どこの国のサラリーマンも、会社では「演じている」ということ
最近、ネットやテレビのニュースでは、日本経済はこの30年間まったく成長していないことが繰り返し報道されています。
では果たして、成長著しいアメリカの大企業では、業績に直結しない無意味な業務がなく、業務効率は最大化されているのでしょうか? 例えば、社員は社内政治に翻弄されることなく、会社の利益の最大化だけに、集中できるのでしょうか?
今日は自身が米系大企業で長年、様々な国の経営陣や上司に仕えてきた経験から、外資のサラリーマンの実態についてお話しします。
目次
1.演じる経営陣
2.自分が「部長」を演じる時
1.演じる経営陣
以前に、本社から関連会社に出向して、スペイン人の社長のもとで財務部長をしていたことがあります。ラテンの気の良い社長でした。ある年の8月に、私は会社の業績が思ったほど芳しくなく、今年の利益目標を達成できない可能性が高いことを認識しました。そこで社長に費用の削減を提案しました。しかし社長は「今年はまだ残り4ヶ月もある」と意に解さない様子でした。ただ、私も財務責任者として、計画未達で終わるリスクを放っておくことは許されません。それからというもの、毎週のように社長との1on1で、そのことを繰り返し伝えましたが、まったく興味を示しませんでした。
ところが、10月のある経営会議で、突然社長から利益見込みを聞かれました。ようやくことの重大さに気づいたなと思ったのも束の間、突然おおげさに頭を抱え「俺は知らなかった、聞いてないよ!」と椅子からずり落ちそうになる仕草をしたのです。まるでオペラを見ているようでした。実はその会議には本社の役員も出席しており、業績見込みについて社長に質問がされる前に、社長自ら私にたずねたのです。
私は社長の芝居がかったトボけっぷりに、怒るのを忘れて笑ってしまいました。幸い、本社の役員はとは私は普段から密にコンタクトとっていたので、この社長がコントを演じていることを見抜き、私にウインクしてくれました。
このように、外資でも、社内政治はあります。むしろ日系に比べ報酬が非常に高かったり、一方でクビになるリスクも高いため、役職が上のひとほど、自身の身を守るため、どんな芝居も「演じ」ます。
よって、彼らの「オペラ」や「芝居」に翻弄されたり、足元をすくわれないように、私は普段からまめに主要な人には根回しや報告をしながら業務をしていました。
2.自分が「部長」を演じる時
実は自分が会社にとって理想的な「部長」を演じる時もありました。特に、管理職は会社の方針を部下の人たちに説明し、浸透させる役割を担っています。例えば、ある年の方針が「ワークライフバランスの最適化を図ろう」だったとします。これをそのまま社員に伝えても、「経営陣が思いつきで、仕事を依頼してくるから、ワークライフバランスなんて保てるか!」と逆に反発を買ってしまいます。
このような時期は、経営陣が出席する会議に、あえて部下の人たちを連れて行きます。いつものように、経営陣があれこれといくつもの分析作業を依頼してきます。そこで私は「すべて対応したいのですが、会社の方針で社員のワークライフバランスを最適化しないといけないので、優先順位をつけて、最も重要な2つに絞りましょう」と「部長」を演じます。
そうすると、経営陣も部下の人たちもびっくりしますが、「会社の方針」という大義名分があるので、私も経営陣に刺されるリスクがありません。私は個人的には、経営陣は最高の意思決定をするために、必要と思う分析作業を社員に依頼してすべきと思っています。
ただ、会社の方針を無視して今まで通り膨大な作業を続ける状況が続くと、会社の方針はただの「標識」になってしまいます。そうなると、最終的に経営陣も社員も、だれも幸せにはなりません。
よって、必要に応じて私も部長を演じていました。
以上が私の過去の管理職としての経験でした。外資、日系に限らず、そこそこの規模の会社では、誰もが会社員を演じていると思います。組織という劇場で足元をすくわれないよう、普段からまめに根回しをしたり、長期的に、何をどう演じるのが組織や自分たちに有益かを考えて行動すると良いと思います。
今日も最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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