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【限界の向こう側】

僕が今まで演じてきた芝居の中で、体力的に最もしんどかったのが、佐藤太一郎企画その17で上演した、『THE END'16』という作品でした。

この作品はマラソンの物語で、上演時間120分の間、主人公の日暮というジジイは、一度も止まることなく走り続けます。

演劇にはランニングマイムという表現方法があります。
ランニングマイムは、僕が新喜劇に入団する前に所属していた劇団、ランニングシアターダッシュの代名詞的パフォーマンスで、その場にいながら、実際に走っているように見せるパントマイムです。

ランニングシアターダッシュの真骨頂は、台詞ではなく、走っている姿と役者の汗でお客様に届ける、泥臭い表現でした。

そんな熱くて泥臭い作品を、吉本新喜劇の座員が演じる。
新喜劇ファンの方が喜んでくれるのか不安はありましたが、西野さんからいただいた「太一郎の才能は熱量だ!」という言葉を胸に、圧倒的熱量で演じ切りました。

まさに体力と気力の勝負。
限界の向こう側。
終演後は立ち上がれないほど、毎ステージ全ての力を出し尽くしていました。
座薬で痛み止めをしなければ走れないほど、身体は満身創痍でした。
ありがとう、座薬。

お客様からの熱い拍手が、すべてを物語っていたと思っています。
否定する人がいたとしても、必要としてくれる人もいる。
大切なのは、マイナスをゼロにすることではなく、必要としてくれる分母を増やすこと。

終演後、足の親指の爪は内出血で真紫に変色していました。
本物のマラソン選手と同じように、限界まで挑んだレースのような舞台でした。
余談ですが、内出血した爪は、しばらくすると蝉の脱皮のように、表面の爪がめくれ、その下に新しい爪が生えてきます。
めちゃくちゃ気持ち悪いです。

ここまでしんどい努力をしたからこそ、見える景色がある。
「凡人だって、圧倒的努力さえすれば奇跡を起こせる!」
僕はそう信じていますし、そう感じてもらいたくて、挑戦し続けています。

つづく

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