしました。
「道を選んだ」というよりは、直販へ続く道一本しか通っていなかったとも言えるかもしれないのですが。
今回は、どうして私たちが出版社として直販の仕組みにすることができたのか、お話をしていきたいと思います。

◆出版社の資本的基盤が大前提

基本的には出版社は、取次を通し、書店に届けるということをしなければいけません。そして、その取次と取引口座を開くということがものすごくハードルが高いといわれています。
私は、最初のキャリアがビジネス系の出版社の営業部だったのですが、その時に上司からはこう言われました。
「取次に口座を開くには、3000万かかる。だから、出版社になるのは難しいんだ」
その時は、まさか自分が出版社を作ることになるとは思いもよらず「ふ〜ん」と聞き流していたが、今回、すごく納得。新規の参入障壁は非常に高い業界なのだ。

なぜ資金的な安定が必要なのか。
それは、企業として安定していなければ、書店さんからの返品に堪えられないからという理由があります。
書籍は書店さんに卸した分、そのまま出版社の売上になるというわけではありません。一度、出荷しても、後から、ドバッと返本が戻ってくる。返品がきた際に、書店側にキャッシュバックできるだけの基盤がないと、出版構造自体が破綻してしまいます。

◆じゃあ、どうする? 返品が最小限の仕組みに

当然のことながら、一朝一夕に、資本基盤を築くのは難しい。私たちは2人で始めた会社。まだまだ企業としてはペーペーの3年目。そうそう磐石な資本基盤は築けません。取次さんと話をした際には、融資云々の話も出ていたのですが、正直それは違う気もして…。

というわけで、”取次を通さない流通の仕組みとする”という道を選ぶことになったわけです。
そして、その”取次を通さない構造”を作っていらっしゃったのがトランスビューでした。

トランスビューでは、直販の出版社の仕組みを作りあげていました。直販で書籍を売るということは、書店からの受注で配本をするということでもあります。
「うちはこの本なら5冊は売れる!」
と書店さんが思えば、5冊の注文を出版社に出してくれる。

当然といえば、当然の構造なのですが、その流れがこれまでの出版業界にはなかったのです。これまでは、取次店が出版社から入庫した新刊を、ワッと各書店に配本する流れでした。注文制度もありますが、このような新刊配本制度により、多くの書籍が書店に流通していくとともに多くの書籍が返品されるに至っていたのです。

◆とはいえ、配本効率が・・・

なぜ出版社が取次店を通すのかという理由の一つに、配本を全国隅々の書店にまで行きわたらせたいという思いがあります。出版社単独で、書店と取引をしたとしたら、一冊の書籍を届けるためにものすごく労力とコストをかけることになってしまう。

そこで、大事になるのが、出版社が寄り集まって新刊本をまとめて送る仕組みです。すでに直販の仕組みを作っていたトランスビューがハブとなり、そこに小さな出版社が集まって、効率的な物流を行えるように今はなっているのです。
これは、出版社の”スイミー理論”ではないかと、私は思っています。小さな出版社が集って、本当にイイと思う本だけを、直接書店さんに届ける。今、私たちはそんな仕組みに助けられて、大切に作った書籍を出版することができています。

注文を待っているだけでは、みなさんの目に触れることもない。だから、多くの方に知ってもらえるように、いろいろなチャレンジをしていきたいと思っています。
必要としてくださる方へ、きちんと届きますように。

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