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【最適な場所】

2018年の夏に上演したのは、『夏の魔球』という甲子園で働く老グラウンドキーパーの物語。

2015年に近鉄アート館で上演し、3年後の2018年、満を持して、なんばグランド花月で2日間上演しました。

なんばグランド花月はキャパ858席、吉本の劇場の中では一番大きく、野球でいうなら甲子園球場のような、目指すべき場所でした。

ちょうどこの頃、映画界では『カメラを止めるな』が、空前の大ヒットを飛ばします。

僕は小さな劇場でカメ止めを観たのですが、全身に鳥肌が立つほど興奮し、涙が止まりませんでした。

しかし、後日大劇場で観た人の話を聞くと、感想に温度差を感じました。

『カメラを止めるな』は当初、ミニシアターだけで上演される予定でした。
しかし、口コミが広がり、日本全国の大劇場で上演されるようになりました。

この作品は、元々小さな劇場で上演することを前提に作られていたのです。
その作品を大劇場のスクリーンに映し出すと、物語は楽しめるけれど、作品の一番の魅力である熱量は伝わりにくくなる。

2018年になんばグランド花月で、『夏の魔球』を上演した時も、カーテンコールでのお客様の反応に同じようなものを感じました。

2015年に上演した近鉄アート館は、300席ほどの劇場で、客席と舞台が近く、一番後ろの席でも、演者の汗まで観えました。
汗は台詞よりも人の心を動かすことがあります。

物語は劇場の大きさに関係なく楽しんでいただけるけれど、作品によって、最適な劇場のサイズがある。

この頃からなんばグランド花月をゴールにするのではなく、作品の魅力を最大限に発揮できる劇場で上演することを、より一層意識するようになりました。

つづく

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